運営 / 更新 2026-10-13
訪問介護の経営情報の報告:対象・報告項目・期限(介護保険法第115条の44の2)
介護サービス事業者は、事業所ごとの収益・費用や職員数を、会計年度が終わってから3か月以内に都道府県知事へ報告する義務があります(2024年4月施行)。訪問介護事業所も対象です。この記事は、介護保険法第115条の44の2、同法施行規則、厚生労働省の実施上の留意事項(令和6年8月2日付)と案内ページを2026-10-13に確認し、対象になる事業者、報告する項目、期限、報告しなかったときの定めを整理します(個別の事業所の報告内容の適否は判断しません)。
この記事で決めること
訪問介護事業所の事業者が、介護サービス事業者経営情報の報告の対象になるか、何を・いつまでに・どのシステムで報告するか、報告しなかったときの定めを、介護保険法と厚生労働省の留意事項で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、経営情報の報告の準備メモ(会計年度末・報告期限の目安・対象外に当たるかの確認・GビズIDの取得状況・科目の分け方・報告担当者)を作成できる状態を目指します。
経営情報の報告とは何か(介護保険法第115条の44の2)
第115条の44の2第2項は、介護サービス事業者に対し、事業所または施設ごとの収益・費用その他の事項を、その所在地を管轄する都道府県知事に報告するよう義務づけています。厚生労働省の留意事項は、3年に1度の介護事業経営実態調査を補うために、経営情報を集めてデータベースを整え、属性ごとにまとめた分析結果を公表する制度だと説明しています。
この報告は、利用者が事業所を選ぶための「介護サービス情報の公表」とは別の制度です。出す先のシステムも、報告する内容も別なので、同じ時期に求められても別々に準備します。3つの制度の根拠条文の違いは訪問介護の報告・届出の義務、公表制度の準備は訪問介護の介護サービス情報公表制度で整理しています。
訪問介護事業所は対象か、対象外になる条件
留意事項の報告対象サービスの一覧には、先頭に訪問介護が挙がっています。原則としてすべての介護サービス事業者が報告します。
対象外になるのは、施行規則第140条の62の2の2により、その事業者が持つ事業所の全部が次のどちらかに当たる場合です。ひとつは、その会計年度に介護サービスの対価として支払いを受けた金額(介護給付費などの支給対象となるサービス分)が100万円以下であること。もうひとつは、災害など、都道府県知事に報告できないことに正当な理由があることです。
事業所の一部だけがこの基準に当たるときは、その事業所の分を除いて報告します。
開業して間もなく売上が小さい事業所でも、100万円を超えれば対象です。開業1年目の会計年度の見込みが100万円を超えるかどうかは、訪問介護の開業1年目の月別カレンダーや売上の見積りと合わせて確認します。判断に迷うときは、事業所を管轄する都道府県の介護保険担当に確認します。
報告する項目と、任意の項目
留意事項の別紙1に、報告を求める項目が示されています。大きく分けると、事業所の名称・法人番号・事業所番号・会計年度末・会計基準などの基本情報、収益と費用、職種別の人数の3つです。
収益は介護事業収益を報告し、居宅介護料収益や保険外収益の内訳は任意記載です。費用は給与費、業務委託費、減価償却費、水道光熱費、その他費用を報告します。
役員報酬や法定福利費、研修費、車両費などの内訳は任意記載とされています。人員は、管理者、介護職員(介護福祉士)、事務職員などの職種ごとに常勤と非常勤の人数を報告し、訪問介護ではサービス提供責任者の人数も項目に入っています。職種ごとの給与と賞与は任意記載です。
報告は事業所単位が原則ですが、事業所ごとに会計を分けていないなど、やむを得ない場合は法人単位で報告してもよいとされています。医療や障害福祉サービスを併せて行い、介護との区分が帳簿でできていないときは、その分を除かずに報告して差し支えありません。
| 区分 | 報告する内容 | 任意の項目の例 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 事業所の名称、法人等の名称、法人番号、介護事業所番号、サービスの種類、会計年度末、会計基準、消費税の経理方式 | なし |
| 収益 | 介護事業収益 | 居宅介護料収益、保険外収益の内訳 |
| 費用 | 給与費(給与)、業務委託費、減価償却費、水道光熱費、その他費用 | 役員報酬、法定福利費、研修費、車両費、事業外収益・費用など |
| 人員 | 職種別の人数(常勤・非常勤別)。訪問介護ではサービス提供責任者の人数も含む | 職種ごとの給与・賞与 |
報告の期限と、報告しなかったときの定め
施行規則第140条の62の2の4は、報告を電磁的方法により、毎会計年度終了後3か月以内に行うと定めています。たとえば会計年度が4月から翌年3月の事業者は、3月末の決算が終わってから3か月以内、つまり6月末までが目安です。報告は、厚生労働省が運営するデータベースのシステムを使い、利用にはGビズID(GビズIDプライム)のアカウントが必要です。
厚生労働省の案内ページ(2026-10-13確認)には、システム改修のため令和7年3月以降に終了する会計年度分の報告の受付を一時的に停止していること、再開時期は未定であること、再開の際は事務連絡や介護保険最新情報で知らせることが書かれています。受付停止の間に報告できなかった場合は、3か月以内の期限にとらわれないとも案内されています。再開したかどうかは、案内ページと都道府県からの連絡で確かめます。
法第115条の44の2第6項は、報告をしなかったり虚偽の報告をしたりしたときに、知事が期間を定めて報告や是正を命じられると定めています。第8項は、その命令に従わない指定居宅サービス事業者について、知事が指定の取消しや効力の停止をできるとしています。訪問介護の指定は都道府県知事が行うため、この対象に当たります。
開業前後に準備しておくこと
報告の項目は、決算書の科目から作れるように組まれています。留意事項には、別紙2で各会計基準の勘定科目との対応を示す旨があります。
月次の試算表の段階から、給与、業務委託費、車両費などを分けて記帳しておくと、決算後に組み直す手間を減らせます。訪問介護の月次決算の科目の分け方と合わせて確認します。
GビズIDプライムの取得は、オンライン申請なら最短即日、書類郵送なら原則2週間以内の審査と案内されています(法人の種類によってはオンライン申請に対応していません。窓口の稼働状況によっては、この期間によらない場合があるとも注記されています)。決算期の直前に慌てないよう、開業の準備のうちに取得しておくと安心です。
このページは、個別の事業所が報告の対象かどうか、報告した数値が適切かどうかを判断しません。システムの入力方法は、厚生労働省の操作ガイドと都道府県の案内で確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 事業所の会計年度末を決め、会計年度終了後3か月以内の期限の目安を日付で書き出す。あわせて、その会計年度の介護サービスの対価の受領額が100万円を超える見込みかを確認し、確認した日を残す
- 厚生労働省の案内ページで、報告の受付が再開しているか、報告期間の案内が出ているかを確かめ、確認した日と内容を控える。事務連絡や都道府県からの連絡の受け取り先も決めておく
- 報告に使うGビズIDプライムのアカウントを、法人の種類に合う申請方法で取得し、管理する担当者を決める。取得に要する期間を見込んで、決算期の前に済ませる
- 月次の帳簿の科目を、給与、業務委託費、車両費、研修費などに分けて記帳できる形にする。職種別の人数(常勤・非常勤、サービス提供責任者)を決算時点で数える方法も決める
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。