運営 / 更新 2026-10-12

訪問介護事業所の熱中症対策の義務(労働安全衛生規則第612条の2):報告体制と対応手順

熱中症を生ずるおそれのある作業を行う事業者は、令和7年6月1日から、熱中症の疑いを報告させる体制の整備と、症状の悪化を防ぐ措置の手順の作成を求められています。訪問介護では、夏の移動や冷房の効かない利用者宅での作業が当てはまるかを、事業所ごとに確かめる必要があります。この記事は、労働安全衛生規則第612条の2と厚生労働省の案内を、2026-10-12に確認した範囲で整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護員を雇用する事業者が、熱中症を生ずるおそれのある作業に求められる報告体制の整備と対応手順の作成・周知を、労働安全衛生規則第612条の2と厚生労働省の案内で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、熱中症対応の手順書(報告の連絡先・作業離脱と冷却の手順・救急要請の基準・周知の記録)を作成できる状態を目指します。

第612条の2が事業者に求める2つのこと

労働安全衛生規則の第612条の2は、暑熱な場所において連続して行われる作業等、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うとき、事業者にあらかじめ次の2つを求めています。どちらも、作業に従事する人への周知まで含みます。

第1項は、熱中症の自覚症状がある人や、熱中症の疑いがある同僚を見つけた人が、その旨を報告する体制の整備です。第2項は、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察または処置など、症状の悪化を防ぐために必要な措置の内容と、実施の手順を作業場ごとに定めることです。

第612条の2の義務の内容(e-Govの条文で確認、2026-10-12)
項事業者があらかじめすること作業する人への扱い
第1項自覚症状がある場合、または疑いのある人を見つけた場合に、その旨を報告させる体制を整備する体制を周知させる
第2項作業場ごとに、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察または処置など、悪化を防ぐ措置の内容と実施の手順を定める措置の内容と手順を周知させる

対象になる作業の目安と、訪問介護への当てはめ

厚生労働省の案内は、対象になる作業を「WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で、連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業としています。WBGTは暑さ指数のことで、気温だけでなく湿度や日射の影響を合わせた値です。

同じ案内は、作業の強さや着衣の状況によっては、この目安に当たらない作業でも熱中症のリスクが高まるため、同じ対応が推奨されるとしています。また、同じ作業場で働く労働者以外の人にも、同じ対応をとることとしています。

訪問介護員の訪問が、この目安に当たるかどうかは、確認した条文と案内からは判断できません。利用者宅ごとに室温が違い、徒歩や自転車での移動もあるためです。夏季の訪問の実態を洗い出したうえで、当たるかどうかを所轄の労働基準監督署へ確かめ、回答を残します。

報告体制と手順を、訪問介護の働き方に合わせて作る

厚生労働省の案内は、報告を受けるだけでなく、職場の巡視、バディ制、ウェアラブル機器の活用、双方向での定期連絡などで、症状のある人を積極的に把握するよう努めることを勧めています。訪問介護員は単独で動くことが多いため、訪問の合間に電話で状況を聞く時間を決めておく方法が考えられます。

手順の例として、案内のフロー図は、熱中症のおそれのある人を見つけたら、作業から離れさせて身体を冷やし、意識の異常などがあれば救急隊を要請する流れを示しています。自力で水分を摂れるかを確かめ、医療機関への搬送や経過観察の間は一人にしないことも書かれています。判断に迷うときは、#7119などの専門機関に相談します。

このフロー図は、あくまで参考例です。実際の手順は、緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先と所在地を含めて、事業所の実情に合わせて作ります。利用者宅で異変が起きたときの、利用者の家族や担当のケアマネジャーへの連絡は、事業所の定める手順に入れておきます。

確認の手順と、このページが判断しないこと

事業所では、夏季の訪問と事業所内の作業のうち、熱中症のおそれがある作業を洗い出し、報告の連絡先、離脱と冷却の手順、救急要請の基準を手順書にまとめます。手順書は全員に配って、周知した日を記録します。新しい職員への説明と、夏の前の見直しも日程に入れます。

このページは、個々の訪問が対象作業に当たるかの判断、暑さ指数の測定方法、違反した場合の責任の範囲を判断しません。労働災害として報告が必要な場面は訪問介護員の労働者死傷病報告の記録、事業場の人数ごとの安全衛生の体制は訪問介護事業所の衛生委員会・産業医・ストレスチェックで確認できます。マイカーでの移動の取り決めは訪問介護員のマイカー使用も参照します。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 夏季の訪問と事業所内の作業のうち、暑熱な場所で連続して行う作業や、熱中症のおそれがある作業を洗い出し、暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上で連続1時間以上または1日4時間を超えて行う見込みのものを書き出して、該当するかを労働基準監督署へ確認した日と回答を残す
  2. 訪問介護員が自分の症状や同僚の異変を報告する連絡先(事業所の電話・管理者)と、連絡がつかないときの代替の連絡先を決め、単独で動く訪問のため定期連絡の時間も決める
  3. 作業の離脱、身体の冷却、水分摂取、医療機関への搬送、救急要請の順を手順書に書き、判断に迷うときは#7119などの専門機関へ相談する旨も入れる
  4. 手順書と連絡網を全訪問介護員へ配布して周知した日を記録し、新規採用時の説明と毎年の夏前の見直しを日程に入れる

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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