運営 / 更新 2026-10-13
訪問介護員が妊娠したときの母性健康管理措置:健診の時間、通勤・休憩・作業の制限
訪問介護員から妊娠の報告を受けたとき、事業所は産前産後休業の準備のほかに、母性健康管理の措置を講じる必要があります。健診を受ける時間の確保や、医師等の指導を守るための勤務の調整は、男女雇用機会均等法が事業主に求めています。このページは、条文と厚生労働省の資料で、事業所が確認する措置と、妊娠を理由とする不利益取扱いの禁止を整理します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の経営者や管理者が、妊娠した訪問介護員から報告を受けたときに、健診を受ける時間の確保、医師等の指導を守るための措置、母健連絡カード、妊産婦の就業制限、不利益取扱いの禁止を、均等法と厚生労働省の資料で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、妊娠報告を受けたときの対応票(健診の時間の確保方法、医師等の指導の確認、訪問先・移乗介助などの作業の見直し、通勤と休憩の措置、決定内容の本人への明示)を作成できる状態を目指します。
健診の時間の確保と、指導事項を守るための措置(均等法第17条・第18条)
男女雇用機会均等法第17条は、事業主は、女性労働者が母子保健法の規定による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならないと定めています。第18条は、その保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるよう、勤務時間の変更、勤務の軽減などの必要な措置を講じなければならないと定めています。
厚生労働省の資料によると、第18条の措置の対象は、妊娠中と出産後1年を経過していない女性労働者です。措置を決めたら、決定後に速やかに女性労働者へ内容を明示し、書面での明示が望ましいとされています。
講じる措置の種類と、訪問介護で見直す点
厚生労働省の資料は、事業主が講じる措置を、妊娠中の通勤緩和、妊娠中の休憩に関する措置、妊娠中または出産後の症状等に対応する措置の3つに整理しています。症状等に対応する措置には、作業の制限、勤務時間の短縮、休業などがあります。
同じ資料は、作業の制限の例として、腰に負担のかかる作業を挙げ、重量物を持ち上げる、要介護者を抱える、腰をひねるといった動作や中腰の作業を避けることを示しています。訪問介護では、移乗介助などがこれらの動作に当たる場合があるため、担当する利用者や訪問内容の見直しが、検討する点になります。
| 措置 | 資料に挙げられた例 |
|---|---|
| 通勤緩和 | 時差通勤(始業・終業に各30分〜60分程度の時間差)、勤務時間の短縮(1日30分〜60分程度)、交通手段や経路の変更、在宅勤務 |
| 休憩に関する措置 | 休憩時間の延長や休憩回数の増加、休憩時間帯の変更、横になって休憩できる設備の配慮 |
| 症状等に対応する措置 | 勤務時間の短縮(1日1〜2時間程度)、腰に負担のかかる作業の制限(要介護者を抱える動作や中腰の作業を避ける)、ストレスや緊張の多い作業の軽減 |
医師等の指導の確認方法(母健連絡カード)と、指導が具体的でないとき
医師等の指導を事業主に的確に伝えるために、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)が定められています。本人から、カードなどで指導内容を確認します。
通勤緩和や休憩については、医師等が通勤の混雑や職場の作業を詳しく知らず、具体的な指導がないことがあります。その場合も、本人から申し出があれば、事業主は通勤事情や作業状況を踏まえて適切に対応するよう、資料は求めています。産業保健スタッフや男女雇用機会均等推進者に相談する方法も例に挙げられています。
労働基準法の母性保護と、不利益取扱いの禁止
厚生労働省の資料は、労働基準法の母性保護規定として、妊娠中の女性が請求した場合の軽易な業務への転換(第65条第3項)、妊産婦の時間外労働・休日労働・深夜業をさせないこと(第66条)などを挙げています。いずれも、対象の女性から請求があった場合の制度です。
均等法第9条第3項は、妊娠したことや出産したことなどを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。第9条第4項により、妊娠中と出産後1年を経過しない女性労働者への解雇は、妊娠等を理由とする解雇でないことを事業主が証明しない限り、無効とされます。
このページの範囲と、あわせて確認するページ
このページが確認したのは、均等法第9条・第17条・第18条と、厚生労働省の資料です。個々の職員にどの措置が必要か、医師等の指導の内容に対応できるかは判断しません。具体的な対応は、本人と話し合い、社会保険労務士か都道府県労働局に確認してください。
産前産後の休業は訪問介護員の産前産後休業で、出産後の育児時間は育児時間と生理休暇で、育児休業などは育児・介護休業の義務で確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 妊娠の報告を受けたら、健康診査や保健指導を受ける時間をどう確保するかを本人と話し合って決める。訪問の予定が入っている日は、勤務表を組み替える方法も書いておく
- 医師等の指導内容を、母健連絡カードなどで本人から確認する。指導が具体的でない場合も、通勤事情や作業状況を踏まえて対応する。企業内の産業保健スタッフや男女雇用機会均等推進者がいれば相談する
- 担当する利用者と訪問内容を見直す。厚生労働省の資料が腰に負担のかかる作業の例に挙げる、要介護者を抱える動作や中腰の作業を避ける、訪問件数や移動の負担を減らすといった措置を、候補として書き出す
- 決めた措置を本人に速やかに明示し、書面に残す。妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いにならないかを点検し、判断に迷う点は社会保険労務士か都道府県労働局に確認する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(男女雇用機会均等法)「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第9条・第17条・第18条」(確認日 2026-10-13)
- 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト「妊娠中の女性労働者への対応」」(確認日 2026-10-13)