運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護事業所の懲戒処分と減給の上限:平均賃金の半額・賃金総額の10分の1・就業規則の定め

職員の無断欠勤や記録の不備などに、減給の懲戒処分を考える事業所があります。減給の制裁には、労働基準法第91条の上限があり、上限を超えた部分は認められません。このページは、1回の額と総額の上限、平均賃金の出し方、賞与や降格の扱い、就業規則に必要な定めを、条文と厚生労働省の資料で整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者や管理者が、職員に減給の懲戒処分を科す前に、1回の減給額と総額の上限、平均賃金の出し方、賞与や降格に伴う減額の扱い、就業規則に定めておく事項を、労働基準法と厚生労働省の資料で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、減給の制裁の上限計算票(就業規則の制裁規定の確認結果、対象職員の平均賃金、1回の上限額、その賃金支払期の賃金総額と10分の1の額)を作成できる状態を目指します。

減給の制裁の上限(1回は平均賃金の半額、総額は賃金総額の10分の1)

労働基準法第91条は、就業規則で労働者に減給の制裁を定める場合、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないと定めています。第91条の違反は、第120条第1号により30万円以下の罰金の対象に含まれます。

厚生労働省のQ&Aは、この制限を、すでに発生した賃金を無制限に減額できるとすると労働者の生活に著しい影響が出るため設けられたものと説明しています。上限を超える減給を、就業規則に書いて科すことはできません。

減給の制裁の上限(労働基準法第91条、2026-10-13確認)
上限内容
1回の額平均賃金の1日分の半額まで(1回の懲戒事由につき)
総額一賃金支払期(賃金の計算期間)の賃金総額の10分の1まで

平均賃金の計算と、複数の事由があるとき

平均賃金は、労働基準法第12条により、算定すべき事由の発生した日以前3箇月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です。賃金が日給や時間給などで決まっている場合は、賃金の総額を3箇月間に労働した日数で割った金額の100分の60が下限になります。

山梨労働局のQ&Aは、複数の事由で減給の制裁をする場合も、一つの賃金締切期間の中で、1回ごとの上限の合計が賃金総額の10分の1を超えてはならないと説明しています。10分の1を超えてしまう場合に引けなかった部分は、翌月に繰り越すことになると思われるとしています。減給10分の1を6か月続けるような制裁はできないとされています。

賞与の減額や降格に伴う減給は、制裁に当たるかが分かれる

賞与も賃金に含まれるため、懲戒処分として賞与を減額する場合も、第91条の制限を受けるとされています。厚生労働省のQ&Aは、減給処分として賞与を全額不支給にすることはできないと答えています。

同じQ&Aは、勤務評価に基づいて賞与を算定する場合に、不就労期間に係る賞与額を減額することは、減給の制裁に該当しないとしています。降格処分に伴って賃金テーブルが変わる場合の賃金の減額も、職務変更の結果であり、減給の制裁には当たらないと解されています。

就業規則に定める事項と、懲戒の有効性

就業規則に制裁の定めをする場合は、労働基準法第89条第9号により、その種類と程度に関する事項を書く必要があります。山梨労働局のQ&Aは、制裁としての減給を行うには就業規則に規定を設ける必要があり、10人未満の事業所の社内規則も含むと考えられるとしています。

労働契約法第15条は、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効とすると定めています。第91条の上限を守っていても、処分そのものが有効かは別の問題です。

このページの範囲と、あわせて確認するページ

このページが確認したのは、労働基準法第12条・第89条・第91条・第120条、労働契約法第15条、厚生労働省と山梨労働局のQ&Aです。個々の処分が有効か、減給の額がいくらになるかは判断しません。処分の前に、社会保険労務士や労働基準監督署に確認してください。

就業規則の作り方は就業規則と36協定で、賃金の支払いの原則は賃金の支払いの原則で、解雇の手続きは解雇予告で確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 就業規則に、制裁の種類と程度(戒告、減給、出勤停止など)が書かれているかを確認する。書かれていなければ、減給の制裁を科す根拠がないため、先に規定を整える。10人未満の事業所の社内規則も、根拠として必要になる
  2. 対象職員の平均賃金を計算する。事由の発生した日以前3箇月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割る。時給や日給の職員は、労働日数で割った額の100分の60との比較(最低保障)も確認する
  3. 1回の減給額の上限(平均賃金の1日分の半額)と、同じ賃金支払期の賃金総額の10分の1を計算して票に書く。複数の事由がある場合は、合計が10分の1を超えないかを確認する
  4. 賞与から減らす場合や降格に伴う賃金の変更の場合は、減給の制裁に当たるかが変わる。懲戒が客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠かないかも含めて、社会保険労務士か労働基準監督署に確認する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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