運営 / 更新 2026-10-27
訪問介護の利用者が亡くなった後の記録:遺族への提供と保存中の安全管理
利用者が亡くなった後に、遺族から介護の記録を見せてほしいと求められたときは、厚生労働省の『診療情報の提供等に関する指針』の9に従って提供するよう、個人情報保護委員会と厚生労働省のQ&A(事例集)が求めています。同じQ&Aは、死亡後も記録を保存している間は、生存する人の情報と同様の安全管理措置を講ずるよう求めています。この記事は、その2点と、指針が定める遺族の範囲、準用される手続と費用、提供を拒める場合を、原文で確認できた範囲で整理します。
Q&Aの答え:死亡後の記録は生存者と同様に守り、遺族への提供は指針の9に従う
個人情報保護委員会と厚生労働省のQ&A(事例集)のQ2-7は、死亡した個人の情報は個人情報に該当せず個人情報保護法の対象にはならないが、どのように取り扱うべきかを問います。答え(A2-7)は、ガイダンスが、患者・利用者が死亡した後でも事業者が情報を保存している場合には、情報の漏えい等の防止のため、生存する個人の情報と同様の安全管理措置を講ずるよう求めている、というものです。
A2-7は続けて、患者・利用者が死亡した際に遺族に診療情報・介護関係記録を提供する場合は、厚生労働省の『診療情報の提供等に関する指針』の『9 遺族に対する診療情報の提供』の取扱いに従って提供を行うことを求めている、としています。介護関係記録も、この答えの対象に含まれています。
このQ&Aは平成29年5月30日に作られ、令和8年4月に一部改正されたものです。大阪市のサイトに掲載されたPDFを2026-10-27に確認しました。
この記事で決めること
訪問介護の利用者が亡くなった後に、保存している記録を遺族から求められたとき、提供してよいのか、誰に、どの手続と費用で提供するのか、保存中は何に気をつけるのかを知りたい人向け。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、利用者の死亡後の記録の取扱い整理表(保存中の安全管理、遺族からの申出の受付、続柄と本人確認、提供の可否の決定と記録を並べた表)を作成できる状態を目指します。
指針の9が定めること:遺族の範囲、提供の時期、生前の意思の尊重
指針の9は、医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因等についての診療情報を提供しなければならないと定めています。診療記録の開示を求め得る者の範囲は、患者の配偶者、子、父母及びこれに準ずる者で、これらの者に法定代理人がいる場合は法定代理人を含みます。
遺族に対する診療情報の提供に当たっては、患者本人の生前の意思、名誉等を十分に尊重することが必要である、とも書かれています。
この指針は医療従事者等と医療機関に向けて書かれた文書です。介護事業所が遺族に記録を提供するときにこの指針に従うという取扱いは、上のQ&AのA2-7が根拠です。指針の文言を訪問介護事業所の職種や書類にどう読み替えるかは、指針にもQ&Aにも書かれていません。
準用される手続と費用:申立て、証明、可否の通知、実費
指針の9は、遺族への提供に、ほかの項の定めを準用するとしています。準用されるのは、3の一般原則、7の(1)の開示の原則、7の(3)の手続、7の(4)の費用、8の提供を拒み得る場合です。7の(3)は、申立ては書面が望ましいものの、申立ての理由の記載を求めることや理由を尋ねることは不適切とし、申立人は自分が開示を求め得る者であることを証明する、としています。
7の(3)は、管理者が速やかに開示の可否などを決めて申立人に通知することも定めています。開示を認める場合は、日時、場所、方法等を指定できます。7の(4)は、費用を徴収できるとしたうえで、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内の額にしなければならないとしています。
遺族が複数いるときの代表者の決め方や、続柄を確かめる書類の種類は、確認できた資料に書かれていません。
提供を拒める場合:第三者の利益と、拒むときの説明
8は、診療情報の提供が第三者の利益を害するおそれがあるとき、または患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるときは、提供の全部または一部をしないことができるとしています。資料の事例は診療の場面で書かれており、介護記録への当てはめは書かれていません。8には、個々の事例への適用は個別具体的に慎重に判断することが必要という注意書きもあります。
提供を拒む場合は、原則として申立人に文書で理由を示し、苦情処理の体制も併せて説明しなければなりません。指針の7の(3)は、診療記録の開示の可否を、医療機関内の検討委員会等で検討したうえで決定することが望ましいとしています。介護事業所での検討の仕方は資料に書かれていません。
事業所で決めておくこと
次の整理は、この記事の見解で、資料に書かれた手順ではありません。保存している記録の保管場所とアクセスできる従業者を、亡くなった利用者の分も含めて確かめます。遺族からの申出の受付窓口を決め、申出人の続柄を確かめる方法と、提供した範囲と日付を記録に残す方法をそろえておくと、対応が人によって変わりません。
記録の保存期間は訪問介護の記録の保存期間、死亡後の契約終了の手続は訪問介護の利用者が亡くなったときの手続で整理しています。漏えいが起きたときの報告や、本人からの開示請求は訪問介護の個人データの漏えい等への対応にあります。
この記事で確認した範囲
確認したのは、個人情報保護委員会と厚生労働省のQ&A(事例集)のQ2-7とその答えです。もう1つは、厚生労働省のサイトに掲載された診療情報の提供等に関する指針の3・7・8・9で、どちらも2026-10-27に本文で確認しました。
遺族の範囲に入らない親族への提供、遺族間で意見が分かれるとき、相続の権利関係との関係は、確認できた資料に書かれていないため扱っていません。個別の提供の可否に迷う場合は、事業所の所在地の指定権者や個人情報保護委員会の相談窓口に確かめてください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 利用者が亡くなった後も保存している記録の保管場所とアクセスできる従業者を確かめ、生存中と同じ安全管理を続ける
- 遺族から記録の提供を求められたときの受付窓口を決め、申出人が配偶者、子、父母またはこれに準ずる者(法定代理人を含む)かを確かめる方法を決める
- 提供する範囲と方法を、利用者の生前の意思と名誉、第三者の利益を害するおそれの有無を踏まえて決め、提供しない場合は文書で理由を示す手順にする
- 費用を徴収する場合は実費を勘案した合理的な額にし、申出の日、申出人、提供した範囲、提供の可否を記録に残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に関するQ&A(事例集)(平成29年5月30日、令和8年4月一部改正。大阪市掲載のPDF)」(各論の本人の同意に関するQ3-1、用語の定義に関するQ2-11、第三者提供に関するQ4-15(行事などの利用者の写真のホームページ・機関誌への掲載と施設内展示)。死亡した個人の情報に関するQ2-7(遺族への介護関係記録の提供は診療情報の提供等に関する指針の9に従う))(確認日 2026-10-27)
- 厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針の策定について(平成15年9月12日医政発第0912001号、別添「診療情報の提供等に関する指針」)」(別添の3(一般原則)、7の(1)(3)(4)(診療記録の開示の原則・手続・費用)、8(診療情報の提供を拒み得る場合)、9(遺族に対する診療情報の提供))(確認日 2026-10-27)