運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護の指定取消し・効力停止を受けたあと:審査請求と取消訴訟の期間と、執行停止の位置づけ
指定取消しや効力停止の通知を受けたあとの不服申立ては、期限が短く、処分書の教示で確認するのが出発点です。条文では、審査請求は処分を知った日の翌日から3月以内、取消訴訟は知った日から6箇月以内とされています。
結論:期限は「知った日」と「処分の日」の2本で数え、早いほうが先に来る
行政不服審査法第18条は、処分についての審査請求を、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときはできないと定めています。あわせて、処分の日の翌日から起算して1年を経過したときもできないと定めています。どちらも、正当な理由があるときは例外です。
行政事件訴訟法第14条は、取消訴訟を、処分があったことを知った日から6箇月を経過したとき、または処分の日から1年を経過したときは提起できないと定めています。こちらも正当な理由があるときは例外です。
審査請求と取消訴訟は、数え方も長さも異なります。通知を受け取った日を基準に、どちらの期限が先に来るかを最初に確認します。この記事は、個別の処分が違法かどうかや、不服申立てで認められる見込みを判断するものではありません。
この記事で決めること
訪問介護事業所が指定の取消し・効力停止の処分を受けたあとに、行政不服審査法の審査請求と行政事件訴訟法の取消訴訟にそれぞれどのような期間が定められ、処分の効力がどうなるか(執行停止)を、処分書の教示とあわせて条文から確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、処分通知を受けたときの期限管理メモ(処分を知った日、処分の日、教示に書かれた審査請求先と期間、訴訟の被告と出訴期間)を作成できる状態を目指します。
審査請求と取消訴訟の期間の比べ方
次の表は、条文に書かれた期間を並べたものです。審査請求をしたときの取消訴訟の期間は、行政事件訴訟法第14条第3項で、審査請求に対する裁決を知った日から6箇月、または裁決の日から1年と定められています。
| 手段 | 知った日から数える期間 | 処分の日から数える期間 |
|---|---|---|
| 審査請求 | 処分を知った日の翌日から3月 | 処分の日の翌日から1年 |
| 取消訴訟 | 処分を知った日から6箇月 | 処分の日から1年 |
| 審査請求をしたあとの取消訴訟 | 裁決を知った日から6箇月 | 裁決の日から1年 |
どの行政庁に求めるかは処分書の教示で確認する
行政不服審査法第82条は、不服申立てができる処分をする行政庁は、処分の相手方に、不服申立てができる旨、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てができる期間を書面で教示しなければならないと定めています。口頭で処分をする場合は除かれます。
行政事件訴訟法第46条も同様に、取消訴訟を提起できる処分をする行政庁が、被告とすべき者と出訴期間を書面で教示するよう定めています。
審査請求先は、法律に特別の定めがなければ、処分庁に上級行政庁がないときはその処分庁、あるときはその最上級行政庁などと、行政不服審査法第4条が区分しています。実際の宛先は、処分書の教示で確認してください。
処分書を受け取ったら、教示欄に書かれた行政庁名、期間、被告となる者を、そのまま書き写して記録します。教示と条文の期間が食い違うように見えるときは、処分を出した窓口に確認してください。
審査請求をしても、訴訟を起こしても、処分の効力は止まらない
行政不服審査法第25条第1項は、審査請求は処分の効力、処分の執行または手続の続行を妨げないと定めています。行政事件訴訟法第25条第1項も、取消訴訟の提起は処分の効力などを妨げないと定めています。したがって、不服申立てをしただけでは、取消しや効力停止の処分は有効なまま続き、執行停止が認められた場合にだけ、その部分が止まります。
処分の効力などを止める仕組みとして、審査請求では、審査庁が必要があると認めるときに執行停止をとれる旨が同条第2項と第3項に定められています。さらに第4項は、審査請求人の申立てがあった場合に、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは審査庁が執行停止をしなければならないとし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、または本案について理由がないとみえるときは除いています。
取消訴訟では、重大な損害を避けるために緊急の必要があるとき、裁判所が申立てにより執行停止を決定できる旨が行政事件訴訟法第25条第2項に定められ、第4項は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、または本案について理由がないとみえるときはできないとしています。
執行停止が認められるかどうかは、個別の事情を踏まえた判断になります。この記事では、その見込みは扱いません。
審査請求を経るか、直接訴訟にするか
行政事件訴訟法第8条第1項は、審査請求ができる処分でも、直ちに取消訴訟を提起することを妨げないと定めています。ただし、法律に、審査請求に対する裁決を経たあとでなければ訴えを提起できないという定めがあるときは、その定めに従います。
どちらの手段をとるか、両方を進めるかは、処分書の教示と期限を踏まえた判断になります。期限が短いため、通知を受けた段階で、相談先となる弁護士などの専門家を早めに確認しておく方法があります。
処分の前後の記事と、この記事で扱わないこと
処分に至るまでの勧告、命令、聴聞、弁明の機会の手続は訪問介護の指定取消しまでの手続:勧告・命令・公表と、聴聞・弁明の機会の順番で確認できます。
運営指導から監査への切替と返還は訪問介護の運営指導から監査への切替と行政処分・返還、不正請求の徴収金は訪問介護の報酬返還:不正請求の徴収金(100分の40の上乗せ)と過誤調整の違いで確認できます。
この記事は、行政不服審査法と行政事件訴訟法の条文から期間と効力の関係を整理したものです。個別の処分への不服申立ての可否や勝敗の見込み、書面の書き方は扱いません。
不正請求の徴収金に関する処分への不服申立ては、介護保険法に別の定め(第183条など)があるため、この記事の対象外です。実際に処分を受けたときは、処分書に書かれた窓口に確認し、弁護士など専門家に相談してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 処分書を受け取った日と、処分書に書かれた処分の日を別々に記録し、処分書の教示欄にある不服申立てをすべき行政庁と期間、取消訴訟の被告と出訴期間を書き写す
- 審査請求と取消訴訟のそれぞれについて、条文の期間(知った日から数える期間と、処分の日から数える期間)を暦の上で計算し、早いほうの期限を共有カレンダーに入れる
- 処分の効力は審査請求や訴訟の提起だけでは止まらないため、利用者への連絡、ケアマネジャーへの連絡、職員の勤務の扱いなど、処分の期間中に必要な対応を洗い出す
- 審査請求や訴訟を行うかどうか、執行停止を求めるかどうかは、処分書の教示と窓口の説明を確認したうえで、弁護士など専門家への相談を期限に間に合うよう早めに設定する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。