運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護員の産前産後休業:労働基準法第65条の期間と、社会保険料の免除・出産手当金

訪問介護員が出産する場合、労働基準法第65条により、産前は6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の女性が請求したとき、産後は8週間を経過するまで、事業主は就業させられません。休業中は、事業主が年金事務所へ申出書を出せば健康保険・厚生年金保険の保険料が本人・事業主ともに免除され、本人は健康保険から出産手当金を受けられます。このページは、休業期間のきまりと、事業主が出す手続き、本人が受ける給付を、法令と公的機関のページで分けて確認します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の事業主や管理者が、職員の出産にあたって、労働基準法第65条の産前産後休業の期間と就業制限、休業中の社会保険料の免除申出、健康保険の出産手当金の対象期間と額の計算を、法令と日本年金機構・協会けんぽのページで確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、産前産後休業の予定表(産前6週間・産後8週間の開始日と終了日、訪問予定の引継ぎ先、社会保険料免除の申出書の提出日、出産手当金の申請書の出し先)を作成できる状態を目指します。

産前産後休業の期間:産前は請求、産後は就業させられない

労働基準法第65条は、産前産後の休業を次のように定めています。出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から、本人が休業を請求した場合は、事業主はその人を就業させてはなりません。産後8週間を経過しない女性も、請求の有無にかかわらず就業させてはなりません。

例外は産後6週間を経過した後です。本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務であれば、就業させて差し支えないと条文に書かれています。このため、産後6週間までは本人が希望しても働かせられず、産後6週間から8週間の間は、本人の請求と医師の判断がそろった場合に限り、医師が認めた業務に就けます。

妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させなければなりません(同条第3項)。訪問介護では、身体介護を外して生活援助に限る、移動の少ない訪問先に組み替える、といった勤務表の調整が、この規定に関わる実務の場面です。どの業務が軽易かは、本人と医師の意見を聞いて事業所で決める事項で、条文に業務の一覧は書かれていません。

産前産後の休業と業務の転換(労働基準法第65条)
区分期間・条件本人の請求根拠
産前休業出産予定の6週間前から(多胎妊娠は14週間前から)請求した場合に就業させられない第65条第1項
産後休業産後8週間を経過するまで請求がなくても就業させられない第65条第2項
産後6週間後の就業産後6週間を経過し、本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務に限る本人の請求が必要第65条第2項ただし書
軽易な業務への転換妊娠中の期間請求した場合に転換させる第65条第3項

休業中の賃金と、休業前後の解雇の制限

第65条の条文は、休業中の賃金を支払うかどうかを定めていません。有給にするか無給にするかは、就業規則や賃金規程の定めで決まるため、事業所は休業の申出を受ける前に、自社の規程にどう書いてあるかを確かめます。登録ヘルパーのように訪問した時間に応じて賃金を払う雇用でも、休業中の扱いは雇用契約書と賃金規程の定めを読んで決めます。

産前産後の女性が第65条によって休業する期間とその後30日間は、解雇してはなりません(労働基準法第19条)。例外は、打切補償(業務上の傷病による療養が前提の補償)を支払う場合と、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能になった場合で、後者は行政官庁の認定が必要です。解雇予告の日数や手当は訪問介護員を解雇するときの30日前の予告と解雇予告手当で整理しています。

雇用形態ごとの扱いの違いは、条文にはありません。第65条は「女性」を対象にしており、パートタイムや登録ヘルパーを対象から外す定めは置かれていません。対象になるかどうかは、その職員が労働基準法上の労働者に当たるかで決まるため、雇用契約か業務委託かなど契約の実態を確かめます。

社会保険料の免除:事業主が「産前産後休業取得者申出書」を出す

日本年金機構によると、産前産後休業期間中の健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主が年金事務所に申し出ることで、被保険者と事業主の両方の負担が免除されます。対象になる産前産後休業期間は、出産の日(出産の日が予定日より後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間です。免除は事業主の申出が前提で、本人が自動的に免除されるわけではありません。

申出書の提出は、産前産後休業をしている間、または休業の終了日から起算して1か月以内に行います。添付書類はなく、提出先は事務センターか管轄の年金事務所で、電子申請、郵送、窓口持参(年金事務所のみ)のいずれかで出せます。休業中に給与が有給か無給かは、申出書の提出にあたって問われません。

免除される期間は、産前産後休業を始めた月から、休業の終了日の翌日が属する月の前月までです。休業の終了日が月の末日のときは、終了した月までになります。たとえば、休業が令和8年4月10日に始まり、同年7月3日に終わる場合、終了日の翌日は7月4日で7月に入るため、4月分から6月分までの保険料が免除されます。

