事業計画 / 更新 2026-09-29
サ高住・有料老人ホーム併設の訪問介護と同一建物減算(100分の90・88・85と90%判定)
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームと同じ建物・同じ敷地に訪問介護事業所を置くと、建物内の入居者への訪問は移動が短く済む一方で、同一建物等居住者への減算の対象になります。この記事は、厚生労働省の告示と留意事項通知(老企第36号)、運営基準第36条の2から、減算の対象になる建物の範囲、3つの算定率、利用者数の数え方、事業所単位の90%判定を整理し、併設型で事業を設計するときに確かめる点をまとめます。
この記事で決めること
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームと同一建物・同一敷地に訪問介護事業所を置く場合の減算の範囲と算定率、90%判定、事業設計で確かめる点を理解するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、併設型訪問介護の同一建物減算と90%判定の点検表を作成できる状態を目指します。
同一敷地内建物等に当たる建物の範囲(留意事項通知)
留意事項通知は、「同一敷地内建物等」を、訪問介護事業所と構造上または外形上一体的な建築物と、同一敷地内および隣接する敷地(道路等を挟んで設置している場合を含む)にある建築物のうち、効率的なサービス提供が可能なものと定めています。例として、建物の1階部分に事業所がある場合、建物と渡り廊下でつながっている場合、同一敷地内の別棟の建築物、幅員の狭い道路を挟んで隣接する場合を挙げています。
この定義には、建物がサービス付き高齢者向け住宅か有料老人ホームかといった種類で区分する文言はありません。該当するかは、事業所との位置関係に加えて効率的なサービス提供が可能な建築物かで判断されるため、併設や隣接を計画している建物については、図面と所在地をもとに事業所を指定する都道府県・市区町村(指定権者)に確認します。
同一建物等居住者への訪問の3つの算定率(告示 注12)
告示(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準)の訪問介護費の注12は、同一敷地内建物等に居住する利用者などへの訪問介護について、次の3つの算定率を定めています。100分の88は、別に厚生労働大臣が定める基準に該当する事業所だけに適用され、その基準は後の節の90%判定です。
率を掛けた後の月の単位数や金額の差は、加算・減算の算定範囲と試算例で計算例を示しています。自事業所の利用者の居住状況から当てはまる率を確かめるときは、当サイトの同一建物等減算の判定ツールも使えます。
| 利用者が居住する建物 | 算定率 |
|---|---|
| 同一敷地内建物等(自事業所の利用者が50人以上居住する建物を除く。90%判定に該当しない事業所) | 所定単位数の100分の90 |
| 同一敷地内建物等に当たらない建物で、自事業所の利用者が20人以上居住する建物 | 所定単位数の100分の90 |
| 同一敷地内建物等のうち、自事業所の利用者が50人以上居住する建物 | 所定単位数の100分の85 |
| 同一敷地内建物等(50人以上の建物を除く)で、事業所が厚生労働大臣の定める基準(90%判定)に該当する場合 | 所定単位数の100分の88 |
建物に居住する利用者数の数え方(1月の平均・小数点以下切り捨て)
留意事項通知は、同一敷地内建物等に当たらない建物に20人以上居住するかを判断する際の利用者数について、1月間(暦月)の利用者数の平均を用いるとしています。平均は、その月の1日ごとの、その建物に居住する利用者の合計を、その月の日数で割った値で、小数点以下は切り捨てます。
事業所が指定相当第一号訪問事業(介護保険法施行規則第140条の63の6第1項第1号に定める基準に従い行う事業)と一体的に運営している場合は、第一号訪問事業の利用者も含めて計算します。入居者の入退去で月ごとの人数が変わる建物では、この月平均で区分が変わりうるため、月ごとに記録します。
事業所単位の90%判定と書類の提出・保存(100分の88の要件)
留意事項通知は、100分の88を適用するかを、事業所ごとに毎年度2回判定するとしています。判定期間が前期(3月1日から8月31日)なら減算適用期間は10月1日から3月31日まで、後期(9月1日から2月末日)なら4月1日から9月30日までです。判定期間に訪問介護を提供した利用者(利用実人員)のうち、同一敷地内建物等に居住する利用者(50人以上居住する建物の利用者を除く)が占める割合が90%以上なら、減算適用期間に同一敷地内建物等の利用者へ提供する訪問介護のすべてに減算を適用します。
同一敷地内建物等に居住する人へサービスを提供する事業所は、前期は9月15日まで、後期は3月15日までに、利用者の総数、同一敷地内建物等に居住する利用者数、割合、90%以上の場合の正当な理由を記載した書類を作成します。90%以上なら都道府県知事へ提出し、90%未満でも書類は事業所で2年間保存します。
90%以上になったことに正当な理由がある場合は、その理由を都道府県知事に提出し、知事が不適当と判断すれば減算を適用します。通知は正当な理由の例として、特別地域訪問介護加算を受けている事業所である場合、判定期間の1月当たりの延べ訪問回数が200回以下であるなど事業所が小規模である場合、その他知事が認めた場合を挙げています。
併設型で事業を設計するときに確かめる点
運営基準第36条の2第2項は、事業所の所在する建物と同一の建物に居住する利用者に訪問介護を提供する場合に、その建物に居住する利用者以外の者にも訪問介護を提供するよう努めることを定めています。併設型の事業計画では、建物の入居者だけで利用者が埋まる前提を置かず、建物外の地域の利用者をどこから受けるかを計画に含めます。
収支を見るときは、建物内の訪問で移動時間が短くなる分の人件費の差と、減算で1回あたりの単位数が下がる分の収入の差を、同じ月の提供回数で並べて比べます。90%判定の割合は、全利用者のうち同一敷地内建物等(50人以上居住する建物を除く)に居住する利用者の割合で決まるため、開業前の計画段階で、同一敷地内建物等とそれ以外に住む利用者数の見込みを判定期間ごとに置いておくと、100分の88に当たるかを事前に確かめられます。基本報酬と人件費の試算は訪問介護の収支シミュレーターで行い、減算分は別に差し引いて見積もります。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 併設・隣接する建物が同一敷地内建物等に当たるかを、図面と所在地をもとに指定権者へ確認して記録する
- 建物ごとの自事業所の利用者数を1日ごとに記録し、同一敷地内建物等に当たらない建物は暦月の平均(小数点以下切り捨て)で20人以上かを確かめる
- 判定期間ごとに同一敷地内建物等に居住する利用者の割合(利用実人員)を計算し、9月15日・3月15日までに書類を作成して2年間保存する(90%以上なら都道府県知事へ提出する)
- 建物外の地域の利用者をどこから受けるかを事業計画に含め、判定期間ごとに同一敷地内建物等とそれ以外に住む利用者数の見込みを置く
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(確認日 2026-08-27)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(確認日 2026-09-28)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準(訪問介護費における特定事業所加算の基準)」(確認日 2026-09-04)
- 厚生労働省老健局「別紙1 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)(抄)(新旧対照表)」(確認日 2026-09-26)