運営 / 更新 2026-10-18

特定地域サービスの新設:訪問介護事業所への影響

令和8年6月に成立した社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)は、中山間・人口減少地域に「特定地域サービス」という新しい介護給付の類型を設けます。施行は令和9年4月1日ですが、対象地域の基準、報酬、人員配置をどこまで緩めるかは、厚生労働省の資料の時点では決まっていません。この記事は、決まっていることと決まっていないことを分けて書きます。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

確定していること:成立・公布・施行日と新設される2つの仕組み

厚生労働省の公布通知によると、改正法は令和8年6月19日に成立し、同月25日に公布されました。介護保険関係では、中山間・人口減少地域で地域の実情に応じた配置基準や包括的な評価の仕組みを導入できる特例介護サービスの類型として「特定地域サービス」を新設します。施行は令和9年4月1日です。

もう1つは「特定地域居宅サービス等事業」です。地域のサービス提供主体が少ない場合に、市町村が事業として居宅介護サービス等を実施できる仕組みで、こちらも令和9年4月1日に施行されます。

同じ改正法には、有料老人ホームの登録制度(公布後2年以内に政令で定める日)や、介護支援専門員の更新制の廃止(公布後1年6月以内に政令で定める日)のように、施行日が政令で決まる事項もあります。施行日は改正事項ごとに異なります。

この記事で決めること

中山間・人口減少地域の訪問介護事業所の管理者が、改正法で決まったことと決まっていないことを区別して把握するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、改正法の影響確認メモ(自事業所の所在地と主な訪問先が中山間・人口減少地域に当たりそうか、確定した事項、未確定の事項、次に確かめる日)を作成できる状態を目指します。

確定と未確定の区分表

厚生労働省の概要資料の図に書かれている内容を、訪問介護事業所の立場で確定と未確定に分けると、次の表のとおりです。

特定地域サービスについて資料から読み取れること
項目資料に書かれている内容状態
施行日令和9年4月1日確定
対象地域中山間・人口減少地域。国が高齢者の人口密度や高齢者人口の減少などに着目した一定の客観的な基準を設定するとされる基準は未確定
人員配置基準国の基準に従い、都道府県等が条例で規定する。管理者・専門職、夜勤職員の要件の緩和等の弾力化を想定(職員の負担や質の確保への配慮が前提)緩和の中身は未確定
報酬全国一律の出来高の介護報酬に対し、中山間・人口減少地域の事業所の実情を踏まえた介護報酬で、包括的な評価(月当たり定額報酬)を選択可能にする金額・算定条件は未確定

訪問介護に関わる背景:資料が挙げる課題

資料は、中山間・人口減少地域の訪問介護について、利用者の事情による突然のキャンセル、利用者宅間の移動に係る負担、季節による繁閑などにより、年間を通じた安定的な経営が難しく、サービス基盤の維持が課題だと書いています。月当たりの定額報酬という方向は、この課題への対応として示されたものです。

ただし、訪問介護で月当たりの定額報酬をどのように算定するのか、対象になるサービスの範囲はどこまでかは、資料には書かれていません。現行の訪問介護費の出来高の算定は、新制度が使える地域でも、基準が定まるまでは変わりません。

事業所が今できる確認

自事業所と主な訪問先が中山間地域や人口減少地域に当たりそうかは、対象地域の基準が出るまで判定できません。現行の中山間地域等の加算の地域は、告示で定められたものです。中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算で、現行制度の地域の考え方を確認できます。

新制度の選択は任意の仕組みとして示されています。事業計画では、令和9年度も現行の報酬と配置基準で計画し、政省令・告示・介護給付費分科会の資料が出た段階で見直すのが安全です。

この記事で確認していないこと

改正法の条文そのもの、社会保障審議会介護保険部会の意見書、政省令・告示は読んでいません。上の内容は、厚生労働省の公布通知と概要資料の記載だけに基づきます。対象地域の基準、報酬額、人員配置の具体的な緩和内容は、今後の審議と政省令で定められる事項で、この記事では断定していません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 自事業所の所在地と主な訪問先の市町村を書き出し、中山間地域や人口減少地域に当たりそうかを、都道府県の担当窓口で確かめる前の仮の見立てとして記録する
  2. 確定している事項(令和9年4月1日施行、特定地域サービスの新設)と、未確定の事項(対象地域の基準、報酬、人員配置の緩和の中身)を2列に分けて書く
  3. 未確定の事項ごとに、政省令・告示・介護給付費分科会の資料が出る時期を厚生労働省のページで確かめ、確かめる予定日を記録する
  4. 令和9年度以降の事業計画の前提に、現行の報酬と配置基準を使い続け、新制度の選択は基準が確定してから検討すると書く

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(100分の5)の要件 →