免除の期間中も被保険者の資格は変わらず、将来の年金額を計算するときは、保険料を納めた期間として扱われます。

予定していた休業の期間が変わったとき、または終了予定日の前日までに休業を終えたときは、速やかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を日本年金機構へ提出します。出産とは妊娠85日(4か月)以上の分娩を指し、早産、死産、流産、人工妊娠中絶も含まれると、同じページに書かれています。育児休業の免除期間と重なる場合は、産前産後休業の免除が優先されます。

産前産後休業期間中の保険料免除(日本年金機構の案内より)
項目内容
免除の対象健康保険・厚生年金保険の被保険者(被保険者と事業主の両方の負担が免除)
申出をする人事業主(産前産後休業取得者申出書)
提出の時期産前産後休業の間、または終了日から起算して1か月以内
提出先・方法事務センターか管轄の年金事務所/電子申請・郵送・窓口持参(年金事務所のみ)
添付書類なし
免除される月休業を始めた月から、終了日の翌日が属する月の前月まで(終了日が月末なら終了した月まで)
期間の変更・早期終了産前産後休業取得者変更(終了)届を速やかに提出

出産手当金:健康保険から本人に支給される

出産手当金は、事業主が払う賃金ではなく、健康保険から被保険者本人へ支給される給付です。協会けんぽの案内では、被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲で、休んだ期間が対象になります。出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間も対象です。

1日あたりの額は、支給開始日以前の直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額に、3分の2を掛けて求めます。協会けんぽの例では、平均が17万円なら、17万円÷30で約5,670円(10円未満四捨五入)、これに3分の2を掛けて1日3,780円です。支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、直近の継続した各月の平均と、全被保険者の平均額(支給開始日が令和7年4月1日以降は32万円)のいずれか低い額で計算します。

休んだ期間に給与の支払いがあっても、その日額が出産手当金の日額より少ないときは、差額が支給されます。出産手当金と傷病手当金は重複して受けられず、傷病手当金の額のほうが多いときは、その差額が傷病手当金として支給されます。

申請書は「健康保険出産手当金支給申請書」で、協会けんぽに加入している場合は、加入している支部へ出します。健康保険組合に加入している事業所は、組合の定めを確認します。

退職した後も受けられる場合があります。協会けんぽの案内では、資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に出産手当金を受けている、または受けられる状態であることが条件です。退職日に出勤した場合は、資格喪失後の出産手当金を受けられないと書かれています。

出産手当金は健康保険の被保険者が対象のため、社会保険に加入していない職員は、この給付の対象になりません。

確認した範囲と、事業所が準備すること

このページが確認したのは、労働基準法第65条・第19条の条文(e-Gov法令検索)、日本年金機構の産前産後休業期間中の保険料免除のページと手続きのページ(2026年10月13日に確認)、協会けんぽの出産手当金のページです。雇用保険から出る育児休業給付、出産育児一時金、国民健康保険に加入している人の扱いは、このページでは扱っていません。

準備としては、まず職員から出産予定日と多胎妊娠かどうかを書面で受け取り、産前6週間(多胎妊娠は14週間)の開始日と、産後8週間の終了日を休業期間の表に書き出します。次に、その期間の訪問予定を別のヘルパーへ割り振り、利用者とケアマネジャーへ担当者の変更を伝える日を決めます。社会保険については、申出書を休業中か終了後1か月以内に出す日を決め、出産手当金の申請書の出し先(協会けんぽの支部か健康保険組合)を職員に伝えます。

休業の期間や手当の取り扱いに、就業規則と実際の運用の食い違いがないかは、社会保険労務士や管轄の労働基準監督署、年金事務所に確認できます。個々の職員が受けられる金額の計算や、規程の条文の作成は、このページでは行いません。育児休業の申出を受けたときの扱いは訪問介護事業所の育児休業・介護休業・看護休暇で確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 職員から出産予定日と多胎妊娠かどうかを書面で受け取り、産前6週間(多胎妊娠は14週間)の開始日と、産後8週間を経過する日を予定表に書き出す。産前の休業は本人の請求が前提で、産後8週間は請求がなくても就業させられない点を表に注記する
  2. 休業期間の訪問予定を別のヘルパーへ割り振り、利用者とケアマネジャーへ担当者の変更を伝える日を決める。休業中の賃金の扱いは、就業規則・賃金規程・雇用契約書の定めを読んで確かめる
  3. 社会保険料の免除を受けるため、産前産後休業取得者申出書を休業中か、終了日から1か月以内に年金事務所または事務センターへ出す日を決める。出産日が予定とずれたときや早く休業を終えたときは、変更(終了)届を速やかに出す
  4. 健康保険の出産手当金の申請書の出し先(協会けんぽの支部か、加入している健康保険組合)を職員に伝え、解雇制限(休業期間とその後30日間)の期間を予定表に書き足して、期間中は雇用契約の終了を検討しない運用にする

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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