運営 / 更新 2026-10-12
訪問介護員の時給と最低賃金:移動時間・記録時間を含めた時間額の確認方法
訪問介護員の賃金が最低賃金を下回っていないかは、利用者宅でサービスをしている時間だけでなく、労働時間に当たる移動時間や記録の作成時間も含めた時間額で確かめます。下回る部分の契約は無効になります。この記事は、最低賃金法と厚生労働省の通知・特設サイトを、2026-10-12に確認した範囲で整理します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の事業者が、訪問介護員の賃金が地域別最低賃金以上かを、移動時間や記録時間を含めた労働時間と比較に入れる賃金の範囲で確認する方法を、最低賃金法と厚生労働省の通知で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、訪問介護員の最低賃金チェック表(職員ごとの賃金の構成・比較に入れる賃金・所定労働時間・時間額への換算結果・事業所のある都道府県の地域別最低賃金との比較・確認日)を作成できる状態を目指します。
最低賃金を下回る契約の効力と罰則(最低賃金法第4条・第40条)
最低賃金法第4条は、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないと定めています。最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になり、無効になった部分は最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます。本人が同意していても、パートや登録ヘルパーという呼び方であっても同じです。
厚生労働省の特設サイトによると、地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など、雇用形態や呼称に関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。地域別最低賃金に違反した使用者には、同法第40条で50万円以下の罰金が定められています。
地域別最低賃金の額と発効日は都道府県ごとに違い、毎年改定されます。令和8年度の額と発効日は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で事業所のある都道府県の行を確認します。この記事では個別の額は転記しません。
時間額に含める労働時間:移動時間と記録の作成時間
厚生労働省の通知「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」は、訪問介護の業務に直接従事する時間以外を労働時間としていない事業所があると指摘したうえで、賃金はいかなる労働時間についても支払われなければならないと述べています。労働時間に応じて賃金を計算するときは、訪問介護の業務に直接従事する時間だけでなく、労働時間に当たる移動時間などを通算した時間数で計算するよう求めています。
通知は、事業場・集合場所・利用者宅の間の移動で、使用者が業務のために必要な移動を命じ、その時間の自由な利用が労働者に保障されていないときは、移動時間が労働時間に当たると説明しています。業務報告書などの作成も、介護保険制度や業務規程で義務づけられ、使用者の指揮監督のもとで行うときは労働時間です。待機や研修が労働時間に当たる場合の考え方も同じ通知にあり、個別の時間が労働時間に当たるかは、訪問介護員の労働時間の整理で確認します。
つまり、サービス提供の時間だけに時給を払い、移動時間を無給にしているときは、実際に働いた時間の全体で時間額を計算し直すと、地域別最低賃金を下回る場合があります。通知は、直接従事する時間とそれ以外の時間の賃金水準は、最低賃金額を下回らない範囲で、労使の話し合いで決めるものだとしています。
比較に入れる賃金と入れない賃金、月給・日給の時間額への換算
最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。最低賃金法第4条第3項と施行規則第1条、特設サイトによると、臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当・通勤手当・家族手当は、比較から除きます。通知も、事業場が実費の弁償として払う旅費や交通費は、労働の対価ではないため、比較の対象に入れないと述べています。
時間給の職員は、時間給をそのまま地域別最低賃金の時間額と比べます。日・週・月で賃金を定めている職員は、施行規則第2条により、その金額を、1日・1週・1か月の所定労働時間数で割った時間額に換算して比べます。所定労働時間が日や週、月ごとに違うときは、1週間の1日平均、4週間の1週平均、1年間の1か月平均の所定労働時間数を使います。
