運営 / 更新 2026-10-11

訪問介護事業所の割増賃金:時間外・休日・深夜の割増率と、計算の基礎に入れない手当

時間外・休日・深夜に働かせたときは、通常の賃金に割増を加えて支払います。割増率は時間外と深夜が2割5分以上、休日が3割5分以上、1か月60時間を超える時間外が5割以上です。基礎になる賃金の出し方と、算入しない手当も決まっています。

この記事で決めること

訪問介護事業者が、ヘルパーに時間外・休日・深夜の労働をさせたときの割増賃金の率、重なる場合の率、基礎となる賃金の計算方法と算入しない手当を、労働基準法と施行規則で確認できるようにするための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、割増賃金の計算メモ(職種別の基礎賃金の出し方・割増率の一覧・基礎に入れない手当の一覧・月60時間を超えた時間の把握方法)を作成できる状態を目指します。

結論:割増率は4種類、重なると率が足し合わさる

労働基準法第37条第1項は、36協定などで延長した労働時間と休日の労働に、通常の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上の割増賃金を支払うよう求めています。政令は、延長した時間を2割5分、休日の労働を3割5分と定めています。第4項は、午後10時から午前5時までの深夜の労働に2割5分以上を求めています。

1か月に60時間を超えた時間外の労働は、第1項ただし書により5割以上です。この率は、中小企業にも令和5年4月1日から適用されると、厚生労働省の北海道労働局が案内しています。登録ヘルパーを多く使う事業所でも、事業規模を理由に除かれません。

時間外と深夜が重なる場合など、率が重なるときは、施行規則第20条が合計の率を定めています。割増賃金の基礎になる賃金の出し方は施行規則第19条、基礎に入れない手当は第21条に書かれています。

割増賃金の率(労働基準法第37条、施行規則第20条、政令。2026年10月11日確認)
労働の種類割増率(以上)根拠
時間外(法定の労働時間を超えた分)2割5分第37条第1項、政令
休日(法定休日の労働)3割5分第37条第1項、政令
深夜(午後10時から午前5時)2割5分第37条第4項
1か月60時間を超えた時間外5割第37条第1項ただし書
時間外が深夜に及ぶ5割(月60時間を超える分は7割5分)施行規則第20条第1項
休日の労働が深夜に及ぶ6割施行規則第20条第2項

基礎になる賃金の出し方(施行規則第19条)

割増賃金は、1時間あたりの通常の賃金に、延長した時間数などと割増率を掛けて出します。1時間あたりの賃金は、賃金の決め方ごとに施行規則第19条第1項が定めています。

時間給はその金額です。日給は1日の所定労働時間で、月給は月の所定労働時間で割ります。出来高払制などは、賃金算定期間の賃金の総額を、その期間の総労働時間数で割ります。

訪問介護で、1回の訪問ごとに報酬を決めている登録ヘルパーは、この出来高払制などの区分に当たるかが論点になります。どの区分で計算するかは、個別の契約内容で変わります。社会保険労務士や労働基準監督署に確認します。

基礎賃金の計算(施行規則第19条第1項。2026年10月11日確認)
賃金の決め方1時間あたりの賃金の出し方
時間によって定める(時間給)その金額
日によって定める(日給)金額を1日の所定労働時間数で割る(日によって違うときは、1週間の1日平均)
週によって定める(週給)金額を週の所定労働時間数で割る(週によって違うときは、4週間の1週平均)
月によって定める(月給)金額を月の所定労働時間数で割る(月によって違うときは、1年間の1月平均)
出来高払制その他の請負制賃金算定期間の賃金の総額を、その期間の総労働時間数で割る

基礎に入れない手当

第37条第5項は、家族手当、通勤手当、その他厚生労働省令で定める賃金を、割増賃金の基礎となる賃金に算入しないと定めています。施行規則第21条は、家族手当と通勤手当のほか、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を挙げています。

条文は手当の名前を挙げていますが、個別の手当が除けるかを名前だけで決める書き方ではありません。処遇改善に関わる手当や、移動にかかる手当のように、この条文に載っていない手当があるときは、基礎に入れるかどうかを労働基準監督署に確認します。

割増賃金の基礎に入れない賃金(労働基準法第37条第5項、施行規則第21条。2026年10月11日確認)
賃金根拠
家族手当第37条第5項
通勤手当第37条第5項
別居手当施行規則第21条第1号
子女教育手当施行規則第21条第2号
住宅手当施行規則第21条第3号
臨時に支払われた賃金施行規則第21条第4号
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金施行規則第21条第5号

月60時間を超える時間外と、代替休暇

第3項は、過半数労働組合や過半数代表者との書面の協定で、月60時間を超えた時間外の割増賃金の支払に代えて、通常の賃金が支払われる休暇を与える定めができるとしています。この休暇は、第39条の年次有給休暇とは別のものです。

月60時間を超える時間外が生じる可能性がある事業所は、1か月の時間外を数える仕組みを作り、就業規則の賃金の項に割増率を書いておきます。時間外の上限と36協定の届出は、訪問介護事業所の就業規則と36協定:作成・届出が必要な人数、意見聴取、周知の方法で確認できます。

条文と案内で確認できない点

この記事は、個別のヘルパーの割増賃金の金額を計算するものではありません。固定残業代の扱いや、個別の手当が基礎に入るかは、条文だけでは決まりません。社会保険労務士や所轄の労働基準監督署に確認してください。

どの時間が法定の時間外に当たるかは、移動時間や待機時間が労働時間かどうかに左右されます。この記事は、その判断には踏み込んでいません。

ほかの記事との違い

移動時間や待機時間が労働時間に当たるかは、雇用・勤怠と訪問介護の移動時間で確認できます。就業規則に賃金の決め方を書く手順は、訪問介護事業所の就業規則と36協定:作成・届出が必要な人数、意見聴取、周知の方法で扱っています。

雇入れ時に書面で示す賃金の事項と賃金台帳は、訪問介護の雇入れ時の労働条件明示と労働者名簿・賃金台帳(保存3年)で確認できます。年次有給休暇の日数は、訪問介護事業所の年次有給休暇:付与日数、年5日の時季指定義務、年次有給休暇管理簿で確認できます。

割増賃金の前に法定休日を確かめる

休日割増を確認する前に、職員ごとのどの日を労働基準法第35条の休日として予定したかを勤務表で確かめます。休日の予定と実績を照合する手順は、訪問介護事業所の法定休日:勤務表と実績の確認手順で確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. ヘルパーの賃金を、時間給・日給・月給・1回ごとの報酬などの種類に分けて、施行規則第19条の計算方法で1時間あたりの基礎賃金を出す表を作る
  2. 支給している手当を一覧にし、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当などが、基礎賃金に入れない賃金に当たるかを確かめて印を付ける
  3. 時間外・休日・深夜、およびこれらが重なる場合の割増率を表にして、1か月の時間外が60時間を超えた時間を月ごとに数える方法を決める
  4. 就業規則の賃金の項に、割増賃金の率と基礎賃金の範囲を書いてあるかを確かめ、足りなければ書き足して届け出る日を決める

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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