運営 / 更新 2026-09-28
訪問介護のシミュレーターが計算しない加算・減算の範囲
シミュレーターの計算は基本報酬・地域単価・稼働日数を基礎にしていて、加算・減算・同一建物等の条件・特別地域の取り扱い・処遇改善加算・個別の算定可否は含まれていません。算定要件と届出状況を入力・検証する仕組みがまだ実装されていないためです。
この記事で決めること
シミュレーター対象外の加算・減算・同一建物等・特別地域の扱いを把握し、個別確認の範囲を判断するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、シミュレーター未対応の加算・減算・地域条件の個別確認チェックリストを作成できる状態を目指します。
加算・減算が計算に含まれない理由
厚生労働省の告示には、高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算(いずれも所定単位数の100分の1)のように基準を満たさない場合に一律で適用される減算と、体制や実績、届出の有無によって算定できるかどうかが事業所ごとに変わる加算があります。処遇改善加算や特定事業所加算はこの後者にあたり、要件を満たしているかを職員名簿や記録と突き合わせて初めて算定できます。
基本報酬の内側にある時間区分の増分も、シミュレーターは計算していません。身体介護が中心で所要時間1時間以上の区分には、1時間から30分増すごとに82単位を加算する定めがあり、ルール台帳にも単位数は登録されています。
ただし、1時間を超えた分の時間を入力する欄がなく、結果の売上には反映されません。1時間を大きく超える訪問が多い事業所は、この増分を別に見積もってください。
シミュレーターはこうした算定要件と届出状況を入力・検証する仕組みを持たないため、結果画面の「モデルの範囲」の注記で加算・減算とその算定可否を対象外と明示し、月次売上の計算には含めていません。結果画面に表示される売上は、算定要件を満たす加算・減算をすべて反映した金額ではなく、それらを除いた基本報酬ベースの目安です。
個別の加算の要件は加算ごとの記事で確かめられます。利用者の初回訪問に関わる初回加算、ケアマネジャーの要請による緊急時訪問介護加算、理学療法士等と連携する生活機能向上連携加算、歯科専門職との連携に関わる口腔連携強化加算、認知症専門ケア加算、身体介護の後に生活援助が続く場合の引き続く生活援助加算、賃金改善を伴う処遇改善加算を個別に扱っています。
特定事業所加算(Ⅱ)を足したときの月次の差額(試算例)
割合で決まる加算は、シミュレーターの結果とは別に、1回ごとの単位数へ割合を掛けて見積もります。告示は特定事業所加算(Ⅱ)を所定単位数の100分の10と定めています。厚生労働省の留意事項通知は、割合を掛けるたびに小数点以下を四捨五入し、金額にしたときの1円未満は切り捨てるとしています。
例として、その他の地域(1単位10円)の事業所が、身体介護が中心の30分以上1時間未満(387単位)を月100回提供する場合を考えます。加算がなければ387単位×100回=38,700単位で、387,000円です。
(Ⅱ)を算定すると1回あたり387×1.10=425.7で、四捨五入して426単位になり、426単位×100回=42,600単位で426,000円です。差額は月39,000円です。
この試算は、(Ⅱ)の要件を満たして届出をした場合の計算の形を示すもので、算定できることを保証するものではありません。区分ごとの要件と自事業所の該当性は当サイトの「訪問介護 特定事業所加算 区分Ⅰ〜Ⅴ判定ツール」で、端数処理の順番は「訪問介護の介護報酬の算定構造」で確認できます。
| 項目 | 加算なし | (Ⅱ)を算定 |
|---|---|---|
| 1回あたりの単位数 | 387単位 | 387×1.10=425.7→426単位 |
| 月の単位数 | 38,700単位 | 42,600単位 |
| 金額(1単位10円) | 387,000円 | 426,000円 |
| 差額 | 月39,000円 |
同一建物等・特別地域の算定率は個別に確認する
同一建物等居住者への訪問には、所定単位数の100分の90(同一敷地内・隣接敷地内・同一建物に居住する利用者、または同一敷地内建物等に該当しない建物でもその事業所の利用者が20人以上居住する場合)または100分の85(同一敷地内建物等に50人以上居住する建物の利用者)を算定する規定があります。また、厚生労働大臣が定める基準に該当する事業所が、同一敷地内建物等に住む50人未満の利用者へ提供した場合は、100分の88を算定する例外もあります。
どの利用者が対象になるかは、居住する建物と事業所の位置関係、建物内の利用者数を個別に確認しないと判断できません。条件の当てはめ方は、当サイトの「訪問介護 同一建物等減算 判定ツール」で確かめられます。
特別地域訪問介護加算は、厚生労働大臣が定める地域に所在し、都道府県知事へ所定様式で届け出た事業所に、所定単位数の100分の15を加算する制度です。このほかにも、対象地域や通常の事業の実施地域を越えた提供に応じた加算区分があります。いずれも対象地域は厚生労働大臣が個別に指定するため、開業予定地が該当するかどうかは一次資料または指定権者への確認が必要で、全国一律に適用される制度ではありません。
