運営 / 更新 2026-10-30
育児・介護中の訪問介護員の残業免除と深夜業の制限:請求の期間と断れる場合
小学校就学前の子を育てる訪問介護員や、家族を介護する訪問介護員は、育児・介護休業法にもとづいて、残業の免除(所定外労働の制限)、時間外労働の制限、深夜業の制限を事業主に請求できます。この記事は、3つの制限の対象と請求の期間・時期、請求できない人、事業主が断れる場合を、条文と厚生労働省の資料で整理します。
3つの制限の早見表:何を制限し、いつまでに請求するか
育児・介護休業法は、休業とは別に、働く時間を制限する請求権を3つ定めています。所定外労働の制限(第16条の8)は所定労働時間を超える勤務をさせないこと、時間外労働の制限(第17条)は労働時間の延長に月24時間・年150時間の上限を設けること、深夜業の制限(第19条)は午後10時から午前5時までの勤務をさせないことです。
対象は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者です。要介護状態にある対象家族を介護する労働者にも、同じ内容が準用されます(第16条の9・第18条・第20条)。請求は、制限開始予定日の1か月前までにする必要があります。
| 制限 | 事業主がしてはならないこと | 1回の制限期間 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 所定外労働の制限 | 所定労働時間を超えて労働させること | 1か月以上1年以内 | 第16条の8 |
| 時間外労働の制限 | 月24時間・年150時間を超えて労働時間を延長すること | 1か月以上1年以内 | 第17条 |
| 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの間に労働させること | 1か月以上6か月以内 | 第19条 |
この記事で決めること
育児や家族の介護をしている訪問介護員から残業免除や深夜の勤務免除を請求された事業者が、育児・介護休業法の所定外労働・時間外労働・深夜業の3つの制限について、請求の期間と時期、請求できない人、断れる場合を条文で確かめる記事。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、育児・介護の制限の請求を受けたときの確認メモ(1枚):請求の種類、請求日と制限期間、請求できない人に当たるかの確認、断る場合の理由の記録を作成できる状態を目指します。
請求できない人:勤続1年未満、週の所定労働日数が2日以下など
3つの制限に共通して、その事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者は、請求できない人に当たります。所定外労働の制限では、この除外は、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数を代表する者)との書面による協定で定められている場合に限られます(第16条の8第1項)。時間外労働の制限と深夜業の制限には、協定の定めを求める文言が条文にありません。
施行規則は、厚生労働省令で定める者として、所定外労働の制限(第44条)と時間外労働の制限(第52条)では、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を挙げています。深夜業の制限(第61条)では、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者と、所定労働時間の全部が深夜にある労働者です。登録ヘルパーのように勤務日数が少ない人は、請求の前に、契約上の1週間の所定労働日数を確かめます。
深夜業の制限には、もう1つの除外があります。深夜に常態として子を保育できる同居の家族がいる場合です(第19条第1項第2号)。
施行規則第60条は、その家族を、16歳以上で、次の3つをすべて満たす人と定めています。深夜に就業していない(深夜の就業日数が月3日以下の人を含む)こと、負傷や疾病、障害で保育が困難な状態にないこと、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定であるか、産後8週間を経過しない人でないことです。介護の請求では、この「保育」が「介護」に読み替えられます(第20条)。
請求者が除外に当たらないときの断る条件:「事業の正常な運営を妨げる場合」
3つの制限には、それぞれ「事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」というただし書があります。厚生労働省の解説パンフレットは、所定外労働の制限について、この判断を、その労働者の所属する事業所を基準に、担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難しさ等の諸般の事情を考慮して客観的に行うと説明しています。
同じパンフレットは、事業主は請求どおりに制限を受けられるよう通常考えられる相当の努力をすべきで、単に所定外労働が事業の運営上必要であるという理由だけでは拒めないとしています。訪問介護では、代わりの訪問員を探したか、訪問の組み替えを試したかが、断る前に確かめる内容に当たります。個別の請求を断れるかは事業所の状況による判断なので、迷うときは都道府県労働局に確認してください。
期間と、ほかの制限・休業との関係
所定外労働の制限と時間外労働の制限は、制限期間を重ねないよう条文が定めています(第16条の8第2項後段・第17条第2項後段)。同じ人が両方を使うときは、期間を前後に並べる必要があります。深夜業の制限の条文には、この重複を禁じる定めがありません。
制限期間は、子が小学校就学の始期に達したとき(育児の場合)や、請求した労働者について産前産後休業、育児休業、出生時育児休業、介護休業の期間が始まったときに終わります(第16条の8第4項・第17条第4項・第19条第4項)。また、事業主は、請求したことや、制限により所定外・時間外・深夜に働かなかったことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはいけません(第16条の10・第18条の2・第20条の2)。
訪問介護で確かめておくこと:深夜の時間帯は加算と1時間ずれる
育児・介護休業法の深夜は午後10時から午前5時です。一方、訪問介護費の深夜加算は午後10時から午前6時です。午前5時から6時の訪問は、この法律では深夜業の制限の対象外ですが、報酬では深夜加算の時間帯になります。
加算の時間帯は訪問介護の夜間・早朝・深夜加算の時間帯と加算率で、休業そのものの申出は訪問介護の育児休業・介護休業・看護休暇で確かめられます。
所定外労働の制限は、令和7年4月1日から、3歳未満の子を養育する労働者だけでなく、小学校就学前の子を養育する労働者に広がりました(厚生労働省の解説パンフレット)。就業規則に3歳未満と書いたままの事業所は、規定の見直しが必要です。残業の扱いと就業規則の基本は訪問介護の就業規則と時間外労働の協定にあります。
確かめた範囲と、次に読む記事
この記事は、育児・介護休業法の第16条の8から第20条の2と、同法施行規則の第44条・第52条・第60条・第61条を、2026年10月30日にe-Gov法令検索で確かめた内容です。厚生労働省の解説パンフレットは、令和7年4月1日施行の所定外労働の制限の対象拡大と、断れる場合の考え方を確かめました。
個別の請求を断れるか、請求した人が除外に当たるかは、事業所の就業規則と労使協定、労働契約の内容によって変わります。次に読む記事は2本です。休業の申出は訪問介護の育児休業・介護休業・看護休暇、登録ヘルパーの契約と勤務表は訪問介護の登録ヘルパーの雇用契約・勤務表・移動時間にあります。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 請求を受けた日、請求した人、請求の種類(所定外労働・時間外労働・深夜業)、育児か介護かを書き、制限開始予定日が請求日から1か月以上先かを確かめる
- 制限期間の初日と末日を書き、所定外労働と時間外労働の制限期間が重なっていないか、深夜業は1か月以上6か月以内か、所定外・時間外は1か月以上1年以内かを確かめる
- 請求できない人に当たらないか、勤続1年未満、週の所定労働日数、深夜業なら深夜に保育できる同居の家族の有無と所定労働時間の全部が深夜かを確かめて記す
- 事業の正常な運営を妨げるとして断る場合は、担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難しさを事業所の状況に照らして書き、通常考えられる相当の努力をした内容を残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(第十六条の八〜第二十条の二 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限)」(第16条の8〜第16条の10、第17条〜第18条の2、第19条〜第20条の2)(確認日 2026-10-30)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(第四十四条・第五十二条・第六十条・第六十一条)」(第44条、第52条、第60条、第61条)(確認日 2026-10-30)
- 厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説(所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大)」(Ⅰ 令和7年4月1日施行の内容 2 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大)(確認日 2026-10-30)