事業計画 / 更新 2026-10-08
訪問介護員の人手不足と離職・採用の実態:令和7年度介護労働実態調査の数値
訪問介護の事業計画では、採用と定着の見込みをどう置くかが人員計画の前提になります。公益財団法人介護労働安定センターの令和7年度「介護労働実態調査」(令和8年7月29日公表)の概要では、訪問介護員が不足していると答えた事業所の割合は82.9%で、7職種のうち最も高くなっています。この記事は、その概要で確認できた数値を、不足感、離職率と採用率、採用と定着の方策、就職経路、賃金の順に整理し、全国の平均を自社の計画にどう使うかを説明します。自社の採用計画の立て方は訪問介護員の採用・研修・定着計画で扱います。
この記事で決めること
訪問介護の開業前後に採用と定着の計画を立てる事業者が、全国調査(介護労働実態調査)で公表されている訪問介護員の不足感、離職率と採用率、採用と定着に効果があった方策、就職経路を確認し、自社の計画にどう使うかを整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、全国調査の数値と自社の採用・定着計画を並べた比較メモを作成できる状態を目指します。
訪問介護員の不足感と、離職率・採用率
令和7年度の調査では、事業所全体で従業員が不足していると答えた事業所(「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計)は65.8%で、前年度の65.2%より上がっています。職種別では、訪問介護員が82.9%で、前年度より0.5ポイント下がったものの、7職種のなかで最も高い割合でした。
離職率と採用率は、まず訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の数値が示されています。離職率は12.4%で横ばい、採用率は14.6%で2年ぶりに上がりましたが、上がり幅は0.3ポイントと小さく、採用率は低い水準が続いています。
職種別の動向では、訪問介護員の採用率は14.5%で2年ぶりの上昇、離職率は11.6%で5年ぶりの上昇でした。介護職員は採用率が14.7%、離職率が12.7%(3年連続の低下)です。訪問介護員の離職率は介護職員より低い水準ですが、上昇に転じた点には注意が要ります。
2職種計の離職率は29歳以下で17.3%と、他の年齢階層より高くなっています。若い人を採用する計画のときは、定着の取り組みを多めに見込む根拠になります。
採用と定着に効果があったとされる方策
採用活動の実施割合は、「職員に対して友人・知人などの紹介を依頼」が66.0%、「ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談」が64.8%と高く、約3分の2の事業所が行っています。これらを行っている事業所のうち、それぞれ47.3%、41.8%が「採用に効果があった」と答えています。
採用や職場定着・離職防止の方策として行われているのは、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が75.4%で最も高く、「人間関係が良好な職場づくり」が74.2%で続きます。行っている事業所のなかで効果があったとする割合は、採用では「賃金水準の向上」が38.4%、職場定着では「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が57.9%でそれぞれ最も高くなっています。
| 目的 | 最も高かった方策 | 行っている事業所のうち効果があったとする割合 |
|---|---|---|
| 採用 | 賃金水準の向上 | 38.4% |
| 職場定着 | 有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり | 57.9% |
就職の経路と、直前の仕事
労働者が現在の法人に就職した主な経路・経緯は、「友人・知人からの紹介」が33.8%で最も高くなっています。募集の経路を決めるときは、紹介を依頼する仕組みと公的な職業紹介の両方を計画に入れる根拠として使えます。
中途採用の介護労働者の直前の仕事は、「介護関係の仕事」が36.5%で最も高い一方、介護職員と訪問介護員では「介護・福祉・医療関係以外の仕事」が最も高く、それぞれ40.3%、36.1%でした。介護の経験がない人を採用して育てる前提の研修計画が要る可能性があります。
直前の介護関係の仕事を辞めた理由は、「職場の人間関係に問題があったため」が27.3%で最も高くなっています。その具体的な内容では、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が45.8%でした。
賃金と、訪問介護員の働きやすさ
賃金支払形態が月給の人の通常月の平均月収は254,951円で、前年度より2.4%増えています。職種別では、訪問介護員の伸びが4.1%で最も大きくなっています。
これは調査対象の労働者の平均で、事業所が定める賃金の水準そのものではありません。自社の賃金を決める根拠にはせず、処遇の水準を考えるときの背景として読みます。
今の仕事や職場について、訪問介護員の68.3%が「働きがいがある」、72.7%が「働きやすい」と答えています(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)。同じ質問で、介護職員は56.8%、63.3%でした。
自社の計画に使うときの注意
この調査の数値は、全国の事業所と労働者を対象にした結果の平均です。開業したばかりの小規模な訪問介護事業所の採用率や離職率がこれに近くなるとは限りません。事業計画の採用率や離職率に全国の数値をそのまま使わず、使うときは理由を計画書に書き残します。
不足感の高さは、募集をかけても人が集まらない可能性を見込む根拠になります。訪問介護の人員計画と採用シナリオで採用の時期を遅らせた場合の影響を試算し、人員基準を満たせなくなる場合の扱いは訪問介護の人員基準割れ(欠員)時の変更届出・指定取消しリスクで確認します。
この記事は、介護労働安定センターが公表した概要で確認できた数値の整理です。調査の結果は毎年更新されるため、使うときは最新年度の結果を原資料で確認してください。自社の採用や定着が適切かを判断するものではありません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 介護労働安定センターの「介護労働実態調査」の最新年度の結果の概要を開き、訪問介護員の不足感、離職率と採用率、採用と定着に効果があった方策の数値を、調査年度と合わせて控える
- 自社が想定する採用人数、募集経路、定着のための取り組みを一覧にし、調査で効果があったとされた方策(紹介、公的な職業紹介、休暇の取りやすさ、賃金水準)と照らして、足りない経路や取り組みを書き出す
- 調査の数値は全国の事業所の平均であることを前提に、自社の見込みの採用率・離職率に使うときは、使わない理由か、使うときの補正の理由を計画書に書き残す
- 次の年度の調査が公表されたら数値を更新し、採用実績と退職実績を月次で記録して、全国の数値との差とその理由を見直す
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について(資料提供 令和8年7月29日)」(確認日 2026-10-08)