運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護の処遇改善加算の賃金改善の配分:基本給・手当・一時金と職種間の偏り

訪問介護事業所が処遇改善加算を算定したら、加算の算定額に相当する賃金改善を実際に行わなければなりません。厚生労働省の老発0313第6号(令和8年度分)は、賃金改善を基本給・手当・賞与のどの項目で行うか、新しく増えた加算額をどう扱うか、職員の間でどう配分するかについて、守るべき線を定めています。このページは、その部分だけを通知の本文と様式例から取り出して、配分表を作る前に確認する順に整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者が、処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を、基本給・手当・一時金のどれで、どの職員にどう配分するかについて、令和8年度の老発0313第6号が定める考え方と守るべき線を確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、処遇改善加算の賃金改善配分表(加算の見込額、賃金改善の項目、対象職員、基本給等への配分額、職種ごとの配分の考え方)を作成できる状態を目指します。

賃金改善は、項目を決めて行い、賃金水準を下げない

通知は、事業者が処遇改善加算の算定額に相当する、介護職員その他の職員の賃金の改善を実施しなければならないと定めています。ここでいう賃金には基本給、手当、賞与等が含まれ、退職手当は含まれません。賃金改善に伴って増える法定福利費などの事業主負担の分も、賃金改善に含めることができます。

賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする項目を特定してから行います。特定した項目を含めて賃金水準を下げてはならず、事業の継続のために下げる場合は、後で扱う特別事情届出書が必要です。通知は、安定的な処遇改善が重要だとして、基本給による賃金改善が望ましいとも書いています。

計画書の様式例では、令和8年度の賃金改善の見込額を、加算の見込額以上にすると書く欄があります。介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業から賃金に充てた額は、この見込額から除くと注記されています。加算から賃金に回した額と、この支援事業から賃金に充てた額は、分けて記録しておくと計画書に書きやすくなります。

令和8年度に増えた加算額は、新規の賃金改善に使う

通知は、令和8年度に令和7年度と比べて増えた加算額について、独自の賃金改善を含む過去の賃金改善の実績に関わらず、増えた分に相当する賃金改善を新規に実施しなければならないとしています。増えた加算額には、新しく算定を始めた場合や上位区分に移った場合の増加に加えて、令和8年度の報酬改定による加算率の引上げ(令和8年6月以降の算定分)による増加も含まれます。

新規の賃金改善は、賃金表の改訂により基本給や決まって毎月支払われる手当の額を変更し、賃金水準を一律に引き上げるベースアップで行うことを基本とします。ベースアップだけでは行えない場合(たとえば賃金体系を整備している途中)は、その他の手当や一時金を組み合わせて実施しても差し支えないとされています。組み合わせる場合は、なぜベースアップだけでは足りないのかを記録に残すと、後から説明しやすくなります。

月額賃金改善要件は、加算Ⅳの加算額(Ⅳ以外の区分を算定する場合は、仮にⅣを算定したときに見込まれる加算額)の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てることです。すでに満たしている事業所は新しい取組をしなくてよく、基本給等以外の手当や一時金で行っていた賃金改善の一部を基本給等に付け替えて満たすこともできます。ただし、処遇改善加算を未算定で新しく算定を始める事業所は、この付け替えだけでは足りず、賃金総額を新たに増やす必要があります。

賃金改善を配分表に書くときの確認事項(老発0313第6号 令和8年度分、2026-10-13確認)
確認すること通知が定める内容
賃金改善の対象になる賃金基本給、手当、賞与等(退職手当を除く)。事業主負担の増加分を含められる
賃金改善の行い方対象とする項目を特定して行い、賃金水準を下げない。基本給による改善が望ましい
令和7年度より増えた加算額過去の独自の賃金改善に関わらず新規に実施。ベースアップが基本
月額賃金改善要件加算Ⅳ(相当)の加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てる
賃金改善の見込額(計画書)加算の見込額以上にする。賃上げ・職場環境改善支援事業から充てた額は除く

