運営 / 更新 2026-10-09
訪問介護の院内介助は算定できるか(厚労省事務連絡と自治体の確認手順)
病院の中の移動やトイレの介助(院内介助)は、基本的には病院のスタッフが行うものとされています。ただし厚生労働省は、場合によっては介護報酬の算定対象になるとしており、一律に算定しない扱いにしないよう各自治体へ求めています。算定できるかどうかは保険者(市町村)の判断で、確認の記録の残し方が算定の分かれ目になります。
この記事で決めること
通院介助の付き添いで病院の中の移動やトイレの介助を行うとき、介護報酬が算定できる条件と、ケアプランに残す確認の記録を、厚生労働省の事務連絡で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、院内介助を算定する前の確認記録チェック表を作成できる状態を目指します。
院内介助についての国の考え方
厚生労働省老健局振興課の事務連絡「訪問介護における院内介助の取扱いについて」(平成22年4月28日)は、平成15年の通知にある「基本的には院内のスタッフにより対応されるべきものであるが、場合により算定対象となる」という考え方を示しています。
同じ事務連絡は、院内介助が認められる場合は各保険者の判断としたうえで、一部で一切の算定を拒否されているとの指摘があることから、院内介助であることをもって一概に算定しない取扱いにしないよう求めています。
通院等のための乗車または降車の介助が中心である場合の院内介助は、「通院のための乗車又は降車の介助」として包括して評価されます。乗降の介助の算定要件は訪問介護の通院等乗降介助(ハ)算定要件で確認できます。
多くの保険者が求める3つの条件
事務連絡は、各都道府県・保険者の対応事例を取りまとめたうえで、多くの保険者が次の3点を要件にしていると紹介しています。内容は、適切なケアマネジメントを行ったうえであること、院内のスタッフ等による対応が難しいこと、利用者が介助を必要とする心身の状態であることの3つです。
利用者が介助を必要とする心身の状態の例として、院内の移動に介助が必要な場合、認知症などのために見守りが必要な場合、排せつ介助が必要な場合が挙げられています。
これは取りまとめた事例の紹介であり、全国一律の算定要件ではありません。どの場合に算定できるかは、事業所のある市町村の取扱いで決まります。
自治体の確認手順の例
事務連絡の別添には、各自治体が公表していた対応事例が載っています。確認の手順は自治体ごとに違いますが、共通しているのは、必要な理由と病院側の対応状況を記録に残すことです。
横浜市の事例では、病院のスタッフが対応できない場合に、ケアマネジャーがケアプランに必要性を位置づけて実施するときは、例外的に算定できるとしています。ケアマネジャーが単独で判断せず、主治医等の意見を踏まえてサービス担当者会議で協議し、検討した内容を記録に残すよう求めています。医師等から文書をもらう必要はなく、病院のスタッフが対応できるかの確認は病院の地域連携室等に相談する方法が示されています。
大阪市の事例は、院内介助が必要な状態であることの確認、受診先の医療機関に院内介助の体制があるかの確認、サービス担当者会議での検討の3つを求めています。体制がない場合は、対応できない理由と必要なサービス内容を居宅介護支援の経過記録に書くことになっており、「院内介助が必要」とだけの記録では不十分とされています。
枚方市の事例は、居宅サービス計画に、院内介助が必要な理由、具体的な介助内容と所要時間、病院のスタッフによる介助が得られないと確認した経緯(いつ、誰に、何を確認したか)を書くよう求めています。確認の相手は、必ずしも医師でなくても、医事課や看護部などでよいとされています。
羽曳野市の事例は、院内のスタッフでの対応の可否を確認したうえで、対応できない場合に限り、実際に介助を行った時間だけを算定するとしています。院内のスタッフが対応できないからといって、身体介護を一律に算定できるものではないとも書かれています。
| 自治体 | 確認・記録として求めている内容 |
|---|---|
| 横浜市 | ケアプランに必要性を位置づけ、主治医等の意見を踏まえてサービス担当者会議で協議し、記録に残す。医師からの文書は不要 |
| 大阪市 | 必要な状態の確認、医療機関の院内介助の体制の確認、サービス担当者会議での判断を記録する。体制がない理由と必要な内容を経過記録に書く |
| 枚方市 | 必要な理由、介助内容と所要時間、病院に確認した経緯(いつ・誰に・何を)を居宅サービス計画に書く |
| 羽曳野市 | 院内スタッフの対応可否を確認し、対応できない場合のみ、実際に介助した時間を算定する |
訪問介護事業所が請求前に確認すること
事務連絡は平成22年のもので、確認できたのはその本文だけです。その後の改正や、事業所のある市町村の現在の取扱いは、このページでは確認していません。請求の前に、市町村の介護保険担当課へ取扱いを確認してください。
自治体の事例は、確認した内容をケアプランやサービス担当者会議の記録に残すよう求めています。事業所でも、付き添いを始める前に、その記録がそろっているかをケアマネジャーに確かめておくと安心です。
ヘルパーができる行為の範囲全体は訪問介護でできること・できないこと一覧(老計第10号)に、運転や送迎の要件は訪問介護の通院等乗降介助・送迎の運転者要件(第二種免許・福祉有償運送との違い)にあります。個別の利用者の算定可否は保険者が判断します。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 利用者の心身の状態から、院内の移動・見守り・排せつ介助などが必要な理由を、ケアマネジャーと一緒にアセスメントの記録に書く
- 受診先の医療機関(地域連携室や医事課など)に、院内のスタッフが対応できるかを確認し、いつ・誰に・何を確認したかを記録する
- 必要な介助の内容と所要時間をケアプランに位置づけ、必要ならサービス担当者会議で検討した内容を記録に残す
- 算定できる範囲は保険者が判断するため、事業所のある市町村の窓口に取扱いを確認してから請求する
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省老健局振興課「訪問介護における院内介助の取扱いについて(事務連絡 平成22年4月28日)」(確認日 2026-10-09)