運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護の感染対策の手引き:手指衛生・個人防護具・嘔吐物の処理と感染疑い時の連絡

訪問介護の感染対策は、運営基準の第31条が求める委員会・指針・研修・訓練の整備と、ヘルパーが利用者宅で実際に行う手洗いや防護具の使い方の2つに分かれます。前者は訪問介護の衛生管理等で扱っているため、このページは後者を、厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き 第3版」(令和5年9月)で確認します。手洗いのタイミング、防護具の使い方、嘔吐物・排泄物の処理、感染が疑われるときの連絡の流れを、手引きの記載どおりに整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の管理者や教育担当者が、ヘルパーの研修で何を教えるかを決めるために、厚生労働省の感染対策の手引き第3版が示す手指衛生、個人防護具、おむつ交換、嘔吐物の処理、訪問系の感染症発生時の連絡の流れを確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、ヘルパー向け感染対策の確認表(手洗いのタイミング、場面別の防護具、持参する備品と補充の担当、感染疑い時の連絡先)を作成できる状態を目指します。

手引きの位置づけ:標準予防策が基本

手引きは、血液などの体液、粘膜、正常でない皮膚に触れるときは必ず手袋を着用するという標準予防策の考え方を基本に置いています。感染症が分かっている利用者にも分かっていない利用者にも同じ基本の対策をとる、という整理です。

運営基準第31条第3項は、訪問介護事業所に感染症が発生し、またはまん延しないよう、委員会をおおむね6月に1回以上開催すること、指針を整備すること、訪問介護員等に研修と訓練を定期的に実施することを求めています。研修や訓練の回数は条文に数字がなく「定期的」とだけ書かれています。手引きは、その研修で何を教えるかの材料にあたります。

手洗いのタイミングと方法

手引きは、世界保健機関(WHO)が推奨する手指衛生の5つのタイミングとして、利用者に触る前、清潔・無菌的手技の前、血液・体液等に触れた後、利用者に触れた後、利用者周囲の物品に触れた後を挙げています。手洗いは「1ケア1手洗い」「ケア前後の手洗い」が基本とされています。

目に見える汚れがなければ通常はエタノール含有の消毒薬を使い、汚れがあれば液体石けんと流水で洗うと書かれています。共有の布タオルは使わず、使い捨てのペーパータオルを使うとされています。

訪問系の記載として、手指用に準備した消毒用アルコールを訪問中に車内へ置き忘れないよう注意が書かれています。炎天下の車内に置くと破裂や火災の危険があるためです。

個人防護具の使い方とおむつ交換

手引きの図は、場面ごとの装備を示しています。血液・嘔吐物・排泄物に触れる、または傷に触れる場合は手袋を着用し、外したら手指衛生を行います。飛び散って目・鼻・口が汚れるおそれがある場合は、手袋と長袖ガウンの上に不織布マスクを着け、必要に応じてゴーグルやフェイスシールドを使います。

衣服が汚れるおそれがある場合は、使い捨てエプロンか長袖ガウンを着け、別の利用者のケアにそのまま使ってはいけないとされています。個人防護具は原則として使い捨てで、使用後は持ち歩かずに速やかに感染性廃棄物の箱へ捨てるとされています。

おむつ交換では、必ず使い捨て手袋とエプロン(または長袖ガウン)を着け、手袋とエプロンは1ケアごとに取り替えると書かれています。してはいけない例として、汚染した手袋のまま別のケアや別の利用者のケアをすること、手袋をすぐ外さずにあちこち触ること、手袋をしたからと手洗いを省くことが挙げられています。

場面ごとの装備(手引き第3版の記載の要約)
場面手引きが示す装備あわせて必要なこと
血液・嘔吐物・排泄物に触れる、傷に触れる手袋外したら手指衛生
飛び散って目・鼻・口が汚れるおそれがある手袋と長袖ガウン、不織布マスク。必要に応じてゴーグルかフェイスシールド使用後は速やかに感染性廃棄物の箱へ
衣服が汚れるおそれがある使い捨てエプロンか長袖ガウン別の利用者のケアに使い回さない
おむつ交換使い捨て手袋とエプロン(または長袖ガウン)1ケアごとに取り替え、外した後は手指衛生

嘔吐物・排泄物の処理と廃棄物

嘔吐物や排泄物の処理は、マスク、手袋、エプロンなどを着けて、速やかに入念に行うと手引きに書かれています。消毒に次亜塩素酸ナトリウム液を使う場合、総論はノロウイルス感染症の発生時に0.02%から0.1%の液を使い、腐食を避けるため消毒後に水拭きするとしています。

次亜塩素酸ナトリウム液の濃度は、手引きの章によって書かれている数字が異なります。使う濃度は、手引きの該当箇所と保健所の案内で確認します。処理の後は手指衛生を行います。

訪問系のおむつ交換では、外したおむつを速やかにビニール袋に入れるなどして、周りの物が汚れないように動くと書かれています。化膿した傷に使ったガーゼは、他のごみとは別のビニール袋に密封して、感染性廃棄物として分けると書かれています。

感染が疑われるときの連絡の流れ

手引きの図は、訪問系サービスの感染症発生時の対応を次のように示しています。疑いのある利用者には、かかりつけ医への相談や医療機関の受診を勧めます。診断された場合は、サービスを提供した職員の健康状態を把握し、他の利用者の健康状態も把握します。

事業所内に似た症状の職員が複数いる場合は、保健所やかかりつけ医に相談します。管理者は事業所全体の発生状況を把握し、市町村の担当課に報告し、保健所に相談すると書かれています。職員は症状を確認して管理者に報告します。

手引きには、同一の感染症による死亡者や重篤な患者が1週間以内に2名以上出た場合などに市町村等へ報告し、保健所にも報告する基準が載っています。ただしこれは社会福祉施設等向けの通知の抜粋で、訪問介護事業所にそのまま当てはまるかは手引きから読み取れません。報告基準に達していなくても、保健所に相談しながら対応するとされています。

確認した範囲と、事業所が準備すること

このページが確認したのは、厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版」(令和5年9月)の標準予防策、手指衛生、個人防護具、おむつ交換、嘔吐物の処理、訪問系の感染症発生時の対応と、運営基準第31条(e-Gov法令検索)です。手袋やガウンを外す順序の細かい手順や、訪問時の持ち物の一覧は、このページでは扱っていません。

準備としては、手引きの図と表をもとに、ヘルパーが持参する備品(手袋、エプロン、マスク、消毒液、ビニール袋)と補充の担当を決め、研修と訓練の記録に残します。個別の利用者の感染症の判断や対応は、医師、保健所、指定権者に確認する事項です。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 手引きの手指衛生の5つのタイミングと、場面別の防護具の表を、事業所の確認表に写す。血液・嘔吐物・排泄物、飛び散るおそれ、衣服の汚れ、おむつ交換の場面ごとに、使う防護具を書く
  2. ヘルパーが持参する備品(手袋、エプロン、マスク、消毒液、ビニール袋)を決め、補充の担当と確認の頻度を書く。消毒用アルコールを車内に置き忘れない注意も確認表に入れる
  3. 嘔吐物や排泄物の処理の手順、化膿した傷のガーゼなど廃棄物の分け方を確認表に書き、研修で実際に手を動かして確認する日を決める。研修と訓練の記録は、運営基準第31条の整備の記録として残す
  4. 感染が疑われるときの連絡先(管理者、かかりつけ医、市町村の担当課、保健所)の電話番号と連絡の順番を書く。報告の基準に達しない場合も保健所に相談しながら対応する流れを、確認表に書いておく

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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