運営 / 更新 2026-10-12
訪問介護事業所の賃金の支払い方:5原則と、口座振込・天引きの条件
訪問介護員への賃金は、労働基準法第24条により、通貨で、直接本人に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うのが原則です。口座振込や給与からの天引きは、この原則の例外として、本人の同意や労使協定などの条件を満たしたときだけ認められます。この記事は、労働基準法と同法施行規則の条文を、2026-10-12に確認した範囲で整理します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の事業者が、訪問介護員への賃金の支払い方法(口座振込や天引きを含む)が労働基準法第24条の賃金支払の5原則に沿っているかを、条文と施行規則で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、賃金支払方法の確認表(賃金の締切日と支払日・支払方法ごとの職員の同意の有無・控除項目の一覧と根拠(法令または労使協定)・労使協定の締結日と保管場所)を作成できる状態を目指します。
賃金支払の5原則(労働基準法第24条)
第24条第1項は、賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定めています。第2項は、賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと定めています。通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上払い、一定期日払いの5つを、賃金支払の5原則と呼びます。
臨時に支払われる賃金や賞与などは、毎月1回以上と一定期日の原則から外れます。施行規則第8条は、この例外に当たるものとして、1か月を超える期間の出勤成績で支給される精勤手当、1か月を超える期間の継続勤務に対する勤続手当、1か月を超える期間にわたる事由で算定される奨励加給や能率手当を挙げています。
第24条に違反した使用者には、第120条により30万円以下の罰金が定められています。訪問介護事業所では、登録ヘルパーの給与を数か月分まとめて払う、本人以外の家族に渡すといった運用が、この原則に反しないかを点検します。
口座振込にするときの条件(施行規則第7条の2)
通貨払いの原則の例外として、労働基準法施行規則第7条の2は、使用者が労働者の同意を得た場合に、労働者が指定する銀行などの預金口座への振込にできると定めています。本人の同意と、本人が口座を指定することが条件です。事業所が一方的に振込に決めることはできません。
同じ条は、証券会社の預り金への払込や、賃金のデジタル払い(厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座への資金移動)も、労働者の同意を得た場合に限り認めています。デジタル払いは、労働者が口座への振込などを選べるようにしたうえで、指定資金移動業者の口座の残高を100万円以下にする措置など、条文に並ぶ要件を労働者に説明して同意を得る必要があります。導入の可否は、この記事では判断しません。
訪問介護事業所では、入職時に振込口座の申出書を書面でそろえ、口座を変えるときも同じ書面で受けると、同意と口座の指定を確認できます。申出書の形式は条文では定められていないため、事業所で決めた様式を使います。
給与から天引きするときの条件と、確認する範囲
全額払いの原則の例外として、第24条第1項は、法令に別段の定めがあるとき、または、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(無いときは労働者の過半数を代表する者)との書面による協定があるときに、賃金の一部を控除して支払えると定めています。協定が無い控除は、この例外に当たりません。
訪問介護事業所では、給与明細の控除項目を、法令に基づくものと、労使協定に基づくものに分けて一覧にします。協定に基づく項目は、協定に書かれた項目と範囲を超えて天引きしていないかを確かめ、協定の締結日と相手を保管します。
制服代、研修費、利用者宅への交通費の立替分などを個別に天引きしてよいかは、協定の内容や契約の定めによって変わり、このページでは判断しません。個別の控除は、社会保険労務士か所轄の労働基準監督署に確認します。
事業所での点検の手順と、このページが判断しないこと
点検は、賃金の締切日と支払日、支払方法ごとの職員数、振込の同意の記録、控除項目と根拠の4点を、職員全員について一覧にして行います。就業規則に賃金の締切日・支払日・支払方法を書き、雇入れ時にも示す事項は雇入れ時の労働条件の明示と賃金台帳で整理しています。
このページは、個別の控除項目の可否、賃金のデジタル払いを導入するかや事業者の選定、最低賃金との比較を判断しません。最低賃金との比較は訪問介護員の時給と最低賃金、割増賃金の計算は訪問介護事業所の割増賃金を参照します。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 賃金の締切日と支払日を一覧にし、毎月1回以上、一定の期日に支払っているかを確かめる。支払日が休日に当たるときの扱いも就業規則で確認して記録する
- 職員ごとに、現金払い・銀行振込など支払方法を分け、振込の職員は本人が口座の振込に同意した記録(申出書など)がそろっているかを確認する。口座を指定した日と金融機関名を記録する
- 給与明細の控除項目を洗い出し、各項目が法令に基づくものか、労使協定で定めたものかを分けて書く。協定に基づく控除は、協定を結んだ相手(過半数労働組合または過半数代表者)と締結日を確認する
- 控除の協定が無い項目や、根拠が説明できない項目があるときは、天引きを止めて請求の方法に改めるか、社会保険労務士や労働基準監督署に確認して、結果を記録する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。