運営 / 更新 2026-09-27
訪問介護でできること・できないこと一覧(老計第10号)
訪問介護で何ができて何ができないかは、厚生労働省の通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号)の身体介護・生活援助の区分と、「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(老振第76号)が示す、生活援助の範囲に含まれないと考えられる事例で確かめます。この記事は2つの通知の区分と事例を一覧にし、範囲外の依頼を受けたときの対応の順番を整理します。
この記事で決めること
老計第10号の身体介護・生活援助の区分と、老振第76号が示す生活援助の範囲に含まれない事例を知り、利用者から範囲外の依頼を受けたときの説明・確認・保険外サービスの分け方を決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、依頼された行為を身体介護・生活援助・範囲外に振り分け、範囲外の依頼への対応と確認先を残す記録を作成できる状態を目指します。
身体介護と生活援助の定義(老計第10号)
老計第10号は、身体介護を、利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(準備や後かたづけ等の一連の行為を含む)、利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス、その他専門的知識・技術をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス、と定めています。介護を要する状態が解消されたならば不要となる行為、という説明が付いています。
生活援助は、身体介護以外の訪問介護で、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)です。利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの、と定義されています。通知は、生活援助を本人の代行的なサービスと位置づけ、介護を要する状態が解消されたなら本人が自身で行うことが基本となる行為だとしています。
同じ定義の中で、次の2つは生活援助の内容に含まれないとしています。1つは商品の販売・農作業等の生業の援助的な行為、もう1つは直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為です。
| 区分 | 番号 | 通知の項目 |
|---|---|---|
| 身体介護 | 1-0 | サービス準備・記録等(健康チェック、環境整備、相談援助、記録等) |
| 身体介護 | 1-1 | 排泄・食事介助(トイレ・ポータブルトイレ・おむつ交換、食事介助、嚥下困難者のための流動食等の調理) |
| 身体介護 | 1-2 | 清拭・入浴、身体整容(全身清拭、洗面等、爪きり・耳そうじ等の整容、更衣介助など) |
| 身体介護 | 1-3 | 体位変換、移動・移乗介助、外出介助(小項目に通院・外出介助) |
| 身体介護 | 1-4 | 起床及び就寝介助 |
| 身体介護 | 1-5 | 服薬介助 |
| 身体介護 | 1-6 | 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助 |
| 生活援助 | 2-0 | サービス準備等(健康チェック、環境整備、相談援助、記録等) |
| 生活援助 | 2-1 | 掃除(居室内やトイレ、卓上等の清掃、ゴミ出し) |
| 生活援助 | 2-2 | 洗濯(洗濯、物干し、取り入れと収納、アイロンがけ) |
| 生活援助 | 2-3 | ベッドメイク(利用者不在のベッドでのシーツ交換等) |
| 生活援助 | 2-4 | 衣類の整理・被服の補修(夏・冬物等の入れ替え、ボタン付け等) |
| 生活援助 | 2-5 | 一般的な調理、配下膳 |
| 生活援助 | 2-6 | 買い物・薬の受け取り |
利用者と一緒に行う家事は身体介護の見守り的援助
同じ掃除や調理でも、訪問介護員が代わりに行えば生活援助、利用者と一緒に行えば身体介護になる場合があります。老計第10号の1-6は、自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等を、身体介護の「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」としています。
例として、利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除・整理整頓、調理・配膳・後片付け、ベッドでのシーツ交換、衣類の整理・被服の補修、洗濯物を一緒に干したりたたんだりすること、ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別してゴミ出しのルールを理解してもらう援助、車イス等での移動介助を行って店に行き本人が自ら品物を選べるようにする援助が挙がっています。
例示の最後には、利用者と訪問介護員等がともに日常生活に関する動作を行うことが自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの、という項目があります。例示に無いものは、安全を確保しつつ常時介助できる状態で利用者と一緒に行い、自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられていることが、この項目に当たる条件です。
生活援助の範囲に含まれないと考えられる事例(老振第76号)
老振第76号の別紙は、一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例を、2つの型に分けて挙げています。通知の表記は発出当時の「家事援助」で、算定基準の別表の1のロにより単位数を算定する訪問介護を指しています。
1つ目は「直接本人の援助」に該当しない行為で、主として家族の利便に供する行為、または家族が行うことが適当であると判断される行為です。同居家族がいる世帯で、家族の分の洗濯や調理を頼まれる場面がこれに当たります。
