運営 / 更新 2026-10-11

訪問介護の雇入れ時の労働条件明示と労働者名簿・賃金台帳(保存3年)

訪問介護員を雇い入れるときは、労働基準法第15条により、賃金や労働時間などの労働条件を明示します。一部の事項は書面で渡す必要があります。あわせて、事業所ごとに労働者名簿と賃金台帳を備え、賃金を払うたびに台帳へ記入し、保存期間は当分の間3年です。

この記事で決めること

訪問介護事業者がヘルパーを雇い入れるときに、労働基準法第15条と同法施行規則第5条で何を書面で明示するかと、労働者名簿・賃金台帳の記載事項・保存期間を、厚生労働省の訪問介護労働者向け通達の勤務表型の扱いとあわせて確認できるようにするための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、雇入れ書類の整備表(労働者ごとの労働条件通知書の交付日・名簿への記入日・賃金台帳の記入月・退職日と保存期限)を作成できる状態を目指します。

結論:雇入れ時に書面で明示し、事業所ごとに名簿と賃金台帳を備えて3年保存する

労働基準法第15条第1項は、労働契約を結ぶときに賃金、労働時間その他の労働条件を明示するよう定めています。賃金・労働時間などの厚生労働省令で定める事項は、省令で定める方法で明示します。その方法は、施行規則第5条第4項により書面の交付が原則です。

第107条は労働者名簿、第108条は賃金台帳を、それぞれ各事業場ごとに調製するよう定めています。訪問介護の事業所は、通常この事業場にあたると考えられます。賃金台帳は賃金を支払うたびに遅滞なく記入します。

第109条は名簿・台帳などの保存を5年間と定めていますが、附則第143条第1項が、当分の間は3年間とすると定めています。訪問介護労働者について厚生労働省が出した平成16年8月27日の通達(基発第0827001号)も、名簿と台帳を3年間保存するよう求めています。

雇入れ時に明示する事項と書面で渡す事項

次の表は、施行規則第5条が定める明示事項のうち、訪問介護員の雇入れで主に確認する項目を並べたものです。書面で渡す必要があるのは、第1号から第4号までの事項(昇給を除く)と、表の最後の行の無期転換に関する事項です。労働者が希望した場合は、ファクシミリや、出力して書面にできる電子メール等でも構いません。

有期の契約を更新する場合は、その都度、改めて労働条件を明示する必要があると、通達は述べています。労働日と次の労働日の間が空くことがある非定型的パートタイムヘルパーには、その間も労働契約が続いているのかを明確にするため、契約期間の定めの有無を示すよう、通達が求めています。

雇入れ時に明示する事項(労働基準法施行規則第5条・厚生労働省通達。2026年10月11日確認)
明示する事項書面での交付訪問介護員の雇入れで書くこと
労働契約の期間(第1号)・更新の基準(第1号の2)必要期間の定めの有無。有期なら期間と、更新する場合の基準(更新の上限があれば上限も)
就業の場所・従事すべき業務(第1号の3)必要就業の場所と業務の変更の範囲を含めて書く。勤務表で決まる場合は、勤務の種類ごとの考え方を示し、関係する就業規則の条項名と契約時点の勤務表を添えれば足りる(通達)
始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)必要労働日と始業・終業の時刻・休憩が勤務表で決まる場合は、上の行と同じく、考え方・就業規則の条項名・契約時点の勤務表で示せる(通達)。休日・休暇は通達に定めがなく、通常どおり書く
賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期(第3号)必要(昇給を除く)賃金の種類、締切日と支払日、支払方法。昇給は書面でなく口頭でもよい
退職(解雇の事由を含む)(第4号)必要退職の手続や解雇の事由。就業規則に定めがあれば、その条項名
賞与・臨時の賃金、最低賃金額(第5号)など(第4号の2〜第11号)定めがある場合に明示(書面は不要)定めをする場合に限り明示する事項。定めがなければ明示は不要
無期転換申込権が生じる有期契約の場合の申込みに関する事項など(第5項・第6項)必要その契約期間内に無期転換の申込みができることになる有期契約を結ぶときに、申込みに関する事項と無期契約の労働条件を、書面事項に加える

