運営 / 更新 2026-10-04

訪問介護の事故発生時の対応(基準第37条):市町村・家族・居宅介護支援事業者への連絡、記録、損害賠償

訪問介護の提供により事故が発生したとき、運営基準第37条は、事業者に3つのことを求めています。市町村・利用者の家族・居宅介護支援事業者等への連絡と必要な措置、事故の状況と処置の記録、賠償すべき事故での速やかな損害賠償です。この記事は、この3つの内容と記録の保存期間、解釈通知が示す事前の備えを、e-Govの条文と厚生労働省の通知から整理します。何が事故に当たるかの範囲と、市町村への報告の様式・期限は扱いません。

この記事で決めること

訪問介護の提供により事故が発生したとき、運営基準第37条が事業者に義務づける連絡先・記録・損害賠償の内容と、解釈通知が示す事前の備えを、条文から確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、事故発生時の連絡・記録・賠償の対応表を作成できる状態を目指します。

第37条が事業者に求める3つの義務

第37条第1項は、指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、利用者の家族、利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならないと定めています。第2項は、事故の状況と、事故に際して採った処置を記録しなければならないとし、第3項は、賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならないとしています。

義務を負う主体は、訪問介護員等ではなく指定訪問介護事業者です。訪問中に利用者の病状が急変したときの現場の対応は第27条の別の定めで、訪問介護の緊急時等の対応(基準第27条)で確認できます。

運営基準第37条の3つの義務(e-Govの現行条文、取得2026-10-04)
項事業者がすること条文の言い方
第1項市町村・利用者の家族・居宅介護支援事業者等へ連絡し、必要な措置を講じる連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない
第2項事故の状況と、事故に際して採った処置を記録する記録しなければならない
第3項賠償すべき事故が発生した場合に、損害賠償を行う損害賠償を速やかに行わなければならない

事故の記録の保存期間(第39条第2項)

運営基準第39条第2項は、利用者に対する指定訪問介護の提供に関する記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならないと定めています。保存すべき記録の一つとして、第6号が、第37条第2項の規定による事故の状況および事故に際して採った処置についての記録を挙げています。

つまり事故の記録は、書くだけでなく、完結の日から2年間は保存しておく必要があります。ほかの記録を含めた保存期間の整理は訪問介護の記録の保存義務・保存期間にあります。

解釈通知が示す事前の備え(老企第25号 第三の3(24))

厚生労働省の解釈通知(老企第25号)は、第37条について、次の3点にも留意するものとしています。1つ目は、事故が発生した場合の対応方法を、あらかじめ事業者が定めておくことが望ましいこと。2つ目は、賠償すべき事態で速やかに賠償するため、損害賠償保険に加入しておくか、賠償資力を有することが望ましいこと。3つ目は、事故が生じたときに、その原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じることです。

1つ目と2つ目は、通知が「望ましい」と書いている事項で、条文が加入を義務づけているわけではありません。保険の補償範囲は商品名や一般論から推測せず、保険証券で確認します。また、利用開始時の重要事項の説明では、通知(老企第25号 第三の3(1))が、事故発生時の対応を説明すべき重要事項の例として挙げています。契約時の説明の流れは訪問介護の利用契約・重要事項説明・記録の流れで確認できます。

確認が必要な事項と事業所での運用例

確認した範囲の条文と通知には、何を「事故」とするか、市町村へ報告すべき事故の範囲、報告の様式・方法・期限は書かれていません。これらは市町村や指定権者ごとに運用が異なる可能性があるため、事業所の所在地の市町村に確認します。確認先の一覧は指定権者に確認する事項の一覧にあります。

運用の例としては、連絡先(市町村の窓口、家族、居宅介護支援事業者)の一覧と連絡の順番を決めておく、事故の状況と処置を書く様式を用意する、記録を完結の日から2年間保存する、保険証券で補償範囲を確認する、事故ごとに原因と再発防止策を話し合って残す、といった方法があります。

利用者や家族からの苦情への対応と記録は、第36条が別に定めています。苦情と事故の備えは苦情・事故と単独訪問リスクへの備えにまとめています。個別の事故が賠償の対象になるか、賠償額をいくらにするかは、事実関係で異なるため、この記事では判断しません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 事故が発生したときの連絡先として、市町村の窓口・利用者の家族・居宅介護支援事業者等の連絡先を一覧にし、誰がどの順で連絡するかを決める
  2. 市町村への報告の対象となる事故の範囲と様式・期限を、事業所の所在地の市町村に確認して手順書に書く
  3. 事故の状況と事故に際して採った処置を記録する様式を整え、記録を完結の日から2年間保存する運用にする
  4. 損害賠償保険の加入状況や賠償資力を証券などで確認し、事故の原因を解明して再発防止の対策を講じる手順を決めておく

一次資料

制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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