運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護の処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳ:任用・研修・昇給の仕組みと年額440万円

訪問介護事業所が処遇改善加算の上位区分を算定するには、賃金の改善だけでなく、キャリアパス要件を満たす必要があります。老発0313第6号(令和8年度分)は、任用と賃金体系を定める要件Ⅰ、研修の要件Ⅱ、昇給の仕組みの要件Ⅲ、改善後の賃金が年額440万円以上の者を置く要件Ⅳを、それぞれ具体的に定めています。このページは、4つの要件の中身と、10人未満の事業所の扱い、令和8年度の誓約の取扱いを、通知の本文から整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者が、処遇改善加算の上位区分に必要なキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳについて、令和8年度の老発0313第6号が定める具体的な内容、10人未満の事業所の扱い、令和8年度の誓約の取扱い、年額440万円の例外を確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳの整備状況表(要件ごとの根拠規程、周知の方法と日付、足りない整備、年額440万円の対象者の設定)を作成できる状態を目指します。

区分が上がるほど、満たす要件が増える

通知の第3(1)は、処遇改善加算Ⅰイを算定するには、賃金改善の実施に加えて、月額賃金改善要件からキャリアパス要件Ⅴ、職場環境等要件までを全て満たすこととしています。そのうえで、加算Ⅱイはキャリアパス要件Ⅴ、加算Ⅲは要件ⅣとⅤ、加算Ⅳは要件ⅢからⅤを、満たさなくても算定できるとしています。

つまり、キャリアパス要件Ⅰと要件Ⅱは、加算Ⅳを含むすべての区分で必要です。要件Ⅲは加算Ⅲ以上、要件Ⅳは加算Ⅱ以上で必要になります。どの区分を目指すかを先に決めると、整える規程の範囲が絞れます。

要件Ⅰ(任用と賃金体系)と要件Ⅱ(研修)

要件Ⅰは、次の3つを全て満たすことです。介護職員の任用の際の職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(賃金に関するものを含む)を定めること、それに応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く)を定めること、その内容を就業規則等の明確な根拠規程として書面で整備し、全ての介護職員に周知することです。

常時雇用する者が10人未満の事業所など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所は、就業規則の代わりに内規等を整備して周知することでも、書面の要件を満たすとされています。訪問介護の小規模な事業所では、この扱いを使うかどうかを先に確認しておくと、整備の負担が変わります。

要件Ⅱは、介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標と具体的な計画を立て、研修の実施や研修の機会の確保をすることです。計画に沿って、OJTやOFF-JTなどの研修機会の提供や技術指導を行い、介護職員の能力評価を行うか、資格取得のための支援(研修を受ける勤務シフトの調整、休暇の付与、受講料などの援助)を行うかの、いずれかが求められます。そして、この計画を全ての介護職員に周知します。

要件Ⅲ(昇給の仕組み)は、3つの型のどれかで整える

要件Ⅲは、介護職員について、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づいて定期に昇給を判定する仕組みを設け、就業規則等の明確な根拠規程で書面にして全ての介護職員に周知することです。仕組みは、通知が次の3つの型のうち、いずれかに当たることとしています。

資格等に応じる型には、別の法人で介護福祉士等の資格を取った人がその事業所に就業した場合も昇給が図られる仕組みでなければならない、という但し書きがあります。判定する型には、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることが必要です。書面の要件では、要件Ⅰと同じく、就業規則の作成義務がない事業所(常時雇用する者が10人未満など)は内規等でも足ります。

キャリアパス要件Ⅲの3つの型(老発0313第6号 令和8年度分、2026-10-13確認)
型通知が求める仕組み通知の但し書き
経験に応じて昇給「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給するなし
資格等に応じて昇給介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する別法人等で資格を取って就業する者も昇給が図られること
定期に昇給を判定「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていること

要件Ⅳ(改善後の賃金が年額440万円以上の者)と、その例外

要件Ⅳは、経験・技能のある介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金の見込額(処遇改善加算を算定して実施する賃金改善の見込額を含む)が年額440万円以上であることです。処遇改善加算による賃金改善の前から年額440万円以上の者は、この1人に数えません。経験・技能のある介護職員が誰を指すかは、賃金改善の配分のページで整理しています。

ただし、例外的にこの賃金改善が困難で、合理的な説明がある場合は、この限りではないとされています。通知が例に挙げるのは、小規模事業所等で職種間の賃金バランスに配慮が必要な場合、職員全体や地域の賃金水準が低く直ちに年額440万円まで引き上げることが困難な場合、年額440万円の賃金改善に規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要する場合の3つです。計画書の様式例にも、設定できない場合にこれらの理由を選ぶ欄があります。

440万円に届くかどうかは、事業所の賃金体系と対象者の働き方で変わるため、このページは金額の目安や達成の方法を示しません。例外に当たるかの判断も、事業所ごとに合理的な説明を用意することが前提です。迷う場合は、計画書の提出先の担当窓口に確認してください。

令和8年度は、誓約で申請して年度内に整える扱いがある

令和8年度は、処遇改善加算の申請時点で令和8年度特例要件を満たす事業所に限り、要件Ⅰ(賃金体系の定め)、要件Ⅱ(研修の計画と実施)、要件Ⅲ(昇給の仕組み)、要件Ⅳ(賃金改善)について、計画書で令和9年3月末までに整備や改善を行うと誓約すれば、申請時点からその要件を満たすものとして扱うとされています。誓約した場合は、令和9年3月末までに整備し、実績報告書で報告します。

この扱いは令和8年度のもので、令和9年度以降は新しい通知で確認する必要があります。処遇改善加算の区分・算定要件と合わせて読み、誓約した項目は期限と担当者を決めて整備に進めてください。規程の整備そのものは、就業規則と時間外労働の協定で扱っています。

このページが確認したのは、厚生労働省の老発0313第6号(令和8年度分)の第3(1)②から⑤と、計画書の様式例の該当欄です。個々の事業所が要件を満たすかの判定や、規程の文案の作成は行いません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 算定したい処遇改善加算の区分を決め、その区分で求められるキャリアパス要件がⅠ〜Ⅳのどこまでかを、通知の算定要件の表で確認して整備状況表の行に並べる
  2. 要件Ⅰ(任用要件と賃金体系)、要件Ⅱ(研修計画と研修の実施や機会の確保)、要件Ⅲ(昇給の仕組み)のそれぞれについて、根拠になる就業規則等の条文や内規、計画書の名前を書き、全ての介護職員に周知した方法と日付を残す。常時雇用する者が10人未満で就業規則の作成義務がない場合は、内規等の整備と周知で足りるかを確認する
  3. 要件Ⅳは、経験・技能のある介護職員のうち1人以上を対象者に決め、賃金改善後の見込額が年額440万円以上になるかを計算する。なれない場合は、通知が例示する理由のどれに当たるかと、合理的な説明を書き残す
  4. 令和8年度に誓約で申請した要件は、令和9年3月末までに整備する項目として期限つきで表に残し、実績報告書で報告する。整備した規程と周知の記録は、都道府県知事等から求められたときに提示できるよう保管する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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