運営 / 更新 2026-10-14

訪問介護事業所の情報安全管理:厚労省の手引き(令和8年4月)のチェックリスト5区分

厚生労働省は、令和8年4月付けで「介護事業所における情報安全管理の手引き」を示しています。職員、管理者、システム担当者、経営者が電子機器を使うときに、個人情報や要配慮個人情報を漏えいさせないための対策をまとめた資料で、6ページの手引きの中にチェックリストがあります。この記事では、手引きの構成とチェックリストの5区分を確認し、個人情報保護法の安全管理措置と照らして、訪問介護事業所が自分で点検する項目を決める流れを整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の管理者が、厚生労働省の介護事業所における情報安全管理の手引き(令和8年4月)の構成とチェックリスト5区分を確認し、個人情報保護法の安全管理措置と照らして自事業所の点検項目を決めるための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、情報安全管理の自己点検表(チェックリスト5区分の項目、現状、できていない理由と対応予定、確認者、確認日)を作成できる状態を目指します。

手引きの位置づけ:介護情報基盤に備えた、介護事業所向けの対策集

この手引きは、令和7年度の老人保健事業推進費等補助金による「介護情報基盤の運用に向けた介護事業所におけるセキュリティ対策のための調査事業」の成果物として、厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。手引きの対象は、介護事業所の職員、管理者、システム担当者、経営者です。

手引きは全6ページで、手引きの説明、情報安全管理の要点、チェックリスト、介護情報基盤の説明、参考文献の順にまとまっています。対策の詳細や分かりにくい専門用語は、別の解説編で確認するよう案内されています。

手引きは介護事業所全般を対象にしたもので、訪問介護の外出先での記録の扱いは個別に書かれていません。この記事で訪問介護の場面に当てはめている部分は、手引きの項目を読み替えた運用例として区別して書きます。

なぜ点検が要るのか:扱う情報の多くが要配慮個人情報にあたる

手引きは、個人情報を氏名、生年月日、住所、顔写真など特定の個人を識別できる情報、要配慮個人情報を病状、治療、障害など不利益が生じないよう特に注意して扱う情報としています。そのうえで、介護事業所で扱う情報の多くは要配慮個人情報にあたり、特に慎重な安全管理が必要だと書いています。

法律の面では、個人情報保護法の第23条が、個人データの漏えい、滅失、毀損の防止などのために必要かつ適切な措置を講じることを個人情報取扱事業者に求めています。第24条は従業者に取り扱わせるときの監督、第25条は取扱いを委託するときの監督を定めています。

手引きはこれらの対策を解説する資料で、チェックリストの各項目が法令上の義務かどうかまでは手引き自体は示していません。個別の事案が法令に適合するかは、守秘義務の整理を訪問介護の秘密保持等(基準第33条)で確認したうえで、個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスや、指定権者の案内に当たってください。

チェックリストの5区分と、訪問介護での確認場面

手引きのチェックリストは、職員が日々の行動を確かめる4区分と、管理者やシステム担当者が整える安全管理措置等の1区分の、合わせて5区分です。手引きは、すべての対策を適切に行えている事業所は多くないとしたうえで、できていない項目から対策を進め、定期的に確認するよう書いています。

次の表の左2列は手引きの記載、右の列は訪問介護での確認場面の運用例です。右の列は手引きの文言ではありません。

情報安全管理チェックリストの5区分(厚生労働省・令和8年4月の手引き)と、訪問介護での確認場面の例
区分手引きの主な項目訪問介護での確認場面(運用例)
1 安全な使用環境の確保原則として職員個人の端末で個人情報を扱う業務をしない、許可なく事業所外へ持ち出さない、公衆無線LANを業務で使わない、事業所に誰もいなくなるときは施錠する訪問先で記録を入力する端末が事業所の管理下にあるか、直行直帰のときの保管場所
2 ログイン・ログオフの管理等自分専用のIDとパスワードまたは生体認証でログインする、パスワードを書いたメモを見える場所に置かない訪問介護員ごとにIDを分けているか、共用のIDで入力していないか
3 閲覧・入力・送信覗き見防止シートを使う、離席時は端末をロックする、メールやFAXの宛先を確認する、重要情報はパスワード保護した添付ファイルにするケアマネジャーや家族へ連絡するときの宛先確認と、事業所外から送るときの手順
4 その他、注意事項USBメモリ等を許可なく接続しない、不審なメールの添付ファイルやリンクを開かない、業務用端末で業務外のインターネットを使わない事業所の端末の使い方を入職時に伝えているか
5 安全管理措置等(管理者・システム担当者向け)組織的・人的・物理的・技術的の4つの安全管理措置、外的環境の把握、委託先の監督規程と責任者の有無、研修の記録、介護ソフトの提供事業者への確認

