運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護事業所の閉鎖手続き(休止・廃止・再開届)を期限から確認する
訪問介護事業を休止・廃止するとき、また休止した事業を再開するときは、指定居宅サービス事業者として指定権者へ届出をする必要があります。届出の期限は法令上、休止・廃止は1か月前まで、再開は10日以内が原則ですが、様式・提出方法は指定権者ごとに確認します。
この記事の要点
- 休止・廃止
- その日の1か月前までに届け出る(介護保険法第75条第2項)
- 休止後の再開
- 再開から10日以内に届け出る(同法第75条第1項)
- 利用者への対応
- 届出の日前1か月以内にサービスを受けた利用者のうち希望する人へ、継続して提供されるよう連絡調整などの便宜を行う(同法第74条第5項)
- 様式・提出方法
- 指定権者ごとに異なるため、事前に確認する
訪問介護事業所の閉鎖手続き:全国共通の法令根拠(休止・廃止)
介護保険法第75条(変更の届出等)第2項は、指定居宅サービス事業者が当該指定居宅サービスの事業を廃止し、又は休止しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を都道府県知事に届け出なければならないと定めています。休止・廃止をしようとする日が決まった時点で、1か月前という期限から逆算して届出の準備を始める必要があります。
同条第1項は、休止した指定居宅サービスの事業を再開したときは、10日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならないと定めています。休止からの再開は、廃止・休止のときとは逆に「事後10日以内」が期限になります。
この記事で決めること
訪問介護事業を閉鎖(休止・廃止)または再開するときの届出義務と期限を、全国共通の法令根拠と指定権者ごとの確認事項に分けて確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、休止・廃止・再開の届出予定表と利用者引継ぎリストを作成できる状態を目指します。
利用者への引継ぎ義務
休止・廃止の届出は、提出して終わりではありません。介護保険法第74条第5項は、廃止又は休止の届出をした指定居宅サービス事業者に対し、届出の日前一月以内に当該サービスを受けていた利用者のうち、廃止又は休止の日以後も引き続き相当するサービスの提供を希望する者へ、必要な居宅サービス等が継続的に提供されるよう、指定居宅介護支援事業者や他の指定居宅サービス事業者その他関係者との連絡調整その他の便宜の提供を行う義務を定めています。利用者の引継ぎ調整までが法令上の義務に含まれます。
都道府県知事等による連絡調整・援助(介護保険法第75条の2)
行政は、休止・廃止時の利用者の引継ぎについて、連絡調整や助言ができます。介護保険法第75条の2第1項は、都道府県知事又は市町村長が、廃止・休止の届出をした事業者による第74条第5項の便宜の提供(利用者への引継ぎ)が円滑に行われるため必要があると認めるときに、その事業者と居宅介護支援事業者、他の指定居宅サービス事業者その他の関係者の相互間の連絡調整や、事業者・関係者への助言その他の援助を行うことができると定めています。
同条第2項では、同一の事業者について2以上の都道府県知事が連絡調整や援助を行う場合に、厚生労働大臣が都道府県知事相互間の連絡調整や、都道府県の区域を超えた広域的な見地からの助言その他の援助を行うことができるとしています。いずれも「できる」規定で、事業者の引継ぎ義務が行政に移るわけではありません。
引継ぎ先の調整が難しいときに、指定権者へ早めに相談する根拠になります。援助を実際にどう運用しているかは指定権者ごとに異なるため、事業所の指定権者(都道府県・市区町村)の案内で確認します。東京都以外の届出時期や様式も同様に、指定権者の公式案内で確認してください。
指定権者の運用例(東京都)
東京都は、訪問介護の廃止・休止届について「廃止、休止予定日の1ヶ月前までに届出が必要」、再開届について「再開後、10日以内に届出が必要」と案内しています。法令の原則どおり、廃止・休止は事前1か月、再開は事後10日以内が目安になります。
様式は「廃止・休止届出書」「再開届出書」がいずれも令和6年4月1日からのものとして公開されています。提出先は公益財団法人東京都福祉保健財団 事業者支援部介護事業者指定室(新宿区西新宿二丁目7番1号、電話03-3344-8517)です。令和7年8月から電子申請・届出システムでの受付が始まった「変更届出書」とは異なり、廃止・休止届・再開届について電子申請に対応しているとの記載は見当たらないため、提出方法は指定権者の案内で確認してください。
| 区分 | 届出期限 | 東京都の様式 |
|---|---|---|
