参入判断 / 更新 2026-10-14
指定訪問介護と保険外の訪問サービス:開業前に比べる指定・給付・確認事項
訪問先で生活支援を行う事業を始めるときは、介護保険法上の指定訪問介護として通常の居宅介護サービス費を扱うのか、その給付を前提にしない保険外の訪問サービスとして提供するのかを最初に分けます。指定の手続、適用される基準、利用者との契約、請求の設計が変わります。この記事は、開業前に整理する順番を一次資料に沿って示します。
この記事で決めること
訪問サービスへの参入を検討する人が、介護保険法上の指定訪問介護として始める場合と、通常の居宅介護サービス費を前提にしない保険外サービスとして始める場合の違いを確認し、次に調べる制度を決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、訪問サービスの事業方式整理表(対象者、提供内容、介護保険給付を使うか、必要な指定・許認可の確認先、同じ利用者へ組み合わせる際の区分方法)を作成できる状態を目指します。
最初に決めること:通常の介護保険給付を使う事業か
介護保険法第41条第1項の通常の居宅介護サービス費は、要介護認定を受けた居宅要介護被保険者が、指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けた場合を対象とします。訪問介護としてこの給付を扱うには、介護保険法上の指定を前提に事業を組み立てます。
一方、この記事でいう「保険外の訪問サービスだけで始める」とは、そのサービスについて介護保険法第70条の指定訪問介護としての指定申請を行わず、第41条第1項の居宅介護サービス費を扱うことを前提にしない事業です。保険外という呼び方だけで、ほかの許認可・届出や法令の適用がなくなるわけではありません。提供内容を決めてから、所管する行政窓口へ確認します。
介護保険法第42条には、市町村が必要と認める場合の基準該当居宅サービスなどに対する特例居宅介護サービス費があります。そのため、「第70条の指定がなければ介護保険から給付される場合は一切ない」とは整理しません。この記事の比較は、第41条第1項の通常の居宅介護サービス費を前提にしています。
指定訪問介護と保険外の訪問サービスの違い
指定訪問介護は、サービスの種類と事業所ごとに指定を受けます。指定の審査では、従業者の知識・技能や人員、設備、運営に関する基準への適合が確認されます。申請から開業までの順番は、指定権者の案内に合わせて組む必要があります。
保険外の訪問サービスは、通常の居宅介護サービス費を請求しない前提で、提供内容、対象者、料金、契約を設計します。ただし、サービス内容によって別の法令や許認可・届出が関係する可能性があります。『保険外だから人員基準も資格も届出も不要』と一律には判断できません。
| 確認項目 | 指定訪問介護 | 保険外の訪問サービス |
|---|---|---|
| 通常の居宅介護サービス費 | 第41条第1項の給付を扱う | 同給付を前提にしない |
| 介護保険法上の指定 | サービス種類・事業所ごとに第70条の指定を受ける | 第70条の指定訪問介護としては申請しない |
| 人員・設備・運営 | 指定基準への適合が審査される | 提供内容に適用される別の法令・基準を個別に確認する |
| 利用者との関係 | 介護保険サービスとして契約・提供・請求を設計する | 提供内容と料金を定め、契約に基づく利用者負担で提供する |
| 同じ利用者へ組み合わせる場合 | 保険外サービスと明確に区分する | 指定訪問介護の提供時間・利用料の請求・会計と明確に区分する |
指定訪問介護として始める場合の確認順
指定訪問介護を選ぶ場合は、予定する所在地の指定権者を確認し、指定申請、人員、設備、運営の各基準をその案内で確認します。介護保険法第70条は、指定をサービスの種類と事業所ごとに行うと定めています。法人内の別事業所の指定を、そのまま新しい事業所へ使うことはできません。
準備の全体像は、訪問介護開業の順番で確認できます。参入の収支を先に整理する場合は、訪問介護の売上・人件費・固定費の見方も合わせて使います。
保険外の訪問サービスだけで始める場合の確認順
先に『誰に、どこで、何を、どのように提供するか』を具体化します。生活支援という広い呼び方のままでは、適用される制度や確認先を決められません。移動、身体への行為、家事、見守りなど、実際に提供する行為へ分けます。
次に、各行為に関係する法令、許認可・届出、資格、事故時の対応を所管窓口へ確認します。その後で、提供範囲、料金、キャンセル、緊急時対応、個人情報の取扱いを契約と運営手順へ落とします。この記事は、個別サービスの許認可要否を代わりに判断するものではありません。
同じ利用者への組み合わせ提供で必要な区分
厚生労働省の通知は、介護保険サービスと保険外サービスを明確に区分し、保険外サービスを契約に基づく利用者負担で提供する考え方を示しています。指定訪問介護と保険外サービスを同時一体的に提供することはできません。
同じ利用者へ両方を組み合わせる場合は、保険外サービスの目的・運営方針・料金を定め、利用者へ説明して同意を得ます。保険外サービスの提供時間を訪問介護の提供時間に含めず、訪問介護の利用料とは別に費用を請求し、会計を区分します。組み合わせ方と具体例は、混合介護の取扱いで確認してください。
開業方式を決めるための4段階
第一に対象者と提供内容を具体化し、第二に通常の居宅介護サービス費を扱うかを決めます。第三に、指定訪問介護なら指定権者、保険外サービスなら提供内容を所管する行政窓口へ確認します。第四に、契約・記録・請求・会計の手順を作ります。
同じ利用者へ指定訪問介護と保険外サービスを組み合わせる場合は、どこからどこまでが指定訪問介護かを、利用者への説明、提供時間、利用料の請求、会計で判別できる状態にします。開業方式を決めた後は、指定訪問介護なら指定申請の準備へ、保険外サービスなら内容別の法令確認と契約設計へ進みます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 想定する利用者と、提供する訪問サービスの内容を具体的に書き出す
- 通常の居宅介護サービス費を使う指定訪問介護として提供するか、同給付を前提にしない保険外サービスとして提供するかを分ける
- 指定訪問介護を選ぶ場合は、事業所ごとの指定と、人員・設備・運営基準への適合を指定権者へ確認する
- 保険外サービスを選ぶ場合は、内容ごとに適用される法令と許認可・届出の要否を所管窓口へ確認し、同じ利用者へ指定訪問介護と組み合わせる場合は説明・提供時間・請求・会計を区分する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて(平成30年9月28日 老推発0928第1号・老高発0928第1号・老振発0928第1号・老老発0928第1号)」(確認日 2026-10-14)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「介護保険法(第70条 指定居宅サービス事業者の指定・第203条の2 大都市等の特例)・介護保険法施行令(第51条の3)」(確認日 2026-10-14)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「介護保険法 第7条・第8条第2項・第9条・第19条・第41条第1項(要介護者・訪問介護の定義・被保険者・認定・居宅介護サービス費)」(確認日 2026-10-10)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「介護保険法 第42条(特例居宅介護サービス費)」(確認日 2026-10-14)