運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護で利用者宅の鍵を預かるときの管理(預かり証・返却証・保管・台帳)
訪問介護では、利用者が不在や身体の状態で玄関を開けられないために、利用者宅の鍵を預かることがあります。鍵の預かりは、文京区の資料で運営指導の指摘事項に挙がっています。この記事は、文京区の令和7年度集団指導資料に挙げられた3つの不備と、運営基準の事故発生時の対応・秘密保持の条を使って、預かり証・返却証・保管・管理台帳の備え方を整理します。
運営指導で指摘される3点:保管・預かり証と返却証・日々の管理台帳
文京区福祉部介護保険課は、令和7年度(2025年10月16日付)の集団指導資料で、訪問介護の運営指導での指摘事項に「利用者宅の鍵の預かりの不備」を挙げています。具体的には、事業所内で鍵のかかるキーボックス等に保管されていないこと、鍵の預かり証・返却証を取り交わしていないこと、鍵の日々の管理台帳がないことの3点です。
この資料は文京区が自区の事業所に向けて示した指摘事項です。ほかの自治体が同じ項目を求めているとは限らないため、所在地の指定権者の集団指導資料や運営指導の指摘事例で確認してください。
運営基準(平成11年厚生省令第37号)の本則275条を「鍵」で検索しても、該当する条はありません(e-Gov法令検索、2026-10-17に確認)。老企第25号の本文にも「鍵」「合鍵」「預かり」の語は見当たりませんでした。鍵の預かりは、基準の条文ではなく、自治体の運営指導で確認される実務の項目として扱われています。
この記事で決めること
訪問介護事業所の管理者やサービス提供責任者が、利用者宅の鍵を預かるときに、運営指導で指摘される保管・預かり証と返却証・管理台帳を整え、紛失時の連絡先を確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、利用者宅の鍵の管理表(預かり証・返却証の様式、保管場所、日々の台帳、紛失時の連絡先)を作成できる状態を目指します。
3点に備える運用:預かり証・返却証・保管場所・管理台帳
次の表は、指摘された3点に対し、事業所が整えておく運用の一例です。右の列は、文京区の資料にある項目か、筆者の提案かを分けて示します。
| 項目 | 整えておく内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 保管場所 | 事業所内の鍵のかかるキーボックス等に入れ、保管できる人を限る | 文京区 令和7年度集団指導資料(保管の不備) |
| 預かり証・返却証 | 預かった日、鍵の本数と種類、預かる目的、返却の日を書き、利用者または家族と取り交わす | 取り交わす点は文京区の資料。書く項目は運用の提案 |
| 管理台帳 | 鍵ごとに、持ち出した日時・担当者・返却した日時を日々記録する | 日々の管理台帳は文京区の資料。記載項目は運用の提案 |
| 保管上の注意 | 鍵に利用者の氏名や住所を直接書かず、番号などで管理する | 運用の提案(基準第33条の秘密保持に沿う) |
紛失したとき:基準第37条の事故発生時の対応
預かった鍵を紛失したり盗まれたりしたときの扱いは、鍵そのものを定めた条文ではなく、事故発生時の対応を定めた基準第37条で考えます。第37条は、訪問介護の提供により事故が発生した場合に、市町村、利用者の家族、利用者に係る居宅介護支援事業者等へ連絡し、必要な措置を講じること、事故の状況と処置を記録すること、賠償すべき事故では損害賠償を速やかに行うことを求めています。
鍵の紛失が事故報告の対象になるか、いつまでに誰へ報告するかは、市町村の事故報告の要領で異なります。自治体の要領で確認し、事業所の事故対応の手順に鍵の紛失を入れておくと、慌てずに済みます(運用の提案)。
鍵を預かると、利用者の住所や生活の様子が分かります。第33条は、従業者が正当な理由なく業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らすことを禁じています。鍵の持ち出しと保管は、秘密保持の面でも管理する対象です。
起こりやすい失敗:口約束の預かり、台帳の空白、合鍵の放置
利用者や家族の口頭の依頼だけで鍵を預かると、預かった事実や返却の有無を後から示せません。預かり証と返却証は、利用者側と事業所の双方を守る書類です。
台帳は、持ち出しの記録だけで返却の記録がない状態になりがちです。1日の終わりに事業所の鍵の本数と台帳を突き合わせる習慣をつけると、空白に早く気づけます(運用の提案)。
利用が終わった後も合鍵が事業所に残っていることがあります。契約の終了時に返却証を取り交わし、返却の日を台帳に書くところまでを一組にしておきます(運用の提案)。
次に読む記事
事故が起きたときの連絡と記録は、訪問介護の事故発生時の対応(基準第37条):連絡・記録・損害賠償で読めます。
利用者の秘密の扱いは、訪問介護の秘密保持等(基準第33条):守秘義務と個人情報の同意で読めます。
同じく利用者の持ち物を預かる場面として、訪問介護員の利用者の金銭・通帳の取扱い:預かりの原則と買い物代行・日常生活自立支援事業もあわせて確認してください。
この記事は、文京区の集団指導資料と運営基準を整理したもので、個別の事業所の運用が基準に適合するかを判断するものではありません。判断に迷うときは、指定権者である都道府県・市町村の窓口へ確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 鍵を預かる前に、利用者または家族と、預かる目的と返却の条件を確かめ、預かり証に日付・鍵の本数と種類を書いて取り交わす
- 預かった鍵は、事業所内の鍵のかかるキーボックス等に入れ、利用者の氏名や住所を直接書かず番号で管理して、保管できる人を決める
- 鍵ごとに、持ち出した日時・担当者・返却した日時を日々の管理台帳に記録し、1日の終わりに鍵の本数と台帳を突き合わせる
- 紛失に備え、市町村の事故報告の要領を確かめて連絡先と期限を手順に入れ、利用が終わるときは返却証を取り交わして台帳に返却日を書く
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(確認日 2026-10-02)
- 文京区福祉部介護保険課「運営指導のポイント - 令和7年度 集団指導資料 -(令和7年10月16日)」(確認日 2026-10-17)