運営 / 更新 2026-10-07
訪問介護の利用者負担の月額上限(高額介護サービス費):申請と事業所の説明
高額介護サービス費は、1か月に支払った介護サービスの利用者負担が世帯の上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。払い戻しは、利用者が市町村へ申請して受けます。訪問介護事業所は払い戻しの当事者ではありませんが、利用者や家族から負担の重さを相談される場面があります。条文と通知で確認できた範囲を整理します。
この記事で決めること
介護保険の高額介護サービス費(1か月の利用者負担の上限)の仕組み、所得区分別の上限額、申請は市町村へ行うこと、事業所が利用者へ説明するときの範囲を整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、高額介護サービス費の利用者向け説明メモを作成できる状態を目指します。
制度の根拠と、払い戻しの主体
介護保険法第51条第1項は、市町村が、要介護被保険者が受けた居宅サービスなどの費用のうち、保険給付を差し引いた利用者負担が著しく高額であるときに、その被保険者へ高額介護サービス費を支給すると定めています(e-Govの現行条文、取得2026-10-07)。要支援者は同法第61条の高額介護予防サービス費です。
支給の主体は市町村で、支給の相手は利用者です。事業所が利用者へ払い戻す制度ではなく、事業所が利用者から受け取る1割から3割の利用料が合算の対象になります。利用料の受け取り方は訪問介護の利用料等の受領(基準第20条・交通費と保険外サービスの別料金の条件)で整理しています。
支給の要件と額は、施行令第22条の2の2が定めています。同じ世帯の要介護被保険者などが同じ月に受けた居宅サービスなどの利用者負担を合算し、世帯の上限額を超えた分を支給します。施行令第22条の2は所得の額の算定方法を定める別の条なので、条番号を取り違えないようにします。
所得区分別の月額上限
厚生労働省の介護保険最新情報Vol.1532(令和8年7月31日)の別添2に、現行の月額上限が区分ごとに載っています。世帯の上限額は、住民基本台帳上の世帯で、介護サービスを利用した全員の負担の合計に対する上限です。個人の上限額は、利用した本人の負担に対する上限です。
上限額は、サービスを利用した月ごとに、各月の初日の世帯と所得の状況で判定します。通知は、令和8年8月1日から低所得の区分の基準額を見直すと書いています。通知は、この見直しで表の上限額を変えるとは書いていません。
| 区分 | 月額上限 |
|---|---|
| 生活保護の被保護者 | 個人15,000円 |
| 市町村民税世帯非課税で、公的年金等収入金額とその他の合計所得金額が82.65万円以下、または老齢福祉年金の受給者 | 世帯24,600円(個人15,000円) |
| 市町村民税世帯非課税(上の区分以外) | 世帯24,600円 |
| 課税所得380万円未満の者がいる世帯 | 世帯44,400円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満の者がいる世帯 | 世帯93,000円 |
| 課税所得690万円以上の者がいる世帯 | 世帯140,100円 |
対象にならない費用と、申請の流れ
厚生労働省の介護サービス情報公表システムは、福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除いて高額介護サービス費の対象になると説明しています。訪問介護の利用者負担は、1割から3割の利用料が対象に当たります。区分支給限度基準額の考え方は訪問介護の区分支給限度基準額と利用者負担割合で整理しています。
支給を受けるには、市町村への申請が必要です。厚生労働省は市町村に、申請は初回のみで足りるようにすること、申請時に利用者負担額の申告や領収書の添付を求めないこと、初回に指定した口座へ振り込むことなどに対応するよう求めています。実際の申請書や窓口の運用は、市町村ごとに異なります。
高額介護サービス費は月単位の制度です。医療保険と介護保険の自己負担を、8月1日から翌年7月31日までの年額で合算する高額医療合算介護サービス費(施行令第22条の3)は別の制度で、この記事では扱いません。
事業所が利用者へ説明するときの範囲
事業所が利用者へ説明する方法を示した公式の文書は、確認した範囲では見つかりませんでした。通知は市町村向けの内容です。ここからは、条文と通知から導ける整理の例です。
利用者が月の負担の重さを相談したときは、月ごとの上限額の制度があること、申請先は市町村の介護保険の窓口であることを伝え、個別の上限額や払い戻しの可否は、世帯の所得で決まるため市町村に確認してもらいます。事業所が、特定の世帯の上限額や払い戻しの額を断定することは避けます。
市町村によっては、払い戻し分を事業者が代わりに受け取る受領委任払いを、施設サービスなどで設けている例があるとされます。訪問介護に当てはまるかは確認できていないため、事業所のある市町村に問い合わせ、説明した日付と案内した窓口を相談の記録に残します。法定代理受領の考え方は訪問介護の法定代理受領の要件と利用者への説明(基準第15条)も参照してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 負担割合証で利用者の負担割合を確かめ、利用料の請求書と領収書に1か月の利用者負担額が分かる形で記載する
- 利用者や家族から月の負担が重いと相談されたとき、月額の上限があること、申請先は市町村であることを説明する
- 上限額の区分や払い戻しの可否は、個々の世帯の所得で決まるため、市町村の介護保険担当の窓口に確認してもらう
- 説明した日付と内容、案内した窓口を、相談記録に残す
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索「介護保険法第51条・第61条、介護保険法施行令第22条の2の2(高額介護サービス費)」(確認日 2026-10-07)
- 厚生労働省老健局「介護保険最新情報Vol.1532(令和8年7月31日、老介発0731第1号)別添2 高額介護(予防)サービス費の支給事務」(確認日 2026-10-07)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」(確認日 2026-10-07)