| 廃止・休止 | その日の1か月前まで(介護保険法第75条第2項) | 廃止・休止届出書(令和6年4月1日から) |
| 再開 | 10日以内(介護保険法第75条第1項) | 再開届出書(令和6年4月1日から) |
指定権者の運用比較(東京都・大阪府・福岡市)
届出の期限は法令どおりでも、提出先・提出方法・事前協議の有無は指定権者ごとに違います。次の表は、東京都・大阪府・福岡市を並べたものです。
大阪府は、廃止届・休止届を予定日の1か月前、再開届を再開後10日以内とし、書類は大阪府福祉部高齢介護室介護事業者課居宅グループへ郵送します。令和7年7月1日以降の廃止・休止予定日や再開日の届出から電子申請も可能で、GビズIDの取得が必須です。休止中の事業所は指定の更新を受けられないため、更新申請までに再開届か廃止届の提出が必要とされています。
福岡市は、電子申請届出システムでの受付を原則とし、郵送は電子申請ができない場合で追加書類が必要です。廃止・休止は予定日の1か月前、再開は再開した日から10日以内ですが、再開は再開予定日の1か月前までに事前協議が必要とされています(休止・廃止の事前協議は施設系サービスのみが対象で、訪問介護の再開が対象になります)。事前協議は予約制で、電話予約のうえ来庁します。
事業所の所在地が大阪府内の指定都市・中核市などの場合、提出先が府ではなく市になることがあります。上記の大阪府の案内にはその区分が書かれていないため、所在地の市の案内もあわせて確認します。
| 指定権者 | 届出時期 | 提出先・方法 | 様式の入手先 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 廃止・休止は予定日の1か月前まで、再開は再開後10日以内 | 公益財団法人東京都福祉保健財団 事業者支援部介護事業者指定室(電子申請は変更届出書のみ) | 東京都福祉局の変更届出手続のページ |
| 大阪府 | 廃止・休止は予定日の1か月前、再開は再開後10日以内 | 府福祉部高齢介護室介護事業者課居宅グループへ郵送、または電子申請(GビズID必須) | 大阪府「廃止・休止・再開届」のページ(連絡票、別紙様式第一号(六)(七)) |
| 福岡市 | 廃止・休止は予定日の1か月前、再開は再開後10日以内(再開は予定日の1か月前までに事前協議) | 電子申請届出システムが原則、できない場合は郵送 | 福岡市「廃止・休止・再開届」のページ(チェック表、措置報告書、再開届様式集) |
廃止・休止の時系列(届出前・届出時・届出後)
廃止・休止の予定日が決まったら、予定日の1か月前の届出期限から逆算して、届出前・届出時・届出後に分けて進めます。法令で期限や期間が定められているのは次の表の項目で、それ以外の請求や書類の扱いは指定権者と国民健康保険団体連合会(国保連)の案内で確認します。
届出の日前1か月以内に訪問介護を受けていた利用者のうち、廃止・休止の日以後も同様のサービスを希望する方への引継ぎは、届出をしたときから事業者の義務になります(介護保険法第74条第5項)。引継ぎ先との調整に時間がかかるため、届出の準備と並行して始めます。
利用者に対する訪問介護の提供に関する記録(訪問介護計画、提供したサービスの内容等の記録、苦情・事故の記録など)は、事業を廃止した後も、国の運営基準では完結の日から2年間の保存が定められています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第39条第2項)。実際に適用される保存期間は指定権者の条例で異なり、東京都は契約終了の日から2年間、大阪府は訪問介護を提供した日から5年間で、年数と起算点の違いは訪問介護の記録の保存義務・保存期間(完結の日から2年間)の比較表で確認できます。廃止後の保管場所と担当者を、事業所のある自治体の条例の年数で届出前に決めておきます。
請求については、廃止・休止の日までに提供したサービスの請求が済んでいるか、返戻や過誤調整が残っていないかを、届出前に月次の請求の流れと照らして点検します。廃止後の請求・返戻の取扱いと期限は、指定権者と国保連の案内で個別に確認し、確認日と回答を記録します。
| 時期 | やること | 期限・根拠 |
|---|---|---|
| 届出前 | 廃止・休止の日を決め、指定権者の様式と提出方法を確認する。引継ぎ希望の利用者を洗い出し、居宅介護支援事業者等と調整する。請求・返戻の残りと記録の保管方法を点検する | 廃止・休止の日の1か月前までに届出(介護保険法第75条第2項) |
| 届出時 | 廃止・休止届出書を指定権者へ提出する。提出と同時に、引継ぎの便宜の提供義務が生じる | 届出の日前1か月以内の利用者が対象(介護保険法第74条第5項) |
| 届出後 | 利用者・ケアマネジャーへの連絡調整を続け、廃止・休止の日までに引継ぎを終える。必要なときは指定権者へ連絡調整を相談する | 介護保険法第75条の2(都道府県知事・市町村長による連絡調整・援助) |
