運営 / 更新 2026-10-06
医行為ではない行為(医政発第0726005号)と介助の条件
体温や血圧を測る、爪を切る、軟膏を塗る、湿布を貼る、点眼を介助する。訪問介護の現場では、こうした行為を医師や看護師でない訪問介護員が行ってよいかを迷う場面があります。厚生労働省は平成17年7月26日の医政局長通知(医政発第0726005号)で、判断に迷いやすい行為のうち「原則として医行為ではないと考えられるもの」を列挙しています。医行為とは、医師の医学的判断と技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為のことです。この記事は通知の本文で、列挙された行為と、薬の使用を介助するときの3つの条件を整理します。個々の利用者について行ってよいかは、この記事では判定しません。
この記事で決めること
訪問介護事業所が、医政発第0726005号が「原則として医行為ではない」と列挙する行為(体温・血圧・酸素飽和度の測定、軽微な処置、爪切り、口腔内の清拭、軟膏・湿布・点眼などの介助)と、薬の使用を介助するときの3つの条件・手続きを、通知の本文で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、依頼された行為を通知の列挙と限定条件に照らし、確認先と結果を残す記録を作成できる状態を目指します。
通知の位置づけ:「原則として医行為ではない」であって「誰でもできる」ではない
通知は、医師・歯科医師・看護師などの免許がない人が医業を行うことは法律で禁止されている、という説明から始まります。そのうえで、介護の現場では医行為の範囲が必要以上に広く解釈されているという声があるため、判断に迷いやすい行為のうち原則として医行為ではないと考えられるものを別紙に挙げた、と述べています。通知は、免許のない人が行うことが適切かどうかを判断するときの参考として示されたものです。
通知は同時に、ある行為が医行為かどうかは個々の行為の態様に応じて個別具体的に判断する必要がある、とも書いています。列挙された行為も、病状が不安定であるなど専門的な管理が必要な場合には、医行為とされることがあり得る、としています。このため、通知に載っている行為を、どの利用者にも行ってよいという意味で読むことはできません。
通知が挙げている行為の一覧
別紙の1〜5が本体で、注1が追加の行為です。5だけは、次の節で説明する3つの条件と手続きが付きます。
| 区分 | 行為 | 通知が付けている主な限定 |
|---|---|---|
| 別紙1 | 水銀体温計・電子体温計で腋下の体温を測る。耳式電子体温計で外耳道の体温を測る | 測った数値をもとに投薬の要否などを判断することは医行為(注2) |
| 別紙2 | 自動血圧測定器で血圧を測る | 同上 |
| 別紙3 | 入院治療の必要がない新生児以外の人に、パルスオキシメータ(血中の酸素の量を測る機器)を装着する | 同上 |
| 別紙4 | 軽微な切り傷・擦り傷・やけどなどに、専門的な判断や技術を必要としない処置をする(汚物で汚れたガーゼの交換を含む) | 応急手当を否定するものではない(注6) |
| 別紙5 | 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)、湿布の貼付、点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠を含む)、坐薬の挿入、鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助する | 次の節の3つの条件と手続きが必要 |
| 注1の1 | 爪切りで爪を切る、爪ヤスリでやすりがけする | 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚に化膿や炎症がなく、糖尿病などに伴う専門的な管理が必要でない場合 |
| 注1の2 | 歯ブラシ・綿棒・巻き綿子などで、口腔内の汚れを取り除く日常的な刷掃・清拭 | 重度の歯周病などがない場合 |
| 注1の3 | 耳垢を除去する | 耳垢塞栓(耳垢が詰まった状態)の除去は除く |
| 注1の4 | ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てる | 肌に接着したパウチの取り替えは除く |
| 注1の5 | 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備や体位の保持などを行う | なし |