基本給が時間給で、職務手当が月額のように、賃金が複数の形で構成されているときは、通知が示すとおり、それぞれを時間当たりの金額に直して合計し、その合計を地域別最低賃金と比べます。サービス提供1回ごとの単価で賃金を定めるなど、出来高払制その他の請負制に当たる場合は、施行規則第2条第1項第5号により、賃金算定期間の賃金の総額を、その期間の総労働時間数で割って時間額を出します。1回ごとの単価払いがこの区分に当たるかは条文や通知に直接の記載がないため、個別の契約の内容をもとに労働基準監督署などに確認します。
| 除く賃金 | 具体例 |
|---|---|
| 臨時に支払われる賃金 | 結婚手当など |
| 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 | 賞与など |
| 所定労働時間を超える労働の賃金 | 時間外割増賃金など |
| 所定労働日以外の労働の賃金 | 休日割増賃金など |
| 午後10時から午前5時までの労働の賃金のうち通常の計算額を超える部分 | 深夜割増賃金など |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 | 特設サイトが除く賃金として並べて示す手当 |
事業所での確認の手順と、このページが判断しないこと
確認は、職員ごとの賃金の構成を書き出し、比較に入れる賃金だけを選び、時間額に直して、事業所のある都道府県の地域別最低賃金と比べる順で行います。厚生労働省は、記入して確かめられる最低賃金のセルフチェックシートを出しています。地域別最低賃金が改定されたら、月給の職員も含め、発効日以降の賃金が新しい額を下回らないかを全職員について確認し直します。
最低賃金の減額の特例は、精神または身体の障害で著しく労働能力が低い人、試みの使用期間中の人など、5つの区分に限られ、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることが条件です。許可を受けないまま最低賃金を下回る額を払うことはできません。訪問介護員にこの特例が使えるかは、所轄の労働基準監督署か都道府県労働局に確認します。
このページは、下回る場合の差額の計算や過去分の支払い、減額の特例許可の可否、個別の移動時間が労働時間に当たるかを判断しません。賃金の定め方の全体は雇入れ時の労働条件の明示と賃金台帳、割増賃金の計算は訪問介護事業所の割増賃金、登録ヘルパーの契約の形は登録ヘルパーの雇用の整理も参照します。
時間額の確認結果を事業計画の人件費に反映する
移動時間や記録の作成時間を労働時間に含めて時間額を計算し直すと、同じ賃金総額でも時間あたりの金額は下がり、最低賃金との差を確かめる必要が出ます。確認のうえで時給や有給時間を見直したときは、事業計画ツールの時給者の有給時間・サービス提供時間・時給へ入力し直し、営業損益と損益分岐の訪問件数がどう動くかを見ます。
ツールは最低賃金との比較や労働時間の該当性を判定しません。判定は、この記事の手順で確認した結果を入力します。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 事業所のある都道府県の地域別最低賃金の額と発効日を、厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認し、チェック表の先頭に確認日とあわせて記録する。改定のたびに入れ替える
- 職員ごとに、時間給・日給・月給など賃金の定め方を分けて一覧にし、通勤手当・家族手当・精皆勤手当、時間外・休日・深夜の割増賃金、賞与、臨時に支払う賃金は比較から除いて、比較に入れる賃金だけを書き出す
- 月給や日給の職員は、比較に入れる賃金を所定労働時間で割って時間額にする。移動時間や記録の作成時間が労働時間に当たるときは、その時間も所定労働時間に含めて計算し、計算式と時間数を残す
- 時間額が地域別最低賃金を下回る職員がいるときは、賃金の見直しを決めて記録し、減額の特例許可を使う場合は許可を受けた書類を保管する。判断に迷うときは、社会保険労務士や労働基準監督署に確認した日と内容を残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(確認日 2026-09-22)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「最低賃金法(第4条 最低賃金の効力・第40条)と最低賃金法施行規則(第1条 算入しない賃金・第2条 換算)」(確認日 2026-10-12)
- 厚生労働省(最低賃金特設サイト・地域別最低賃金の全国一覧)「ポイント!最低賃金(適用される対象者は?・対象となる賃金は?)と令和8年度地域別最低賃金の全国一覧」(確認日 2026-10-12)