運営 / 更新 2026-08-28
訪問介護の特定事業所加算 体制要件・人材要件チェック
訪問介護の特定事業所加算は、体制要件・人材要件・重度要介護者等対応要件の組み合わせで(I)から(V)まで5区分に分かれます。(I)から(IV)はいずれか一つのみを算定し互いに併算定できませんが、(V)は中山間地域等への継続提供を評価する区分で、(I)から(IV)のいずれかと併算定できます。どの区分に該当し得るかは、要件を一つずつ書面と実績で確認して判断します。
この記事で決めること
特定事業所加算(I)〜(V)の要件区分を整理し、自事業所がどの区分に該当し得るか確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、特定事業所加算の区分別要件充足チェック表を作成できる状態を目指します。
区分ごとの要件を確認する
共通の土台となる体制要件は、(I)から(V)まで全区分に共通して求められる4項目です。1つ目は、訪問介護員等とサービス提供責任者のそれぞれについて研修計画を作成し、実施することです。2つ目は、利用者情報やサービス提供上の留意事項を伝える会議を定期的に開くことです。
あわせて、サービス提供責任者から担当職員への文書での伝達と、終了後の報告の両方を行います。3つ目は、訪問介護員等への定期的な健康診断の実施です。4つ目は、緊急時等における対応方法の利用者への明示です。
体制要件に加える上乗せ要素で区分が分かれます。(I)は、人材要件の2項目(介護福祉士等の割合、サービス提供責任者の実務経験年数)をどちらも満たす区分です。
さらに、重度要介護者等対応要件も満たす必要があります。これは、要介護4・5や認知症の利用者等が一定割合を占めること、または24時間連絡体制・看取り期対応を整備していることです。
(II)は人材要件2項目のうちどちらか一方を満たせばよく重度要介護者等対応要件は不要、(III)は重度要介護者等対応要件に加えて常勤サービス提供責任者の上乗せ配置または勤続7年以上の職員が3割以上という要件、(IV)は(III)と同じ上乗せ配置・勤続要件のみ、(V)は中山間地域等(最寄りの事業所から利用者の居宅まで7キロメートルを超える場合)への継続的な提供と訪問介護計画の随時見直しを満たす区分です。加算率は厚生労働省の算定基準(令和8年6月1日施行反映版)で(I)が所定単位数の20%、(II)(III)が10%、(IV)(V)が3%と定められています。
区分(I)〜(V)の要件と加算率の対応表
上の説明を区分ごとに並べ直した表です。体制要件は全区分共通の4項目(研修計画、会議、健康診断、緊急時対応方法の明示)で、表では区分ごとの違いだけを示します。根拠は、厚生労働大臣が定める基準(訪問介護費における特定事業所加算の基準)と、算定基準の訪問介護費の注10で、2026-10-09に厚生労働省のページで確認しました。
| 区分 | 人材要件 | 重度要介護者等対応要件 | そのほかの要件 | 加算率 |
|---|---|---|---|---|
| (I) | 介護福祉士の割合と、サービス提供責任者の実務経験の両方 | 必要 | なし | 20% |
| (II) | 上の2項目のどちらか一方 | 不要 | なし | 10% |
| (III) | 問わない | 必要 | 常勤サービス提供責任者の上乗せ配置、または勤続7年以上の職員が3割以上 | 10% |
| (IV) | 問わない | 不要 | (III)と同じ上乗せ配置・勤続要件 | 3% |
| (V) | 問わない | 不要 | 中山間地域等の利用者(居宅と最寄りの事業所の距離が7キロメートル超)への継続提供と、訪問介護計画の随時の見直し | 3% |
自事業所の該当性を確認する手順
体制要件は日々の運用に関わるため、研修計画の作成日、会議の開催記録またはサービス提供責任者から担当職員への伝達・報告の記録、健康診断の実施記録、緊急時対応方法を明示した文書を、届出前にまとめて確認します。人材要件は資格証と実務経験の年数を職員名簿と突き合わせ、サービス提供責任者を複数配置しなければならない事業所は常勤のサービス提供責任者が2人以上いるかも確認します。
常勤サービス提供責任者の上乗せ配置または勤続7年以上の職員が3割以上という(III)(IV)の要件のうち、勤続7年以上の訪問介護員等の割合は、前年度(3月を除く)または届出日の属する月の前3月の1月当たりの実績の平均を、常勤換算方法により算出した数で数えます。重度要介護者等対応要件(要介護4・5、認知症、たんの吸引等が必要な者の占める割合)も同じ算出期間で数えますが、常勤換算方法ではなく利用実人員または訪問回数を用います。ここでいう認知症の対象者は日常生活自立度のランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する利用者です。
