運営 / 更新 2026-10-12

訪問介護員の副業・兼業(掛け持ち)の労働時間の通算:事業所が確認する手順と割増賃金

他の事業所でも働く職員を雇うと、労働基準法では、2つの事業所の労働時間が通算されます。通算の対象になるのは労働時間の規定の一部で、割増賃金は、自社で働かせた時間について自社が負担します。この記事は、条文と厚生労働省のガイドラインで確認できる範囲で、事業所が掛け持ち職員について確認する手順を示します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

他の事業所でも働く職員を雇う訪問介護事業所が、労働時間の通算の対象になるかと、確認・割増賃金の手順を、条文と厚生労働省のガイドラインで確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、掛け持ち職員の労働時間の確認表(他の事業所の契約日・所定労働時間・所定外労働の申告・自社の割増賃金の対象時間)を作成できる状態を目指します。

労働時間は、事業主が違っても通算される

労働基準法の第38条第1項は、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています(e-Govの現行条文で確認、2026-10-12)。厚生労働省のガイドラインは、「事業場を異にする場合」に、事業主が違う場合も含まれるとしています。

通算の対象は、労働基準法の労働時間の規制が適用される労働者です。フリーランスや起業、顧問、理事などで労働基準法が適用されない働き方の時間は通算されません。このときも、過労にならないよう、本人からの申告で就業時間を把握するなどの配慮が望ましいとされています。

通算される規定と、通算されない規定

ガイドラインは、通算して適用される規定と、通算されない規定を分けて示しています。訪問介護員の時間外の管理では、この区別が最初の確認点になります。

労働時間の通算が及ぶ範囲(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」令和4年7月改定版で確認、2026-10-12)
規定通算されるかガイドラインの記載
法定労働時間(労基法第32条)通算される自社の事業場と他の使用者の事業場の労働時間を通算して適用する
時間外・休日労働の合計の上限(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)通算される労働者個人の実労働時間に着目する規制で、1か月単位で通算して管理する
36協定の延長時間の範囲通算されない協定が事業場ごとの時間で定められているため、事業場ごとに範囲内かを確認する
休憩・休日・年次有給休暇通算されない労働時間の規定ではないため、自社の事業場の労働時間だけで適用する

通算の順序と、割増賃金を払うのはどの事業所か

各事業所は、職員からの申告などで他の事業所の労働時間を把握します。そのうえで、まず労働契約を結んだ先後の順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働が発生した順に所定外労働時間を通算します。

この通算で、自社の労働時間制度の法定労働時間を超えた部分のうち、自社で働かせた時間について、自社が割増賃金を払います。割増賃金の率は自社の就業規則などで定めた率で、2割5分以上です。通算した所定外労働が1か月に60時間を超えた分のうち自社で働かせた時間は、5割以上とされています。

他の事業所の実労働時間は、必ずしも毎日把握する必要はなく、必要な頻度で把握すれば足りるとされています。例として、1週間分を週末にまとめて申告する、所定どおりでなかったときだけ申告する、上限規制の水準に近づいたときに申告する、が挙げられています。

申告の負担を減らす管理モデル

ガイドラインは、通算管理の負担を減らす方法として「管理モデル」を示しています。副業・兼業の開始前に、先に契約した事業所の法定外労働時間と、後から契約した事業所の労働時間の合計が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内になる範囲で、それぞれの事業所の労働時間の上限を設定します。

各事業所がその範囲内で働かせている間は、他の事業所の実労働時間を把握しなくても、労働基準法を守れるとされています。ただし、設定した上限を超えて働かせた事業所は、労働時間の通算に関する違反を問われ得るとされています。

副業・兼業を認めるときの事業所の確認事項

ガイドラインは、裁判例を踏まえて、副業・兼業は原則として認める方向が適当だとしています。制限できるのは、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏れる場合、競業で自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合とされています。

副業・兼業の相談や申告をしたことを理由に、不利益な取扱いをすることはできないとされています。

健康管理については、使用者は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、健康診断などの健康確保措置を実施する必要があるとされています。対象者を選ぶときに、副業・兼業先の労働時間を通算することは、求められていません。ただし、使用者の指示で副業・兼業を始めさせた場合は、通算した時間に基づく健康確保措置が適当とされています。

事業所の確認の手順と、このページが判断しないこと

事業所では、採用時や掛け持ちの開始時に、他の事業主との雇用の有無、契約日、所定労働時間、所定外労働の有無を職員に申告してもらい、その日付を残します。就業規則や労働時間の取扱いは就業規則と時間外労働の協定、割増賃金の計算は時間外労働の割増賃金で確認できます。

このページは、労災保険・雇用保険・社会保険の取扱い、個別の職員の労働時間が法に適合するかの判断を扱いません。このページは、令和4年7月改定のガイドライン以降の改定を確認していません。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。

登録ヘルパーの雇用形態は登録ヘルパーの雇用で説明しています。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 採用時と掛け持ちの開始時に、職員から他の事業主との雇用の有無、契約を結んだ日、1日・1週の所定労働時間、所定外労働の有無を申告してもらい、申告日を記録する
  2. 申告された所定労働時間を、契約を結んだ先後の順に通算し、自社の労働時間制度の法定労働時間を超える部分が自社で割増賃金の対象になるかを確認する
  3. 所定外労働は、発生した順に通算して、時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内に収まるかを、申告の頻度(週ごとなど)を決めて確認する
  4. 申告の負担が大きいときは、各事業場の労働時間の上限を設定する管理モデルを使えるかを検討し、他の事業場と上限を合意した記録と、健康診断などの健康確保措置の実施記録を残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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