2つ目は「日常生活の援助」に該当しない行為で、訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為と、日常的に行われる家事の範囲を超える行為に分かれます。
| 型 | 事例 |
|---|---|
| 直接本人の援助に該当しない | 利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し |
| 直接本人の援助に該当しない | 主として利用者が使用する居室等以外の掃除 |
| 直接本人の援助に該当しない | 来客の応接(お茶、食事の手配等) |
| 直接本人の援助に該当しない | 自家用車の洗車・清掃等 |
| 行わなくても日常生活に支障がない | 草むしり、花木の水やり、犬の散歩等ペットの世話等 |
| 日常的な家事の範囲を超える | 家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え |
| 日常的な家事の範囲を超える | 大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ |
| 日常的な家事の範囲を超える | 室内外家屋の修理、ペンキ塗り、植木の剪定等の園芸 |
| 日常的な家事の範囲を超える | 正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理等 |
同居家族がいる場合の生活援助の考え方
老計第10号の定義では、生活援助は、利用者が単身の場合や、家族が障害・疾病などのため本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものです。同居家族がいても、家族が家事を行うことが困難な事情があるかどうかで扱いが分かれるため、世帯の状況はケアプランの作成段階で介護支援専門員と確認しておきます。
同居家族がいる場合でも、提供できるのは利用者本人の日常生活の援助です。老振第76号の事例のとおり、家族の分の洗濯・調理・買い物や、主として利用者が使用する居室等以外の掃除は、生活援助の範囲に含まれないと考えられます。
これとは別に、訪問介護員等が自分と同居している家族である利用者にサービスを提供できるかは、運営基準の問題です。この点は「訪問介護の同居家族へのサービス提供可否」で整理しています。
範囲外の依頼を受けたときの対応の順番(老振第76号)
老振第76号は、利用者宅への訪問時に保険給付として適切な範囲を逸脱したサービスを求められた場合の扱いを示しています。まず訪問介護員が、求められた内容が介護保険の給付対象となるサービスとしては適当でない旨を利用者に説明します。給付の範囲として適切かどうか判断がつかない場合は、保険者(市町村)に確認を求めます。担当の訪問介護員の説明で理解が得られない場合は、サービス提供責任者が対応します。
利用者が保険給付の範囲外のサービスを希望する場合は、訪問介護員は居宅介護支援事業者または市町村に連絡し、希望内容に応じて、市町村が実施する軽度生活援助事業、配食サービス等の生活支援サービス、NPO法人などの住民参加型福祉サービス、ボランティアなどの活用を助言します。
説明をしても利用者が給付の対象として適当でないサービスを求めた場合、事業者が求められた内容のサービスを提供しなくても、運営基準第9条(提供拒否の禁止)には抵触しないと解する、と通知は述べています。提供拒否の禁止と正当な理由の考え方は「訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡」で確認できます。
| 順番 | 誰が | すること |
|---|---|---|
| 1 | 訪問介護員 | 介護保険の給付対象としては適当でない旨を説明する。判断がつかない場合は保険者(市町村)に確認を求める |
| 2 | サービス提供責任者 | 訪問介護員の説明で理解が得られない場合に対応する |
| 3 | 訪問介護員 | 保険給付の範囲外のサービスを希望されたら、居宅介護支援事業者または市町村に連絡し、生活支援サービス等の活用を助言する |
| 4 | 事業者 | 説明後も求められた場合、提供しなくても運営基準第9条には抵触しないと解される |
保険外サービスとして提供する場合と事業計画での扱い
老振第76号は、上の対応の補足として、保険給付の範囲外のサービスについて、利用者と事業者との間の契約に基づき、保険外のサービスとして保険給付対象サービスと明確に区分し、利用者の自己負担によって提供することは可能だとしています。あわせて、こうした事例への対応は居宅サービス計画の策定段階で利用者に十分説明し、合意を得ることが重要だとしています。
事業計画では、介護報酬の売上と保険外サービスの売上を別の行に分けます。保険外サービスを扱うなら、料金表と契約書、どの訪問のどの時間が保険外かが分かる記録の方法を、開業前の運営規程・重要事項説明書の準備と同じ段階で決めておきます。
老計第10号は、示したサービス行為の一連の流れはあくまで例示であり、実際の提供では利用者個々人の身体状況や生活実態等に即した取扱いが求められる、と念を押しています。この記事は通知の区分と事例を整理したもので、個別の行為が保険給付の対象になるかは判断しません。迷う行為は、ケアプランを作る介護支援専門員と保険者(市町村)に確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 依頼された行為を老計第10号の区分番号(1-0〜1-6、2-0〜2-6)に当てはめる
- 利用者と一緒に行う家事かどうかを確認し、見守り的援助ならケアプランへの位置付けを確かめる
- 老振第76号の事例(本人以外の家事、日常生活の援助を超える行為)に当たるかを確認する
- 範囲外なら説明し、判断がつかないものは保険者(市町村)に確認して結果と日付を記録し、保険外で提供する場合は契約・料金・記録を保険給付の対象と分ける
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。