運営 / 更新 2026-09-20

訪問介護の高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算 各1%の基準と経過措置

高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算は、訪問介護の運営基準で求められる体制を整えていない場合に、所定単位数の100分の1をそれぞれ減らす仕組みです。告示は訪問介護費の注5と注6に定めており、加算のように届出で算定を選ぶものではなく、基準を満たさない側に働く規定です。

この記事で決めること

高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算が、告示のどの注で所定単位数の100分の1を減らし、運営基準のどの条文に適合すれば減算にならないかを知り、経過措置が訪問介護では残っていないことを確認して、開業前に整える体制を判断するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、虐待防止4措置と業務継続計画の整備状況を確認する開業前チェック表を作成できる状態を目指します。

告示の文言と減算の大きさ

算定基準の告示(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準)は、別表の訪問介護費の注5で「別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する」と定めています。注6も同じ書き方で、業務継続計画未策定減算として所定単位数の100分の1を減算します。

どちらも「基準を満たさない場合」に減算する形で、「基準を満たす場合に算定する」加算とは向きが逆です。注3・注4が区分を「ロについては」「ハについては」と限定しているのに対し、注5・注6にはその限定がなく、訪問介護費全体にかかる注として置かれています。経過措置の条文も「訪問介護費のイからハまでの注6」と書いており、身体介護・生活援助・通院等乗降介助のいずれにも及ぶ形です。

減算にならないための基準の参照先

「別に厚生労働大臣が定める基準」の中身は、基準の告示(厚生労働大臣が定める基準)が、運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)の条文を参照する形で示しています。減算の有無は、この参照先の条文に適合しているかで決まります。

2つの減算と基準の参照先(告示 別表 訪問介護費の注、厚生労働大臣が定める基準 二・二の二、運営基準)
減算告示の注基準の参照先運営基準が求める内容
高齢者虐待防止措置未実施減算注5(所定単位数の100分の1)運営基準 第37条の2①虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、結果を訪問介護員等に周知徹底する(テレビ電話装置等を活用して行うことができる)、②虐待の防止のための指針を整備する、③訪問介護員等に対し虐待の防止のための研修を定期的に実施する、④①〜③を適切に実施するための担当者を置く
業務継続計画未策定減算注6(所定単位数の100分の1)運営基準 第30条の2 第1項感染症や非常災害の発生時に、利用者への指定訪問介護の提供を継続的に実施するための計画と、非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、その計画に従い必要な措置を講じる

業務継続計画の基準は第1項だけが参照されている

業務継続計画未策定減算の基準の参照先は、告示の文言上「第30条の2第1項」です。同じ条の第2項(訪問介護員等への周知と、必要な研修・訓練の定期的な実施)と第3項(定期的な見直し)は運営基準としては別に定められていますが、減算の基準として告示が挙げているのは第1項です。第2項・第3項を怠った場合に減算の対象になるかどうかは、この記事では確認していないため、算定前に指定権者へ確認してください。

経過措置は訪問介護では残っていない

業務継続計画未策定減算には、令和6年3月15日厚生労働省告示第86号の附則第2条に経過措置がありました。「令和七年三月三十一日までの間は」訪問介護費のイからハまでの注6を適用しない、という定めで、令和7年4月1日以降はこの適用除外の対象外です。

高齢者虐待防止措置未実施減算の経過措置は、同じ附則の第5条にあります。ただし「令和九年三月三十一日までの間」適用しないのは福祉用具貸与費と介護予防福祉用具貸与費の注1で、訪問介護費は含まれていません。訪問介護は、告示の施行日である令和6年4月1日から、経過措置なしで対象になっています。

この告示の附則で確認できた範囲では、訪問介護費に残る経過措置はありません。開業時点で「準備中なので減算されない」という扱いは、告示の上では置かれていないと読めるため、指定申請と同時に体制を整えておくのが前提になります。

月次の影響額の見方(計算例)

減算の大きさは、所定単位数の100分の1です。仮に月の所定単位数が50,000単位の事業所なら、減算は500単位で、1級地の11.40円なら5,700円、その他地域の10.00円なら5,000円です。これは仮の数字を使った単純計算で、実際の請求では何を所定単位数に含めて計算するかを国保連や指定権者の運用で確認する必要があります。

1つの減算の額は、所定単位数に対して1%相当です。2つの減算に同時に該当した場合の合わせ方は、告示の文言だけでは確認していません。事業計画では、基準を満たす前提で減算を0と置き、体制が整うまでの月は別の行でリスクとして見込む、といった分け方が扱いやすくなります。

当サイトのシミュレーターは、加算・減算を計算に含めず、基本報酬・地域単価・稼働日数を基礎にしています。この減算の影響は、シミュレーターの結果から引くのではなく、上の計算例のように別の行で確認します。

開業前に整えておくこと

虐待防止は、委員会の開催の頻度と参加者、指針、研修の年間計画、担当者の任命の4点を、書類として先に作っておきます。運営基準の条文は「定期的に」と書くだけで回数を定めていないため、頻度は指定権者の案内や運営指導の指摘事項を見て決めます。

業務継続計画は、感染症と非常災害の両方を想定した計画を策定し、計画に従って必要な措置を講じられる状態にします。計画の様式や記載項目の細目は、国が示す資料と指定権者の案内で確認してください。

どの事業所が個別に減算の対象になるかは、指定権者の確認と国保連の審査で決まります。この記事は告示と運営基準の文言を整理したもので、個別の事業所への適用の判断はしません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 虐待の防止のための対策を検討する委員会の構成員・開催の頻度・訪問介護員等への周知の方法を決め、開催記録の様式を用意する
  2. 虐待の防止のための指針を整備し、訪問介護員等への研修の実施計画と、①〜③の措置を適切に実施するための担当者の任命を書面に残す
  3. 感染症と非常災害の発生時に指定訪問介護の提供を継続するための業務継続計画を策定し、非常時の体制で早期の業務再開を図る内容を含める
  4. 月の所定単位数の100分の1を減算額の目安として事業計画の別の行に置き、体制が整うまでの月のリスクとして扱う

一次資料

制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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