たんの吸引等が必要な者は、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内の喀痰吸引、または胃ろう・腸ろうによる経管栄養・経鼻経管栄養の行為を必要とする利用者を指し、この人数に算入できるのは、たんの吸引等の業務を行う登録を受けている事業所に限られます。看取り期対応の利用実績は、同じ前年度または前3月間に該当する利用者が1人以上いることをいいます。
届出の様式は、三重県「<訪問介護>特定事業所加算について」の提出書類一覧(2026-10-06確認)では、区分(I)〜(IV)が「特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅳ)に係る届出書(訪問介護事業所)別紙9」、区分(V)が別紙9-2、区分(I)(III)の重度要介護者等対応要件が「重度要介護者等対応要件の割合に関する計算書 別紙9-3」とされています。この一覧には人材要件の割合だけを書く計算書の名称は挙がっていないため、介護福祉士の割合や勤続7年以上の割合をどの様式のどの欄へ書くかは、事業所のある都道府県・市区町村が公開する最新の様式と記入要領で確認します。様式名・別紙番号は指定権者ごとに異なりうるため、この記事では断定しません。
記入の準備として、常勤換算の割合は次の手順で確かめます(数値は説明用の仮の例で、実際の事業所の値ではありません)。①算出期間を決める。前年度(3月を除く)の1月当たりの平均か、届出日の属する月の前3月の1月当たりの平均を使う。
②その期間の各月について、訪問介護員等の勤務延時間数を、その月に事業所が定める常勤の従業者が勤務すべき時間数で割って常勤換算数を出す(例: 勤務延時間数が320時間、常勤が勤務すべき時間数が160時間なら、320÷160=2.0)。③介護福祉士など要件に数える資格の職員だけで同じ計算を行い、全体の常勤換算数との比を出す(例: 全体2.0に対し介護福祉士0.8なら40%)。
④算出期間の各月を平均する。算出期間は人材要件・重度要介護者等対応要件の項目でそろえて記録します。
例えば共通の4体制要件を満たした事業所は、介護福祉士等割合・サービス提供責任者の経験年数の両方と重度要介護者等対応を満たすかを確認し、全てなら(I)、人材要件のいずれか一方だけなら(II)を検討します。人材要件を問わず、重度要介護者等対応と、常勤サービス提供責任者の上乗せ配置(又は勤続7年以上の職員30%以上)の両方を満たすなら(III)、後者だけなら(IV)の確認対象です。中山間地域等の利用者へ7キロメートル超の継続提供と随時の計画見直しがある場合は(V)も確認しますが、これは概略の仕分けであり、算定区分の確定と届出は指定権者に確認します。
要件の充足状況だけで区分を確定させず、最終的な該当性の判断と届出に必要な書類・様式は指定権者(都道府県・市区町村等)に確認します。要件を満たさなくなった場合は速やかな届出が必要で、実際には満たしていない状態で加算を算定していたことが判明すると、支給済みの加算の返還を求められることがあります。自事業所の状況を入力して区分の当てはまりを確かめるときは、当サイトの「訪問介護 特定事業所加算 区分Ⅰ〜Ⅴ判定ツール」も使えます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 体制要件(研修計画の作成・情報伝達や技術指導の会議・健康診断の実施・緊急時対応方法の明示)の整備状況を確認する
- 人材要件(介護福祉士等の割合、サービス提供責任者の実務経験年数)を職員名簿・資格証と照合する
- 重度要介護者等対応要件、または常勤サービス提供責任者の上乗せ配置・勤続7年以上職員30%以上のいずれで区分を満たすかを判断する
- 該当する区分の届出に必要な書類を指定権者の様式・提出方法で確認し、最終的な区分該当性は指定権者へ確認する
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(確認日 2026-09-28)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準(訪問介護費における特定事業所加算の基準)」(確認日 2026-10-07)