運営 / 更新 2026-10-07
訪問介護の損害賠償(基準第37条第3項)と賠償責任保険の補償範囲の整理
訪問介護の事業者は、運営基準第37条第3項により、賠償すべき事故が発生したときは損害賠償を速やかに行わなければなりません。解釈通知は、そのために損害賠償保険に加入するか賠償資力を有することが望ましいとしています。この記事は、条文と通知の定めを確認したうえで、愛知県社会福祉協議会が公開している団体保険のパンフレット2点から、賠償責任保険が補償する場面と補償しない主な場面を整理します。これは団体契約の一例で、保険会社や商品を比較・推奨するものではなく、保険料と支払限度額は確認していません。事故の連絡と記録の義務は訪問介護の事故発生時の対応(基準第37条)で扱います。
この記事で決めること
賠償すべき事故で速やかに損害賠償を行う義務(基準第37条第3項)と、解釈通知が望ましいとする損害賠償保険の加入を踏まえ、賠償責任保険が補償する場面と補償しない場面を、団体契約の公開資料で確認できた範囲で整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、加入中の賠償責任保険の補償確認表を作成できる状態を目指します。
基準が求めるのは損害賠償の履行(第37条第3項)
第37条第3項は、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならないと定めています(e-Govの現行条文、取得2026年10月7日)。保険への加入そのものは、この条文には書かれていません。
解釈通知(老企第25号)は、賠償すべき事態で速やかに賠償するために、損害賠償保険に加入しておくか、賠償資力を有することが望ましいとしています。「望ましい」という書き方なので、加入は義務ではありません。ただし、保険に入らない場合は、賠償額を事業者が自己資金で支払うことになります。
保険で補償される例(団体契約のパンフレットで確認した範囲)
愛知県社会福祉協議会の2026年度のパンフレットは、在宅福祉サービス総合保険を、傷害補償、施設所有(管理)者賠償責任保険、補償制度費用保険を組み合わせたものと説明しています。賠償補償は、加入を申し込んだ会員団体が被保険者です。対象活動にはホームヘルプサービスと介護保険サービスが含まれ、訪問看護と居宅療養管理指導は除かれています。
賠償責任の補償例として、入浴サービスで誤って利用者にケガを負わせた場合、掃除中にガラスや掃除機を壊した場合、利用者から預かったものを盗まれた場合が挙げられています。
| 場面 | パンフレットの補償例 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 利用者にケガを負わせた | 入浴サービスで誤って利用者にケガを負わせた | 法律上の賠償責任が生じたか、保険会社の承認を得る手順 |
| 利用者宅の物を壊した | 掃除中にガラスを割った、掃除機を壊した | 支払限度額と自己負担額の有無 |
| 預かった物を紛失・盗取された | 利用者から預かったものを盗まれた | 預かる物の範囲を契約で確かめる |
保険で補償されない主な場合
別の団体のパンフレット(2025年度版)は、保険金をお支払いしない主な場合として、被保険者の故意、特別の約定で加重された賠償責任、同居の親族への賠償責任、地震・噴火・洪水・津波に起因する賠償責任を挙げています。
同じ項には、被保険者の使用人が業務中に被った身体の障害に起因する賠償責任も、支払対象外として挙げられています。従業員の労働災害に伴う賠償請求は、この種の賠償責任保険では扱われないため、別の補償を確認する必要があります。使用者賠償責任保険の約款は未取得で、補償の詳細はここでは書きません。
また、法律上の賠償責任がないのに被害者へ支払った見舞金は、被害者治療費等として対象になる場合を除き、支払いの対象になりません。賠償額は、適用される法律、被害者に生じた損害の額、過失割合で決まります。支払う前に保険会社へ連絡します。
加入前に確認する事項
この記事で参照した制度は、社会福祉協議会の会員団体向けの団体契約です。営利法人が同じ制度に加入できるかは、確認した資料の範囲では分かりません。事業所が加入できる保険の種類、被保険者、対象となる業務、支払限度額、免責は、保険会社や代理店、加入中の保険の保険証券で確認してください。
事故が起きたときの流れは、まず連絡と記録(第37条第1項・第2項)、次に原因の確認と賠償の判断、保険会社への連絡です。利用者や家族からの苦情と重なる場合は苦情・事故と単独訪問リスクへの備えも確認します。個別の事故が賠償の対象になるかは、事実関係で変わるため、この記事では判断しません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 保険証券で、被保険者、対象となる業務、支払限度額、免責の有無を書き出す
- 訪問中の利用者のケガ、利用者宅の物の破損、預かり物の紛失が補償の例に当たるかを保険会社に確認する
- 従業員の労働災害に伴う賠償請求を補償する契約が別にあるかを確認する
- 事故が起きたときの保険会社への連絡の期限と、賠償の前に承認を要する点を事故対応の手順に加える
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)」(確認日 2026-10-04)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(第8条・第27条・第29条・第37条・第39条)」(確認日 2026-10-04)
- 社会福祉法人愛知県社会福祉協議会「2026年度 在宅福祉サービス総合保険等の案内(ふれあい保険パンフレット)」(確認日 2026-10-07)
- 社会福祉法人愛知県社会福祉協議会「社会福祉事業者向けの賠償責任保険パンフレット(2025年度版・保険金をお支払いしない主な場合)」(確認日 2026-10-07)