運営 / 更新 2026-10-12
訪問介護員のマイカー使用:費用負担の定めと事故時の責任の確認点
訪問介護員が自分の車で訪問するとき、ガソリン代や駐車場代を誰が負担するか、事故が起きたら事業所はどんな責任を問われるかは、事業所ごとに決めておく必要があります。この記事は、民法・自動車損害賠償保障法・労働基準法の条文と、厚生労働省の交通労働災害防止のガイドラインで確認できる範囲で、取り決めの確認点を整理します。金額の目安や税務は扱いません。
この記事で決めること
訪問介護員のマイカー(自家用車)を訪問に使わせる事業所が、費用負担の定め方と、事故時の事業所の責任を、条文と厚生労働省のガイドラインで確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、マイカー使用の取り決め書(使用の可否・費用の負担区分・保険の加入確認・事故時の報告手順)を作成できる状態を目指します。
費用負担を定める規定は、条文では確認できない
確認した条文とガイドラインには、ガソリン代や駐車場代の金額、精算の方法を定める規定は含まれていません(2026-10-12に確認)。事業所が職員との契約や就業規則で、どこまでを事業所が負担するかを決めることになります。
労働基準法の第89条第5号は、常時10人以上の労働者を使用する事業所が、労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをするときは、就業規則に記載するとしています。労働基準法施行規則の第5条第1項第6号は、労働条件を明示するときに、労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項を含めるとしています(定めをしない場合を除く)。
ガソリン代や駐車場代の負担が、この「その他の負担」に当たるかどうかは、確認した条文からは断定できません。職員に費用を負担させる定めをするときは、就業規則と労働条件の明示に書いておく方法を、社会保険労務士に確認してください。
事故が起きたとき、事業所が問われる責任
民法の第715条第1項は、事業のために他人を使用する者は、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしています。ただし、使用者が被用者の選任と事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りではありません。第3項は、使用者から被用者への求償を妨げないとしています。
自動車損害賠償保障法の第3条は、自己のために自動車を運行の用に供する者は、運行によって他人の生命・身体を害したときの損害賠償責任を負うとしています。ただし、自己と運転者が注意を怠らなかったこと、被害者や第三者に故意・過失があったこと、自動車に構造上の欠陥や機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りではありません。
職員の自家用車を訪問に使わせたとき、事業所が「自己のために自動車を運行の用に供する者」に当たるか、第715条の責任が問われるかは、事故の状況や事業所の指示の内容によって異なります。このページは、個別の事故で責任があるかどうかを判断しません。保険の補償範囲は、加入している保険の約款と保険会社で確認してください。
厚生労働省のガイドラインが事業者に求めること
厚生労働省の「交通労働災害防止のためのガイドライン」は、道路上と事業場構内の自動車と原動機付き自転車の交通事故による労働災害を対象とし、労働者に自動車等の運転を行わせる事業者に、このガイドラインを指針として防止対策を進めるよう求めています。運転する労働者にも、事業者の指示を守り、防止の措置に協力するよう求めています。確認した本文には、車が私有車か事業者の車かの区別は書かれていません。
事業者への求めの例として、交通労働災害の防止に関係する管理者を選任して役割を周知すること、安全衛生方針・目標・計画に交通労働災害防止を含めること、雇入れ時の教育で交通法規、運転時の注意事項、走行前点検の励行などを扱うこと、実際の運転場面を想定して危険を予知させる訓練を続けることが望ましいことが示されています。
ガイドラインのうち、運行の計画や点呼は、四輪以上の自動車の運転業務に主として従事する労働者が対象とされています。訪問介護員が当てはまるかは、確認していません。
事業所が決めて記録しておくこと
事業所では、マイカーを使わせる職員と使わせる条件、費用の負担の区分、事故が起きたときの報告の手順を、取り決め書にまとめます。運転免許、車検、自動車保険の加入は、確認した日付とともに記録しておくと、事故の後に事業所の注意の程度を説明する材料になります。
駐車場所は、訪問先ごとに決めておきます。駐車禁止の場所に停める必要があるときの警察署の許可は訪問介護の車両の駐車許可で確認できます。移動中の事故が業務災害か通勤災害かの整理は移動中事故の確認記録、利用者への損害賠償と保険は損害賠償と賠償責任保険で確認できます。
このページは、個別の事故の責任の有無、保険の補償、費用の金額や税務上の扱いを判断しません。確認した条文とガイドラインの範囲に基づく整理で、個別の判断は社会保険労務士、保険会社、税理士に確認してください。
マイカー使用の費用を事業計画に入れる
マイカーの使用で事業所が負担すると決めた費用(ガソリン代の支給や手当など)は、訪問件数に応じて増える費用です。事業計画ツールの月次変動費へ、決めた負担方法で見込んだ月額を入力し、訪問件数を変えたときの営業損益を確かめます。
ツールは、費用負担の定めの有効性や事故時の責任を判定しません。負担の方法が決まっていない間は、保守ケースの費用に仮の額を置き、決まった時点で入力し直します。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 訪問にマイカーを使う職員を洗い出し、使用を認める条件(運転免許の確認、車検・自動車保険の加入の確認日など)を決めて、職員ごとに確認した日付を記録する
- ガソリン代・駐車場代・車両の消耗などの費用を、事業所が負担するか、職員が負担するか、どの範囲を精算するかを決め、職員に負担させる定めがあるときは、労働条件の明示と就業規則の記載に入れる
- 事故が起きたときの報告先・報告期限・利用者や相手方への連絡の順序を手順書に書き、使用者としての責任が問われる場面を社会保険労務士や保険会社に確認した記録を残す
- 雇入れ時や年に1回の教育で、交通法規と運転時の注意、ヒヤリ・ハットの共有を行い、実施日と内容を記録する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法 第715条、自動車損害賠償保障法 第3条、労働基準法 第89条、同法施行規則 第5条」(確認日 2026-10-12)
- 厚生労働省「交通労働災害防止のためのガイドライン(令和7年5月版)」(確認日 2026-10-12)