職員の間の配分は柔軟にできるが、著しく偏らせない

職種間の配分について、通知は、介護職員、特に経験・技能のある介護職員の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業者の判断で事業所内の柔軟な配分を認めるとしています。経験・技能のある介護職員とは、介護福祉士の資格を持ち、所属する法人での勤続年数が10年以上の介護職員を基本としつつ、他の法人での経験や業務・技能などを踏まえて、事業者が裁量で設定してよいとされています。

ただし、一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所だけに集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこととされています。訪問介護では、サービス提供責任者、常勤の訪問介護員、登録ヘルパーで、働く時間や担う責任が大きく違います。配分表に職種ごとの人数と配分額を並べ、その差が職務の違いで説明できるかを確認してください。

この線を超えたかどうかの判断は、個々の事業所の賃金体系や雇用形態によって変わります。通知は具体的な割合を示していないため、このページも配分の割合や金額の目安は示しません。迷う場合は、計画書を提出する都道府県や市町村の担当窓口に確認し、社会保険労務士など労務の専門家に相談してください。

賃金水準を下げるときの特別事情届出書と、保管する資料

事業の継続を図るために、処遇改善加算による賃金改善分を除いた職員の賃金水準を引き下げたうえで賃金改善を行う場合は、別紙様式5の特別な事情に係る届出書を提出します。記載するのは、サービス利用者数の大幅な減少などで経営が悪化し収支が赤字であることや、資金繰りに支障が生じていることを示す内容、賃金水準の引き下げの内容、法人の経営と賃金水準の改善の見込み、労使の合意の時期と方法の4点です。

年度を超えて職員の賃金を引き下げることになった場合は、次年度の加算を算定するために必要な届出を行うときに、特別事情届出書を再度提出する必要があります。賃金水準を下げるかどうかは、下げる前に決めておくべき事項で、届出の要否もそのときに確認します。

届出内容を証明する資料として、通知は、就業規則等(賃金、退職手当、臨時の賃金等に関する規程を含む)と、労働保険に加入していることが確認できる書類を保管し、求めがあれば速やかに提示するよう定めています。加算の区分ごとの要件と実績報告の期限は処遇改善加算の区分・算定要件・計画書と実績報告、職場環境等要件の取組は職場環境等要件で整理しています。

確認した範囲と、次に読むページ

このページが確認したのは、厚生労働省が公表する老発0313第6号(令和8年度分)の、賃金改善の実施に関する部分、月額賃金改善要件、特別事情届出書、書類の保管、様式例の賃金改善の見込額の欄です。令和9年度以降の取扱いは、新しい通知が出たときに確認し直す必要があります。

個々の事業所の配分が通知に適合しているかの判定、金額の算定、労務上の判断は、このページでは行いません。最低賃金を下回っていないかは最低賃金の確認、時間外労働の割増賃金は割増賃金で扱っています。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 今年度の加算の見込額を、計画書の様式に沿って確認する。賃金改善の見込額は加算の見込額以上になるように置き、法定福利費などの事業主負担の増加分を含める場合は、その額を分けて書く
  2. 賃金改善に使う項目を、基本給、決まって毎月支払われる手当、賞与などから特定する。月額賃金改善要件に使う額が、加算Ⅳ相当の見込額の2分の1以上になっているかを表で確かめる。新しく増える加算額の分は、賃金表の改訂によるベースアップを基本とし、組み合わせる手当や一時金があれば理由を残す
  3. 介護職員、経験・技能のある介護職員、その他の職員ごとに、どの項目でいくら配分するかを表にする。一部の職員や一部の事業所に集中していないか、職務の内容や勤務の実態に見合っているかを、数字を並べて見直す
  4. 事業の継続のために賃金水準を下げる必要が出そうなときは、下げる前に別紙様式5の特別事情届出書の記載事項(収支の状況、引き下げの内容、改善の見込み、労使の合意)を確認する。実績報告までの配分の記録と根拠資料を保管する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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