運営 / 更新 2026-10-08

訪問介護の身体的拘束等:原則禁止と緊急時の記録

指定訪問介護では、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為をしてはなりません。例外に当たるかを事業所の都合や慣行だけで判断せず、事実関係と必要な確認先を整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護における身体的拘束等の原則禁止、例外時の記録、施設系減算との違いを確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、身体的拘束等が生じた場合の事実・理由・対応を分けた確認記録を作成できる状態を目指します。

実務へ落とす

身体的拘束等を行う場合は、態様と時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録します。記録は実施を正当化するためだけの形式ではなく、何が起き、なぜ他の手段では足りなかったと判断したかを事後に確認する基礎です。利用者・家族への説明、関係者との連携、個別の適法性は事案に応じて指定権者等へ確認します。

確認と見直し

身体拘束廃止未実施減算は、厚生労働省の報酬基準で短期入所生活介護等の施設・居住系サービスに関する規定として列挙されており、訪問介護費はその対象一覧に含まれていません。訪問介護では第23条の禁止・例外時の記録を確認し、施設系サービスの減算をそのまま算定・運用の根拠にしません。

身体的拘束等を行った場合に記録する項目

身体的拘束等を行う場合に記録する4項目を、記録の観点ごとに並べた表です。記録の保存期間は訪問介護の記録の保存義務と保存期間で確認できます。個別の適法性は、事案に応じて指定権者等へ確認します。

身体的拘束等を行った場合の記録項目
記録する項目記録で確認すること
態様どのような方法で行動を制限したか
時間行動を制限した時間
その際の利用者の心身の状況行動を制限した時点の利用者の心身の状況
緊急やむを得ない理由利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ないと判断した理由と、なぜ他の手段では足りなかったと判断したか

緊急やむを得ない場合の三つの要件と手続き(厚生労働省の手引き)

第23条第3号の「緊急やむを得ない場合」について、厚生労働省『介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き』(令和7年3月)は、切迫性・非代替性・一時性の三つの要件をすべて満たすことを、本人・家族、本人にかかわっている関係者・関係機関で検討し、確認し、記録しておくこととしています。手引きは、介護現場でこの三つを満たすケースは極めて少ないとも述べています。

この記事は要件と手続きの所在を整理するもので、個別の場面が緊急やむを得ない場合に当たるかどうかの判断はしません。判断に迷う場面は、事業所の会議体と指定権者へ確認します。

緊急やむを得ない場合の三つの要件(手引きの記載)
要件手引きの内容判断の前に確認するポイント
切迫性本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと身体拘束をしない場合にどのような危険があるか、それはどの情報から確認できるか、関係機関や医療職はどう見ているか
非代替性身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと身体拘束をせずに介護するすべての方法を洗い出したか、複数の職員や多職種で検討したか、代替方法を実際に試した結果を検討したか
一時性身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること本人の状態に応じて必要な最も短い拘束時間を想定したか(何月何日の何時から何時までか)

手続きの4点と在宅で確認する点

手引きは、三つの要件を満たす場合にも手続き面で慎重な取り扱いが必要として、次の4点に留意することを挙げています。

1つ目は、該当するかどうかを担当職員個人ではなく事業所全体の判断とすることです。要件に当てはまらなくなったときの解除も、本人・家族、関係者・関係機関が参加する会議体で取り決めておくこととされています。

2つ目は、三つの要件に照らした慎重な検討です。3つ目は、本人や家族への詳細な説明で、拘束の内容・目的・理由・時間・時間帯・期間などを、実際に拘束を行う時点で個別に説明します。

4つ目は記録で、アセスメントを記録したうえで、日々の心身の状態の観察や必要性・方法の再検討のたびに記録を加え、関係者で共有します。

記録には、三つの要件それぞれについてなぜ満たすと判断したのかを具体的に書くことが求められています。家族への説明の確認は同意ではなく、家族の同意は身体拘束を認める根拠にならないとされています。説明書・経過観察記録は事業所で保存し、運営指導や監査で提示できるようにします。

在宅では、介護の専門知識を持たない家族が担うことが多いため、専門職なら可能な代替方法が家族には実施できない場合があります。手引きは、家族でも可能な代替方法を提案・助言すること、家族による介護の限界に留意して介護サービスの追加や変更を提案・助言することを求めています。複数の事業所が関わる利用者では、検討の場や記録を関係者・関係機関で共有する点も確認します。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 利用者・他利用者等の生命又は身体を保護するための緊急性を個別に確認する
  2. 拘束等の態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録する
  3. 個別判断を記録だけで代用せず、必要な連携・確認先を残す
  4. 訪問介護に施設系の身体拘束廃止未実施減算を機械的に当てはめない

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護の掲示・秘密保持・広告・紹介に関する運営基準 →