| 注1の6 | 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸する | 挿入部の長さ・グリセリン濃度・容量が通知の注記の範囲内のもの |
薬の使用を介助するときの3つの条件と手続き(別紙5)
軟膏・湿布・点眼などの介助は、通知が次の3つの条件を付けています。3つとも満たしていることを、医師・歯科医師・看護職員が確認している必要があります。
手続きも決まっています。確認した医師・歯科医師・看護職員が、免許を持たない人が薬の使用を介助できることを本人または家族に伝えている。事前に本人または家族から具体的な依頼がある。医師の処方を受け、あらかじめ薬袋などで患者ごとに区分して渡された薬である。医師または歯科医師の処方と薬剤師の服薬指導があり、看護職員の保健指導・助言を守って介助する。通知は、これらがそろった場合の介助を挙げています。
| 条件 | 通知の内容 | この条件が崩れる例(通知に書かれているもの) |
|---|---|---|
| ① | 入院・入所して治療する必要がなく、容態が安定している | 容態が安定していない |
| ② | 副作用の危険性や投薬量の調整などのため、医師または看護職員による連続的な経過観察が必要な場合ではない | 連続的な経過観察が必要 |
| ③ | 薬の使い方そのものに専門的な配慮が必要な場合ではない | 内用薬では誤嚥の可能性、坐薬では肛門からの出血の可能性がある場合 |
条件を外れたときと、数値が異常だったとき
通知の注2は、列挙された行為でも、病状が不安定であるなど専門的な管理が必要な場合には、医行為とされることがあり得ると書いています。そのため、介護サービス事業者は、サービス担当者会議(利用者のケアプランについて関係者が集まる会議)を開くときなどに、必要に応じて医師・歯科医師・看護職員に、専門的な管理が必要な状態かどうかを確認することが考えられる、としています。病状が急に変わったときなどは、医師・歯科医師・看護職員へ連絡するなど、必要な措置をすぐにとる必要があります。
体温・血圧・酸素の測定では、測った数値をもとに投薬が必要かなどの医学的な判断をすることは医行為です。事前に示された数値の範囲外の異常値が測れたときは、医師・歯科医師・看護職員に報告するものとされています。通知は「事前に示された数値の範囲」と書いているので、測る前に、報告が必要な数値の範囲を医師・看護職員から示してもらっておく必要があります。
また通知は、業として行う場合には、実施する人に一定の研修や訓練が行われることが望ましい、事業者は安全に行われるよう監督することが求められる、と述べています。この整理は医師法などの解釈についてのもので、事故が起きたときの刑事上・民事上の責任は別に判断される、とも書いています。
事業所で決めておくこと
通知は、行ってよいかを事業所が決める根拠ではなく、判断の参考です。事業所では、依頼を受けた行為がこの通知の列挙のどれに当たるか、限定の条件に当たらないか、を行為ごとに確かめる順番を決めておくと整理しやすくなります。条件に当たらない、または判断がつかない行為は、利用者の主治医、訪問看護などの看護職員、担当のケアマネジャー、事業所を指定した都道府県・市区町村(指定権者)のいずれかに確認してください。
ここで確かめた行為が保険給付の身体介護・生活援助のどちらに当たるかは、別の問題です。身体介護と生活援助の区分は「訪問介護でできること・できないこと一覧」で整理しています。この記事で扱ったのは医師法などとの関係だけで、報酬の算定可否は扱っていません。
なお、この通知には後から追加された追補の通知があります。この記事は通知の本文だけで書いており、追補の内容は確認していません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 依頼された行為が通知の別紙1〜5・注1のどれに当たるかを確かめる
- 爪・口腔内・薬の使用などの限定の条件に当たらないか、利用者の容態が安定しているかを確かめる
- 薬の使用の介助は、3つの条件の確認と本人・家族への伝達、処方・服薬指導、看護職員の助言があるかを確かめる
- 条件に当たる、または判断がつかないときは、主治医・看護職員・ケアマネジャー・指定権者に確認し、結果と日付を記録する
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。