同一建物等居住者減算の単位数差(試算例)
同一建物等居住者減算は、特別地域加算と同様に1回ごとではなく、対象となる月の単位数の合計に割合を掛けて算定します。端数処理の順番は「訪問介護の介護報酬の算定構造」で確認できます。
例として、その他の地域(1単位10円)の事業所が、身体介護が中心の30分以上1時間未満(387単位)を同一建物等居住者へ月100回提供する場合を考えます。減算がなければ387単位×100回=38,700単位で387,000円です。100分の90を適用すると38,700単位×0.90=34,830単位で348,300円になり、差額は月38,700円です。
100分の88を適用すると38,700単位×0.88=34,056単位で340,560円になり、差額は月46,440円です。100分の85を適用すると38,700単位×0.85=32,895単位で328,950円になり、差額は月58,050円です。
この試算は月100回・その他の地域という仮定を置いた計算の形を示すもので、実際の対象回数や適用される減算率(90/85/88のいずれか)は、建物内の利用者数や事業所の所在地によって変わります。どの減算率が該当するかは前の見出しで整理した基準を、実際の対象人数・判定期間はこの後の見出しで確認してください。
| 区分 | 月の単位数 | 金額(1単位10円) | 減算なしとの差額 |
|---|---|---|---|
| 減算なし | 38,700単位 | 387,000円 | |
| 100分の90を適用 | 34,830単位 | 348,300円 | 月38,700円 |
| 100分の88を適用 | 34,056単位 | 340,560円 | 月46,440円 |
| 100分の85を適用 | 32,895単位 | 328,950円 | 月58,050円 |
同一建物減算(100分の88)は前期・後期の年2回の判定期間で確認する
同一敷地内建物等に居住する利用者が多い事業所に適用される100分の88の減算は、算定月ごとに直近を見るのではなく、年2回の判定期間で確認します。留意事項通知(老企第36号)は、事業所ごとに、判定期間に指定訪問介護を提供した利用者のうち同一敷地内建物等に居住する利用者の占める割合が90%以上の場合、次の減算適用期間に同一敷地内建物等に居住する利用者へ提供する指定訪問介護のすべてに減算を適用すると定めています。令和7年度以降の判定期間と減算適用期間は、厚生労働省のQ&A(令和6年3月15日 Vol.1 問9)にも同じ内容が示されています。
通知のロの計算式では、割合は訪問回数ではなく、利用者の実人数(利用実人員)で計算します。その計算式は、判定期間に指定訪問介護を提供した利用者のうち同一敷地内建物等に居住する利用者数を、判定期間に指定訪問介護を提供した利用者数で割る形です。
ここでいう同一敷地内建物等の居住者には、事業所の1月当たりの利用者が50人以上居住する建物の居住者を含めません。仮に判定期間の利用実人員が20人で、うち同一敷地内建物等の居住者が18人なら割合は90%で、基準に達します(数値は説明用の仮定です)。
告示(厚生労働大臣が定める基準の三の二)は「算定日が属する月の前六月間に提供した指定訪問介護の提供総数」と書いています。通知も冒頭とイでは「提供総数のうち…占める割合」と書きますが、判定期間は年2回に固定され、ロの具体的な計算式は利用実人員で示されており、告示の文言とは表現が異なって見えます。この記事は通知の判定期間と計算式に沿って整理していますので、実際の判定単位や手続は指定権者の案内で確認します。
| 判定期間 | 判定期間の範囲 | 減算適用期間 | 書類の作成期限 |
|---|---|---|---|
| 前期 | 3月1日〜8月31日 | 10月1日〜3月31日 | 9月15日まで |
| 後期 | 9月1日〜2月末日 | 4月1日〜9月30日 | 3月15日まで |
判定結果の書類は割合が90%未満でも2年間保存する
同一敷地内建物等に居住する利用者へサービスを提供している事業所は、判定期間ごとに、判定期間の利用者総数(利用実人員)、同一敷地内建物等に居住する利用者数(利用実人員)、計算した割合、割合が90%以上で正当な理由がある場合はその理由を記載した書類を作成します。割合が90%以上の場合は都道府県知事へ提出し、90%以上でなかった場合も、書類は事業所で2年間保存します。
正当な理由の最終判断は都道府県知事が行い、不適当と判断された場合は減算が適用されます。通知は、正当な理由の例として、特別地域訪問介護加算を受けている事業所、判定期間の1月当たりの延べ訪問回数が200回以下などの小規模な事業所、その他都道府県知事が認めた場合を挙げています。