5区分目の6項目:責任者・研修・入退室・ソフト・情報収集・委託先

5区分目の安全管理措置等は、6つの観点で書かれています。組織的な措置では、個人情報保護指針や個人情報取扱規程を作り、情報セキュリティ責任者を選任して体制とルールを整えます。人的な措置では、入職時と派遣職員を含む職員に、研修とインシデント発生時の対応訓練を定期的に行います。

物理的な措置では、電子機器のある部屋の入退室を管理し、端末の持ち出しと持ち込みを持ち出し記録簿で管理します。技術的な措置では、インターネットに接続するすべての端末にセキュリティソフトを使い、OSとソフトを定期的に更新します。

外的環境の把握は、情報セキュリティの最新の脅威や対策を日頃から集め、介護ソフトの提供事業者のセキュリティ対策を確認することです。委託先の監督は、システム運用やデータ処理を外部に委託するとき、対策を確認して選び、必要な契約書を交わし、定期的に確認することです。後者は、個人情報保護法の第25条の考え方につながります。

事業所での点検の進め方(運用例)

手引きのチェックリストには、結果補足欄があり、できていない理由、対応できている範囲、今後の対応予定を書くよう案内されています。事業所では、この欄を含む点検表を作り、項目ごとに現状と確認者、確認日を残すと、次回の点検で変化を比べられます。

点検の順は、まず1区分目から4区分目を職員全員で確かめ、次に5区分目を管理者が確かめる流れが組みやすいです。訪問介護では、記録の入力に使う端末が事業所の貸与か個人所有かを最初に洗い出し、個人所有の端末を使っている場合は、手引きの1区分目の最初の項目と照らして、事業所としての扱いを決めます。

手引きは、入職者にも情報安全管理を教え、使用する電子機器の横にチェックリストを備えて実践するよう案内しています。研修の実施日と参加者は、人的な措置の記録として残してください。手引きが示すのは対策の例で、事業所の規模や使う機器に合わせた具体的な方法は、事業所で決めます。

次に確認すること

万一、利用者の個人データが漏えいしたときの個人情報保護委員会への報告や本人通知は、訪問介護の利用者情報の漏えい:個人情報保護委員会への報告・本人通知と開示請求への対応で条文を確認できます。この記事の点検は、そうした事態を防ぐための平時の確認にあたります。

介護情報基盤に参加する手順や開始日は、介護WEBサービスの登録手順と開始日(介護情報基盤の導入)で整理しています。記録をICTで行う場合の公的な補助は、訪問介護の記録ICT導入に使える都道府県の補助を確認してください。

この記事は、特定の介護ソフトや端末の設定方法、個別の事案が法令に違反するかどうかを判断するものではありません。個別の対応は、個人情報保護委員会、厚生労働省の資料、指定権者の案内を確認して決めてください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 厚生労働省の手引きのチェックリスト5区分を、事業所の点検表に写し、項目ごとに現状(できている・一部・できていない)を記入する
  2. 訪問介護員が使う端末(事業所貸与か個人所有か)、持ち出しの有無、記録の入力場所を洗い出し、安全な使用環境の項目と照らす
  3. できていない項目は、理由と対応予定を結果補足欄に書き、管理者が優先順位をつけて期限を決める
  4. 新しく入職した職員への教育と、年に1回など事業所で決めた間隔の再点検を、研修記録や点検表に日付つきで残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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