運営 / 更新 2026-10-09
訪問介護と同一法人の居宅介護支援を併設するときの線(公正中立・集中減算)
訪問介護の事業所と同じ法人で居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)を運営すると、利用者の紹介が自社の中で完結しやすくなります。一方で、居宅介護支援の運営基準は、ケアプランが特定の事業者に不当に偏らないよう公正中立を求め、紹介を受ける側と出す側の双方に禁止を置いています。この記事では、e-Govの条文と厚生労働大臣が定める基準(告示)から、訪問介護の側が守る線と、居宅介護支援の側で起きる特定事業所集中減算(自社の訪問介護への紹介が偏りすぎたときの減算)を分けて整理します。個別の事案が基準に適合するかは、指定権者(都道府県・指定都市・中核市)が判断します。
この記事で決めること
同じ法人で訪問介護と居宅介護支援の事業所を運営するとき、居宅介護支援の公正中立と指示等の禁止、訪問介護の運営基準第35条、居宅介護支援側で判定される特定事業所集中減算の基準を、条文と告示で切り分けて確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、併設する居宅介護支援との関係の点検表(前六月間の紹介割合・利用者への説明・法人内の指示と費用配分の確認記録)を作成できる状態を目指します。
居宅介護支援に課される公正中立と、管理者の指示の禁止
居宅介護支援の運営基準(平成11年厚生省令第38号)の第1条の2第3項は、指定居宅介護支援事業者に、利用者に提供される居宅サービスが特定の種類または特定の事業者に不当に偏することのないよう、公正中立に行うことを求めています。同じ法人が訪問介護を持っていても、この条文に例外は書かれていません。
第25条は、事業者と管理者が介護支援専門員に対して特定の居宅サービス事業者のサービスを位置付けるべき旨の指示等を行うことを禁じています(第1項)。介護支援専門員が利用者に特定の事業者の利用を指示することも禁じられています(第2項)。つまり、同じ法人の訪問介護の事業所を使うよう、法人の側から居宅介護支援の担当者に指示することは、条文上は居宅介護支援の事業者の禁止に当たります。
利用者への説明にも定めがあります。第4条第2項は、居宅介護支援の開始に際し、利用者が複数の居宅サービス事業者の紹介を求めることができることなどを説明し、理解を得るよう求めています。この規定は、運営基準減算の基準(告示第82号)にも挙げられています。
第4条第3項は、前六月間のケアプランで訪問介護等が同一の事業者によって提供された割合を説明するよう努めることを求めています(努力義務)。
訪問介護の側の線:運営基準第35条
訪問介護の運営基準(省令第37号)の第35条は、指定訪問介護事業者が、居宅介護支援事業者またはその従業者に対し、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないと定めています。条文の対象は、居宅介護支援事業者とその従業者への供与です。
同じ法人の内部で行われる人件費の配分や費用の負担が、この条文にいう「供与」に当たるかどうかは、確認した条文と告示には書かれていません。運営の仕組みを設計する段階で、法人内の費用の分け方、紹介件数に連動した評価や賞与の仕組みを設けるときは、事業所のある指定権者に取扱いを確認し、確認した日と回答を記録します。第35条の条文と違反時の定めは訪問介護の利益供与の禁止(基準第35条):居宅介護支援事業者への金品で確認できます。
| 基準 | 条文 | 課される側 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 居宅介護支援の運営基準 | 第1条の2第3項 | 居宅介護支援事業者 | 居宅サービスが特定の種類・事業者に不当に偏らないよう公正中立に行う |
| 居宅介護支援の運営基準 | 第25条第1項・第2項 | 事業者・管理者/介護支援専門員 | 特定の事業者のサービスを位置付ける・利用する旨の指示等の禁止 |
| 居宅介護支援の運営基準 | 第25条第3項 | 事業者・従業者 | 利用させることの対償として、居宅サービス事業者等から金品等を収受することの禁止 |
| 訪問介護の運営基準 | 第35条 | 指定訪問介護事業者 | 居宅介護支援事業者・その従業者への、利用させることの対償としての金品等の供与の禁止 |
| 厚生労働大臣が定める基準 | 第83号 | 居宅介護支援事業所 | 特定事業所集中減算の基準(次の節) |
特定事業所集中減算は居宅介護支援の側の減算
厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)の第83号は、居宅介護支援費における特定事業所集中減算の基準として、正当な理由なく、居宅介護支援事業所が前六月間に作成したケアプランに位置付けた訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、地域密着型通所介護の提供総数のうち、同一の事業者によって提供されたものの占める割合が百分の八十を超えていることと定めています。