| 廃止後 | 利用者に対する提供の記録を保管し、保存期間が過ぎるまで廃棄しない。請求・返戻の残務は指定権者・国保連の案内で確認する | 記録は完結の日から2年間(運営基準第39条第2項。指定権者の条例も確認) |
| 再開時 | 休止した事業を再開したら、再開届出書を提出する | 再開後10日以内(介護保険法第75条第1項) |
閉鎖手続きの確認の手順(休止・廃止・再開)
休止・廃止を予定する日を決めたら、1か月前という期限から逆算して指定権者への届出を準備します。休止した事業を再開する場合は、再開後10日以内に届出をします。
届出とあわせて、直近1か月以内にサービスを利用していた方のうち継続を希望する方への引継ぎ調整(居宅介護支援事業者や他の訪問介護事業者との連絡調整)を進めます。様式・提出方法・必要書類は指定権者ごとに異なるため、事業所の所在地を管轄する指定権者の公式案内で確認してください。
管理者・サービス提供責任者の変更をあわせて行う場合は、管理者・サービス提供責任者の変更届もあわせて確認します。指定権者に何を問い合わせるかは指定権者に確認する事項の一覧に、事業所を移すときの手続きは事業所移転の届出にまとめています。
手続きの順番を1枚で確認する
指定申請から指定更新までの手続きと期限を時系列で並べた表は、訪問介護の開業1年目の手続きと期限の順番表にあります。この記事の手続きが全体のどこに入るかを確認できます。
あわせて確認する論点
廃止・休止の届出とは別に、指定の取消しや効力停止を受けた場合は、審査請求と取消訴訟に期間の定めがあります。期間と執行停止の位置づけは指定取消し・効力停止後の審査請求と取消訴訟で整理しています。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 休止・廃止を予定する日、または再開する日を確定する
- 廃止・休止は1か月前まで、再開は10日以内という期限から逆算して届出スケジュールを組む
- 指定権者の公式ページで、廃止・休止届出書/再開届出書の様式と提出方法を確認する
- 直近1か月以内にサービスを利用していた方のうち継続を希望する方を洗い出し、居宅介護支援事業者や他の訪問介護事業者との引継ぎ調整を進める
関連ガイドで計画をつなぐ
隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。
よくある質問
迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。
訪問介護事業を廃止・休止するときの届出はいつまでですか?
介護保険法第75条第2項は、廃止又は休止の日の1か月前までに都道府県知事へ届け出ると定めています。日が決まった時点で、1か月前という期限から逆算して準備します。
休止していた事業を再開するときの届出期限は?
同条第1項に基づき、再開したときから10日以内に届け出ます。休止・廃止が事前、再開が事後という違いがあります。様式と提出方法は指定権者の案内で確認します。
廃止・休止するとき、利用者への対応は必要ですか?
介護保険法第74条第5項は、届出の日前1か月以内にサービスを受けていた利用者のうち、廃止・休止後も同様のサービスを希望する人に、居宅介護支援事業者や他の事業者との連絡調整などの便宜を提供する義務を定めています。調整が難しいときは指定権者へ早めに相談します。
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「介護保険法(第七十五条 変更の届出等)」(確認日 2026-10-07)
- 東京都「指定居宅サービス事業者の変更届出手続(事業所・法人)」(確認日 2026-10-07)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「介護保険法(第75条の2 都道府県知事等による連絡調整又は援助)」(第75条の2)(確認日 2026-10-08)
- 東京都福祉局「条例・規則・要領 対照表(指定居宅サービス等 令和6年4月改正版)」(訪問介護の運営に関する基準 第四十一条(記録の整備)の条例の列と要領の列)(確認日 2026-10-13)
- 大阪府「大阪府指定居宅サービス事業者の指定並びに指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準を定める条例(平成24年大阪府条例第115号)」(第43条(記録等の整備)第2項)(確認日 2026-10-13)
- 大阪府「廃止・休止・再開届(居宅サービス等事業所)」(届出期限、必要書類・様式、届出先・届出方法、留意事項)(確認日 2026-10-17)
- 福岡市「介護サービス事業所の廃止・休止・再開届」(提出方法、提出期限、届出用様式集、事前協議が必要な場合)(確認日 2026-10-17)