運営 / 更新 2026-10-15
訪問介護の地域との連携等(基準第36条の2):介護相談員の受入れと同一建物以外への提供
訪問介護の運営基準第36条の2は、地域との連携等について2つの項を置いています。第1項は市町村が実施する事業への協力、第2項は同一建物の利用者以外にも提供することで、どちらも「努めなければならない」という努力義務です。この記事では、条文と解釈通知、介護サービス相談員が訪問するときの受入れ方、同一建物減算との違いを整理します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の管理者が、運営基準第36条の2の2つの項(市町村が実施する事業への協力、同一建物の利用者以外への提供)の文言と解釈通知を確認し、介護サービス相談員が訪問するときの受入れ方と、高齢者向け住宅に併設する場合に求められる地域の利用者への提供の考え方を整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、地域との連携等の対応メモ(市町村の事業の窓口と担当者、介護サービス相談員の受入れの申出の有無と訪問の記録、同一建物に併設する場合の利用者の内訳と地域の利用者の受入れ方針、指定権者に確認した条件)を作成できる状態を目指します。
第36条の2は、2つの努力義務を定めている
e-Govの指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準によると、第36条の2第1項は、提供した指定訪問介護に関する利用者からの苦情について、市町村等が派遣する者が相談や援助を行う事業その他の市町村が実施する事業に協力するよう努めることを定めています。
第2項は、指定訪問介護事業所の所在する建物と同一の建物に居住する利用者に提供する場合に、その建物に居住する利用者以外の人にも提供するよう努めることを定めています。どちらも「努めなければならない」という書き方で、守らなければ直ちに基準違反になる書き方ではありません。
| 項 | 求められること | 解釈通知が示す趣旨 |
|---|---|---|
| 第1項 | 市町村が実施する事業への協力(努力義務) | 介護サービス相談員を派遣する事業を積極的に受け入れるなど、市町村との密接な連携に努める |
| 第2項 | 同一建物の利用者以外にも提供(努力義務) | 同一建物の要介護者のみを対象としたサービス提供とならないよう、地域の要介護者にも提供する |
第1項:介護サービス相談員の訪問を受け入れる
令和3年度改正時点の解釈通知(新旧対照表)によると、「市町村が実施する事業」には介護サービス相談員派遣事業のほか、市町村が老人クラブ、婦人会その他の非営利団体や住民の協力を得て行う事業が広く含まれます。
厚生労働省の「介護サービス相談員派遣等事業の実施について」(令和2年5月29日最終改正)は、この事業の実施主体を市町村とし、苦情に至る事態を未然に防ぐことと、利用者の日常的な不平・不満・疑問に対応して改善の途を探ることを目的に挙げています。訪問の頻度は概ね1〜2週間に1回程度が目安です。
訪問介護のような訪問系の事業所が派遣の対象になる場合は、相談員は事業所のほか、事業者と利用者の了解を得て利用者の自宅を訪問するとされています。相談員は身分証明書を携帯し、関係者から求められたら提示します。利用者の情報を市町村等へ提供するときは、あらかじめ文書で相談者の同意を得ます。
派遣の申出の方法や訪問の進め方は市町村の要綱で決まります。この通知は技術的助言であるため、事業所のある市町村の窓口に確認してください。受け入れたときは、訪問日と事業所が受けた気づきの共有内容を、苦情の記録とは別に控えておくと、運営指導のときにも説明しやすくなります。
第2項:高齢者向け住宅に併設するときの、地域の利用者への提供
解釈通知(令和3年度改正で新設)は、高齢者向け集合住宅等と同一の建物に所在する訪問介護事業所が、その集合住宅等の要介護者に提供する場合に、その要介護者だけを対象としたサービス提供とならないよう、地域包括ケア推進の観点から地域の要介護者にも提供するよう努めることを定めたものだと説明しています。
ただし、基準第9条の正当な理由がある場合は除かれます。第9条の正当な理由の例や、提供を断れる場合は「訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡」で確認できます。
同じ解釈通知は、地域の実情に応じて、都道府県が条例等を定める場合や、市町村等の意見を踏まえて指定の際に条件を付す場合に、事業所の利用者のうち一定割合以上を集合住宅以外の利用者とするよう努める、あるいはしなければならないとする規定を設けてよいとしています。その際は、自立支援や重度化防止につながるサービス提供になっているかなど、サービスの質が担保されているかが重要だとされています。
このため、併設の事業所を開く場合は、指定を受ける都道府県や市町村に、利用者の割合などの条件が定められていないかを指定の前に確認します。定められている地域とそうでない地域があり得るので、全国一律の数字は、この記事では示していません。
同一建物減算とは別の話として整理する
第36条の2第2項は運営基準の努力義務で、報酬の算定とは別の規定です。同一建物に居住する利用者への提供で報酬が減る仕組みは、算定の基準に定められています。区分と判定の方法は「同一建物減算(サ高住・有料老人ホーム併設と90%判定)」で確認できます。
減算を避けるために地域の利用者を増やす、という順序で考える必要はありません。第2項が見ているのは、同一建物の利用者だけに偏らず、地域の要介護者にも提供しているかという事業の向きです。事業所の利用者の内訳は、月ごとに同一建物の人と地域の人に分けて記録しておくと、指定権者から問われたときに答えられます。
このページの範囲と、確認する先
このページが確認したのは、e-Govの運営基準第36条の2(2026-10-15に確認)、厚生労働省の介護サービス相談員派遣等事業の通知、介護保険最新情報Vol.934の解釈通知の新旧対照表です。新旧対照表は令和3年度改正時点のものなので、現行の項番号と文言は厚生労働省掲載の現行の解釈通知で確かめてください。
個別の事業所に条件が付いているか、相談員の派遣を受け入れる手続きは、指定権者と市町村の窓口で確認する事項で、このページでは判断しません。利用者や家族からの苦情を受け付けて記録する手順は「訪問介護の苦情処理(基準第36条):窓口・記録・市町村と国保連の調査協力と改善報告」で確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 事業所のある市町村の介護保険担当課に、介護サービス相談員を派遣する事業などの協力を求められる事業があるかを確認し、窓口と担当者、連絡の方法を対応メモに書く
- 相談員の派遣を受け入れる場合は、市町村への申出の方法と訪問の予定を確認し、利用者の自宅を訪問するときの利用者と事業所の了解の取り方、訪問日と気づきの共有内容を記録に残す
- 高齢者向け住宅などと同じ建物に事業所がある場合は、月ごとに利用者を同じ建物の人と地域の人に分けて数え、地域の利用者への提供をどう受け入れるかの方針を書く
- 指定を受けた都道府県や市町村に、指定の条件や条例で利用者の割合などが定められていないかを確認し、確認日と回答の内容を対応メモに残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(確認日 2026-10-02)
- 厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の実施について(平成18年5月24日老計発第0524001号、厚生労働省老健局計画課長通知)」(確認日 2026-10-15)
- 厚生労働省老健局(独立行政法人福祉医療機構 WAM NET掲載)「介護保険最新情報Vol.934(令和3年3月16日)解釈通知の改正(新旧対照)の訪問介護「地域との連携等」」(確認日 2026-10-15)