事業計画 / 更新 2026-10-10

訪問介護の事業所規模別の収支比較(月約300回・700回・1,650回、令和6年度決算)

訪問介護の収支は、月の訪問回数が増えると単純に良くなるわけではありません。厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算)の第73表は、1事業所あたりの月平均の収支を、延べ訪問回数の9階級に分けて示しています。この記事では、そのうち月約300回・約700回・約1,650回の3階級を並べ、収入・給与費・その他の費用・収支差率の違いと、売上が下がったときの試算を確認します。

この記事で決めること

訪問介護の1事業所あたりの月次収支を、延べ訪問回数が月約300回・約700回・約1,650回の3つの規模で並べ、収入・給与費・その他の費用・収支差率の違いと、売上が下がったときの試算を厚生労働省の調査から確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、規模別の収支比較メモ(自社の計画の月の訪問回数・収入・給与費・その他の費用・差引を、調査の近い階級と並べた表)を作成できる状態を目指します。

この記事の役割と、先に読む2記事との分担

損益分岐の訪問件数を自社の入力から計算する式は、訪問介護の損益分岐点(訪問件数)の計算式とシミュレーター前提で説明しています。給与費の割合の公表値と読み方は、訪問介護の人件費率67.8%(令和7年度・訪問回数階級別)にまとめています。

この記事は、その2つの間をつなぎます。3つの規模を同じ項目で並べ、規模が違うと収入の内訳とその他の費用がどう違うかを見る記事です。自社の入力を変えて損益を計算したいときは、事業計画シミュレーターを使います。

3つの規模の月次収支(令和6年度決算・1事業所あたり月平均)

次の表の値は、調査の第73表をそのまま写したものです。金額は千円単位で、決算額を12で除した月平均です。

給与費・その他の費用・差引の割合は、収入①に対する割合です。差引は、収入から支出を引いた額で、収支差率にあたります。

収入①は、介護料収入に保険外の利用料や補助金収入などを足した額です。介護報酬だけの売上ではないため、報酬の単位数に件数を掛けた金額とは一致しません。

月約300回の階級は、延べ訪問回数が201〜400回の事業所の平均です。月約700回は601〜800回、月約1,650回は1,401〜2,000回の階級にあたります。回数は、各階級の平均です。

訪問介護の規模別の収支(令和6年度決算、1事業所あたり月平均、厚生労働省 第73表)
項目月約300回(201〜400回)月約700回(601〜800回)月約1,650回(1,401〜2,000回)
延べ訪問回数(階級の平均)303.5回691.4回1,650.5回
収入①1,320千円3,182千円6,466千円
給与費993千円(75.3%)2,227千円(70.0%)4,235千円(65.5%)
減価償却費18千円(1.3%)32千円(1.0%)107千円(1.7%)
その他の費用227千円(17.2%)395千円(12.4%)1,251千円(19.4%)
支出②1,283千円2,740千円5,892千円
差引(収支差率)37千円(2.8%)442千円(13.9%)574千円(8.9%)
常勤換算職員数3.6人7.0人11.1人
有効回答数1426846

表から読めること(1訪問あたりの収入と、職員1人あたりの訪問回数)

給与費の割合は、規模が大きい階級ほど低く、75.3%、70.0%、65.5%と並びます。一方で収支差率は、月約700回が13.9%で最も高く、月約1,650回は8.9%、月約300回は2.8%です。規模が大きいほど収支差率が高くなる、とは言えません。

月約1,650回の階級は、その他の費用の割合が19.4%で、月約700回の12.4%より高くなっています。表には、この差の理由を示す項目がありません。理由は調査から断定できないため、ここでは差があることだけを確認します。

表の値から、当サイトで次の2つを計算しました(調査の公表値ではなく、当サイトの試算です)。1つめは、収入①を延べ訪問回数で割った1訪問あたりの収入で、月約300回が約4,349円、月約700回が約4,602円、月約1,650回が約3,918円です。2つめは、延べ訪問回数を常勤換算職員数で割った職員1人あたりの月の訪問回数で、月約300回が約84回、月約700回が約99回、月約1,650回が約149回です。

1訪問あたりの収入には、保険外の利用料や補助金も入っています。訪問の所要時間や加算の有無も階級ごとに違うため、報酬の単位数から出した金額とは直接比べられません。

収入が10%下がった場合の試算(費用は変わらない前提)

売上が計画より下がったときの余裕を見るため、表の収入①が10%下がり、支出②が変わらないと置いた試算です。人員を減らさず、固定的な費用がそのまま残る場合の、当サイトの計算です。

実際には、訪問が減れば移動の費用などが減ることもあり、反対に人員を減らせないこともあります。この試算は、規模ごとの余裕の差を見るための目安です。

収入①が10%下がり、支出②が変わらない場合の差引(当サイトの試算、表の値から計算)
規模収入①(10%減)支出②差引収入に対する差引の割合
月約300回1,188千円1,283千円−95千円約−8.0%
月約700回2,863.8千円2,740千円約124千円約4.3%
月約1,650回5,819.4千円5,892千円約−73千円約−1.2%

読むときの注意点と、自社の計画への使い方

調査は、規模ごとに別の事業所を集めた平均です。1つの事業所が訪問回数を増やしたときに、この順に収支が変わることを示すものではありません。階級の有効回答は46〜142件で、階級の平均に個々の事業所の影響が出ている可能性があります。

調査の訪問介護の全体の値は、収入が月3,290千円、給与費の割合が67.8%です。階級別の読み方と全階級の一覧は、訪問介護の人件費率67.8%(令和7年度・訪問回数階級別)で確認できます。

自社の計画を使うときは、計画の月の延べ訪問回数に近い階級を選び、収入・給与費・その他の費用を同じ項目で並べます。大きく違う項目は、人員計画や固定費の入力を見直す手がかりになります。この記事は利益や黒字化を保証するものではありません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 自社の計画の月の延べ訪問回数を決め、調査の階級(200回以下、201〜400回など9階級)から近いものを選ぶ
  2. 計画の月の収入・給与費・その他の費用を、調査の階級の値と同じ項目で並べる
  3. 収入が10%下がり費用は変わらない場合の差引を計算し、赤字になる規模と開業後の資金の余裕を確かめる
  4. 調査との差が大きい項目は、人員計画や固定費の入力を見直して理由を書き残す

一次資料

制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護の人件費率67.8%(令和7年度・訪問回数階級別) →