この減算は居宅介護支援費に対するもので、減算を受けるのは居宅介護支援の事業所です。厚生労働省の算定基準(指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準、平成12年厚生省告示第20号。令和6年告示第86号と令和8年告示第87号の改正を反映した現行の本文)の居宅介護支援費の注には、特定事業所集中減算として1月につき200単位を所定単位数から減算すると書かれています。
留意事項通知(老企第36号)の「10 特定事業所集中減算について」は、判定を毎年度2回行い、判定期間が前期(3月1日から8月末日)なら減算適用期間は10月1日から3月31日まで、後期(9月1日から2月末日)なら4月1日から9月30日までとし、その期間の居宅介護支援のすべてに減算を適用すると定めています。算定の書類は、前期の判定なら9月15日まで、後期の判定なら3月15日までに作成し、割合が百分の八十を超えた場合は都道府県知事(指定都市・中核市は市長)に提出し、超えなかった場合も2年間保存します。
告示は「正当な理由なく」と書くだけで、何が正当な理由に当たるかを告示の本文に挙げていません。留意事項通知は、考えられる例として、通常の事業の実施地域にサービスごとの事業所が5事業所未満の場合、特別地域居宅介護支援加算を受けている場合、判定期間の1月当たりの平均ケアプラン件数が20件以下であるなど事業所が小規模な場合、サービスごとの位置付け件数が1月当たり平均10件以下であるなどサービスの利用が少数の場合、質が高いことによる利用者の希望を勘案した場合、その他知事(指定都市・中核市は市長)が認めた場合を挙げ、判断は地域的な事情を含めて指定権者が行うとしています。
ここに書いた例は、確認した通知の平成30年改正時の新旧対照表の改正後の本文によるもので、令和6年3月の改正の新旧対照表にはこの節の改正は出てきません。個別の当てはめは指定権者の資料で確認します。自社の訪問介護にケアプランが集まる設計では、この割合を判定の前に把握しておく必要があります。
併設の事業所での確認の順序
次の確認は条文が定めるものではなく、編集上の例です。まず、居宅介護支援の事業所に、前六月間のケアプランで自社の訪問介護が占める割合を数えてもらい、百分の八十を超えていないかを確認します。次に、居宅介護支援の重要事項説明書に、複数の事業者の紹介を求められることの説明が書かれているかを確かめます。
訪問介護の側では、法人から居宅介護支援の担当者へ特定の事業者を位置付けるよう働きかけていないか、紹介件数に連動した報酬や評価の仕組みがないかを点検し、記録に残します。利用者の紹介元の考え方は訪問介護の利用者獲得と紹介経路、ケアマネジャーとの日常の連携は訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告で整理しています。
このページは、個別の併設計画が基準に適合するかを判定するものではありません。法人内の費用の分け方や紹介の仕組みを決める前に、指定権者へ確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 居宅介護支援の事業所に、前六月間のケアプランで自社の訪問介護が占める割合を、サービス種類ごとに数えてもらう
- 割合が百分の八十を超えていないかを確認し、超える場合は正当な理由の扱いを指定権者に確認して、確認日と回答を記録する
- 居宅介護支援の重要事項説明書に、複数の事業者の紹介を求められることの説明が書かれているかを確かめる
- 法人から居宅介護支援の担当者への指示、紹介件数に連動した評価や費用配分がないかを点検し、判断に迷う点は指定権者に確認して記録する
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(第33条・第35条)、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(第25条)、介護保険法(第77条)」(確認日 2026-10-04)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第1条の2・第4条・第25条」(確認日 2026-10-09)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第82号・第83号(居宅介護支援費の運営基準減算・特定事業所集中減算の基準)」(確認日 2026-10-09)
- 厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項(特定事業所集中減算の判定期間)の新旧対照表・指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準(注6)」(確認日 2026-10-09)