Q&A Vol.1 問11〜13では、ケアマネジャーから地域の要介護者の紹介がないだけでは正当な理由に当たらないこと、通常の事業の実施地域内に同一敷地内建物等以外の要介護高齢者が少数の場合は正当な理由とみなして差し支えないものの、実施地域の範囲が適正か、同一敷地内建物等以外の要介護高齢者にも提供するよう努めているかを確認すること、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算を算定している場合は正当な理由に当たらないことが示されています。個別の事業所が正当な理由に当たるかは、都道府県等の指定権者へ確認します。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算は利用者の居住地で判断する
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算は、利用者が厚生労働大臣の定める地域に居住し、事業所が通常の事業の実施地域を越えて指定訪問介護を行った場合に、所定単位数の100分の5に相当する単位数を加算する制度です。特別地域訪問介護加算や中山間地域等における小規模事業所加算が事業所の所在地を要件にするのに対し、この加算は利用者の居住地が要件になります。
対象地域も加算ごとに異なります。中山間地域等における小規模事業所加算の対象地域は、豪雪地帯・特別豪雪地帯、辺地、半島振興対策実施地域、特定農山村地域、過疎地域の5類型ですが、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の対象地域は、この5類型に離島振興対策実施地域・奄美群島・振興山村・小笠原諸島・沖縄振興特別措置法第三条第三号に規定する離島を加えた10類型で、範囲がより広くなっています。
事業所が特別地域加算対象地域または小規模事業所加算対象地域に所在し、通常の事業の実施地域を越えて別の中山間地域等に居住する利用者にサービスを提供する場合は、特別地域訪問介護加算または中山間地域等における小規模事業所加算とこの加算をあわせて算定できます。ただし特定事業所加算(Ⅴ)を算定している場合、この加算は算定できません。特別地域訪問介護加算・中山間地域等における小規模事業所加算は都道府県知事への届出を告示本文に明記していますが、この加算の告示本文には同様の届出の規定がありません。
運営基準は、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅でサービスを行う場合、それに要した交通費の額の支払を利用者から受けられると定め、あらかじめ内容と費用を説明し同意を得ることを求めています。この加算を算定する場合に同じ交通費を重ねて利用者から受け取れるかどうかは、確認した告示・通知の本文に記載がなく未確認のため、指定権者に確認します。シミュレーターの計算はこの加算を含んでいないため、対象地域に居住する利用者へサービスを提供している事業所は、結果画面の月次売上の目安に100分の5相当を加味して読みます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 自事業所が算定し得る加算(処遇改善加算・特定事業所加算を含む)と減算(虐待防止措置未実施・業務継続計画未策定・同一建物等居住者)の該当有無を洗い出す
- 同一建物等居住者への訪問が敷地内・隣接・同一建物のいずれかに該当するか、建物ごとの利用者数を確認する
- 事業所所在地が特別地域訪問介護加算等の対象地域に含まれるかを一次資料または指定権者へ確認する
- 処遇改善加算・特定事業所加算は個別記事の要件チェックへ進み、それ以外の加算・減算は指定権者・国保連へ算定可否を確認する
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(確認日 2026-10-02)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(確認日 2026-09-28)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める一単位の単価」(確認日 2026-09-22)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年3月13日厚生労働省告示第83号)」(確認日 2026-09-19)
- 公益社団法人全国老人保健施設協会(厚生労働省老健局発出Q&Aの転載)「平成21年4月改定関係Q&A(Vol.1)(平成21年3月23日)」(確認日 2026-09-19)
- 厚生労働省老健局「別紙1 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)(抄)(新旧対照表)」(確認日 2026-09-26)
- 厚生労働省老健局「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」(確認日 2026-09-21)
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1213(令和6年3月15日)留意事項通知の改正(新旧対照)」(確認日 2026-09-27)