運営 / 更新 2026-10-05

訪問介護の苦情処理(基準第36条):窓口・記録・市町村と国保連の調査協力と改善報告

訪問介護の事業所は、利用者や家族から苦情を受けたとき、自社で受け付けて記録するだけでなく、市町村や国民健康保険団体連合会(国保連。介護保険の苦情処理を担う公的な団体)が行う調査にも協力する義務があります。運営基準第36条は、この流れを6つの項に分けて定めています。この記事は、窓口の設置、記録、市町村への協力と改善報告、国保連への協力と改善報告を、e-Govの条文と厚生労働省の通知から時系列で整理します。個別の苦情への対応の良し悪しや、事故の連絡は扱いません。

この記事で決めること

訪問介護事業者が、運営基準第36条に基づいて、苦情の受付窓口の設置と記録、市町村と国民健康保険団体連合会の調査への協力、指導・助言に従った改善、求めがあったときの改善内容の報告を、どの順で行うかを条文と解釈通知から確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、苦情対応の窓口・記録・外部対応の手順表を作成できる状態を目指します。

第36条の6つの項

第36条は、苦情を受け付けるところから、行政の調査への協力、改善の報告までを順に定めています。事業所内で完結するのは第1項と第2項で、第3項から第6項は、市町村と国保連という外部の機関が関わる場面の定めです。

運営基準第36条の構成(e-Govの現行条文、取得2026-10-05)
項場面事業者が求められること
第1項苦情の受付苦情に迅速かつ適切に対応するため、苦情を受け付ける窓口を設置するなど必要な措置を講じる
第2項苦情の記録苦情を受け付けたときは、苦情の内容等を記録する
第3項市町村の調査市町村からの文書提出や質問・照会に応じ、苦情に関する市町村の調査に協力し、指導または助言を受けたら必要な改善を行う
第4項市町村への報告市町村から求めがあったときは、第3項の改善の内容を市町村に報告する
第5項国保連の調査苦情に関する国保連の調査に協力し、国保連から指導または助言を受けたら必要な改善を行う
第6項国保連への報告国保連から求めがあったときは、第5項の改善の内容を国保連に報告する

窓口の設置と記録(第1項・第2項)

第1項が求めるのは、苦情に迅速かつ適切に対応するための窓口の設置などの措置です。厚生労働省の解釈通知(老企第25号 第三の3(23))は、この「必要な措置」を、相談窓口、苦情処理の体制、手順など、事業所が苦情を処理するために講じる措置の概要を明らかにし、利用申込者にサービスの内容を説明する文書にもその概要を書き、事業所に掲示することなどと説明しています。

第2項は、苦情を受け付けたときに、その内容等を記録することを求めています。第39条第2項は、この記録を、完結の日から2年間保存するよう定めています。条文が求めるのは苦情の「内容等」の記録で、記録に書く項目の細かい指定は、確認した範囲の条文と通知にはありません。重要事項の説明文書への書き方は訪問介護の利用契約・重要事項説明・記録の流れで、初動の考え方は苦情・事故と単独訪問リスクへの備えで確認できます。

市町村ルートと国保連ルートの違い(第3項〜第6項)

第3項から第6項は、苦情が行政や国保連に持ち込まれたときの定めです。市町村と国保連のどちらも、調査への協力、指導または助言に従った改善、求めがあったときの改善内容の報告という3つを求めています。通知は、苦情処理の業務を行うことが介護保険法に位置づけられている国保連だけでなく、住民に最も身近な行政で保険者でもある市町村も、サービスの苦情に対応する必要があるため、市町村も国保連と同じように調査や指導・助言を行えることを運営基準で明確にしたものと説明しています。

条文の書き方には違いがあります。市町村については、文書その他の物件の提出や提示の求め、職員からの質問や照会に応じることも、第3項に挙げられています。国保連については、第5項は苦情に関する調査への協力と改善を定めていて、文書の提出や質問への対応までは書かれていません。両方の報告は、いずれも相手から「求めがあった場合」に行うもので、事業者から先に報告を出す義務として書かれているわけではありません。

市町村ルートと国保連ルートの比較(e-Govの現行条文、取得2026-10-05)
確認する点市町村(第3項・第4項)国保連(第5項・第6項)
調査への協力苦情に関して市町村が行う調査に協力する苦情に関して国保連が行う調査に協力する
文書の提出・質問への対応文書その他の物件の提出・提示の求めと、職員からの質問・照会に応じる条文には書かれていない
指導・助言を受けたとき従って必要な改善を行う従って必要な改善を行う
改善内容の報告市町村から求めがあったときに報告する国保連から求めがあったときに報告する

市町村が実施する事業への協力(第36条の2第1項)

第36条の2第1項は、市町村等が派遣する者が苦情について相談や援助を行う事業など、市町村が実施する事業に協力するよう努めることを求めています。第36条の義務と違い、努めるという書き方で、努力義務です。詳しい読み方は苦情・事故と単独訪問リスクへの備えの該当の節にあります。

確認が必要な事項と事業所での運用例

確認した範囲の条文と通知には、苦情の記録に書く項目、改善報告の期限や様式、市町村や国保連から求められる文書の範囲は書かれていません。事業所のある市町村と、都道府県の国保連の案内を確認し、指定権者に確認する事項は指定権者に確認する事項の一覧に加えておきます。

運用の例としては、受付の窓口と担当者を決めて重要事項の説明文書に書き事業所にも掲示する、受け付けた日・内容・対応を苦情ごとに記録して2年間保存する、市町村や国保連から連絡があったときの担当者と、改善内容をまとめて回答する手順をあらかじめ決めておく、といった方法があります。これらは条文の定めではなく、条文と通知を事業所で実行しやすくするための例です。指定後の報告との関係は訪問介護の指定後の報告・公表・業務管理体制で、運営指導から監査への流れは運営指導から監査・指定取消しまでの流れで確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 苦情の受付窓口と担当者を決め、重要事項の説明文書に窓口と処理の手順の概要を書き、事業所にも掲示する
  2. 苦情を受け付けた日・内容・対応を苦情ごとに記録する様式を整え、完結の日から2年間保存する
  3. 市町村や国保連から調査・文書提出・質問の連絡が来たときの担当者と回答の手順を決め、指導・助言を受けた場合は改善内容をまとめて、求めがあったときに報告できる状態にする
  4. 記録の項目や報告の期限など条文に書かれていない事項を、指定権者と国保連に確認して手順書に反映する

一次資料

制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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