運営 / 更新 2026-10-04
訪問介護の居宅介護支援事業者への利益供与の禁止(基準第35条):紹介の対価として金品を渡せない理由と取消しの根拠
居宅介護支援事業所のケアマネジャーから利用者を紹介してもらうことは、訪問介護の事業所にとって大切な利用者獲得の経路です。一方、運営基準第35条は、利用者に自社のサービスを使わせることの対価として、居宅介護支援事業者やその従業者に金品などを渡すことを禁じています。この記事は、第35条の内容、居宅介護支援の側にある同じ趣旨の禁止規定、違反した場合に指定の取消しなどの根拠になり得る介護保険法第77条を、e-Govの条文と厚生労働省の通知から整理します。個別の取引がこの禁止に当たるかの判断は扱いません。
この記事で決めること
訪問介護事業者が居宅介護支援事業者やその従業者に、利用者に自社を使わせる対償として金品その他の財産上の利益を供与してはならないという運営基準第35条の内容と、居宅介護支援側の収受禁止、違反が指定取消しなどの根拠になり得る介護保険法第77条を確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、利益供与の禁止に関する社内ルール表を作成できる状態を目指します。
第35条が禁じること
運営基準第35条は、指定訪問介護事業者は、居宅介護支援事業者またはその従業者に対し、利用者に対して特定の事業者によるサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないと定めています。
条文が禁じているのは、「特定の事業者のサービスを利用者に使わせることの対償として」金品その他の財産上の利益を供与することです。解釈通知(老企第25号 第三の3(22))は、この規定の目的を、居宅介護支援の公正中立性を確保するためと説明しています。
居宅介護支援の側にも同じ趣旨の禁止がある
居宅介護支援の運営基準(平成11年厚生省令第38号)の第25条第3項は、指定居宅介護支援事業者とその従業者に対して、居宅サービス計画の作成または変更に関し、利用者に特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、その事業者等から金品その他の財産上の利益を収受してはならないと定めています。第2項は、介護支援専門員が、利用者に特定の事業者のサービスを利用すべき旨の指示等を行うことも禁じています。
つまり、渡す側(訪問介護事業者)と受け取る側(居宅介護支援事業者)の双方に、同じ趣旨の禁止がかかっています。紹介を受ける関係の設計では、相手の事業所の基準でも禁止されていることを前提にします。紹介元との関係づくりは訪問介護の利用者獲得と紹介経路で、ケアマネジャーとのやり取りは訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告で整理しています。
| 基準 | 条文 | 禁じられる人 | 禁じられること |
|---|---|---|---|
| 訪問介護の運営基準(省令第37号) | 第35条 | 指定訪問介護事業者 | 居宅介護支援事業者・その従業者への、利用させることの対償としての金品等の供与 |
| 居宅介護支援の運営基準(省令第38号) | 第25条第3項 | 指定居宅介護支援事業者・その従業者 | 居宅サービス事業者等からの、利用させることの対償としての金品等の収受 |
基準を守れないときの定め(介護保険法第77条)
介護保険法第77条第1項第4号は、指定居宅サービス事業者が、設備及び運営に関する基準に従って適正な事業の運営をすることができなくなったときに、都道府県知事が指定を取り消し、または期間を定めて指定の全部もしくは一部の効力を停止することができると定めています。ここでいう基準は、介護保険法第74条第2項が定めるもので、実際の内容は都道府県の条例で定められます。この記事で確認したのは国の省令第35条までで、条例に同趣旨の規定があるかは指定権者に確認が必要です。
ただし、個別の行為が第35条に違反するか、違反した場合に取消しまたは効力停止のどちらになるかは、条文だけでは決まらず、事実関係と指定権者の判断によります。この記事では判断しません。運営指導から指定取消しまでの流れは運営指導から監査・指定取消しまでの流れで確認できます。
確認が必要な事項と事業所での運用例
確認した範囲の条文と通知には、どのような金品・財産上の利益が「対償」に当たるか、紹介への謝礼、会食、物品の提供、広告料の名目などが禁止の対象になるかの線引きは書かれていません。個別の取引が気になる場合は、事業所の所在地の指定権者に確認します。確認先の一覧は指定権者に確認する事項の一覧にあります。
運用の例としては、居宅介護支援事業者への連絡は、対応できる地域・時間帯・サービスや受入れ状況の情報提供を中心にする、居宅介護支援事業者や従業者への金品・接待などの提供は、事前に目的と内容を管理者へ報告して記録に残し、可否に迷うものは提供前に指定権者へ確認する、従業者に、紹介への見返りとして金品を渡さない方針を周知する、といった方法があります。条文が禁じるのは「対償として」の供与であり、通常の連絡や情報提供そのものを禁じる文言ではありません。
ほかの運営上守る基準(掲示、秘密保持、広告など)は訪問介護の運営上守る基準にまとめています。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 運営基準第35条と、居宅介護支援の運営基準第25条第3項の条文を読み、利用者に自社を使わせる対償として金品を渡すことが禁じられていることを社内で共有する
- 居宅介護支援事業所への連絡は、対応地域・時間帯・サービス・受入れ状況の情報提供を中心にすると決め、紹介の見返りの金品は扱わない方針を従業者に周知する
- 金品や接待を提供する場合は、目的と内容を記録して管理者が確認する手順を決める
- 何が「対償」に当たるかが判断しにくい取引は、事業所の所在地の指定権者に確認してから実施する
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。