労働者名簿と賃金台帳に書く事項

労働者名簿は、法第107条が氏名・生年月日・履歴を、施行規則第53条が性別・住所・従事する業務の種類・雇入の年月日・退職の年月日とその事由・死亡の年月日とその原因を挙げています。常時30人未満の事業では、従事する業務の種類の記入は不要です。日日雇い入れられる者は、名簿を作る対象に含まれません。

賃金台帳は、施行規則第54条第1項が労働者各人別の記入を求めています。通達は、訪問介護労働者の労働時間数を業務報告書などで把握している場合に、使用者が労働者に、労働時間の実態を正しく記録して適正に報告するよう十分に説明することを求めています。

労働者名簿・賃金台帳の記入事項(労働基準法第107条・第108条、施行規則第53条・第54条。2026年10月11日確認)
書類記入する事項記入の時期
労働者名簿(様式第19号)氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類(常時30人未満の事業は不要)、雇入の年月日、退職の年月日と事由、死亡の年月日と原因雇入れ時に整える(条文は作成の時期を明示していない)。変更があれば遅滞なく訂正する
賃金台帳氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給や手当など賃金の種類ごとの額、賃金の一部を控除した場合はその額賃金を支払うたびに遅滞なく

保存する期間と数え始めの日

第109条は、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存の対象にしています。期間は5年ですが、附則第143条第1項により、当分の間は3年です。数え始める日は、施行規則第56条が書類ごとに定めています。

労働条件通知書の控えが「雇入れに関する書類」に当たるかは、条文からは読み取れません。同じ期間、退職の日から保存しておく運用が考えられますが、扱いに迷うときは労働基準監督署に確認してください。

保存期間の数え始めの日(労働基準法第109条・附則第143条・施行規則第56条。2026年10月11日確認)
書類数え始める日保存期間
労働者名簿労働者の死亡、退職又は解雇の日当分の間3年(本則は5年)
賃金台帳最後の記入をした日(賃金の支払期日がそれより遅いときは支払期日)当分の間3年(本則は5年)
雇入れ又は退職に関する書類労働者の退職又は死亡の日当分の間3年(本則は5年)
賃金その他労働関係に関する重要な書類その完結の日(賃金の支払期日がそれより遅いときは支払期日)当分の間3年(本則は5年)

条文と通達で確認できない点

労働条件通知書の様式は、条文では決まっていません。この記事では、書面に入れる事項を整理しただけで、様式を定めたものではありません。「当分の間」の3年がいつまで続くかは、この記事では確認していません。

ここで引いた通達は平成16年のもので、その後に施行規則の項の番号が変わった箇所があります。この記事の表は、e-Govの現行条文を基にしています。個別の労働条件が法令に適合しているかの判断は、社会保険労務士や労働基準監督署に確認してください。

ほかの記事との違い

移動時間や待機時間が労働時間に当たるかと賃金の払い方は、雇用・勤怠と訪問介護の移動時間で確認できます。登録ヘルパーの雇用契約の結び方と勤務表の扱いは、訪問介護の登録ヘルパーの雇用契約・勤務表・移動時間で確認できます。

採用から定着までの計画は訪問介護員の採用・研修・定着計画、毎年の労務手続の期限は訪問介護事業所が毎年行う労務・税務手続きの月別期限(年度更新・算定基礎届・法定調書)で確認できます。

就業規則の作成と届出

雇入れ時に就業規則の条項名を示すときの前提になる、就業規則の作成・届出・周知の手順は、訪問介護事業所の就業規則と36協定:作成・届出が必要な人数、意見聴取、周知の方法で確認できます。

年次有給休暇の管理簿

労働者名簿・賃金台帳とあわせて調製できる年次有給休暇管理簿の記載事項と保存期間は、訪問介護事業所の年次有給休暇:付与日数、年5日の時季指定義務、年次有給休暇管理簿で確認できます。

賃金台帳と割増賃金

賃金台帳に書く時間外・休日・深夜の労働時間と、その割増賃金の率の基準は、訪問介護事業所の割増賃金:時間外・休日・深夜の割増率と、計算の基礎に入れない手当で確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 雇い入れる日までに、書面で明示する事項(契約期間、更新の基準、就業の場所と業務、始業・終業の時刻など、賃金、退職)を労働条件通知書にまとめ、交付日を記録する
  2. 勤務表で働く日と時間が決まるヘルパーには、勤務の種類ごとの考え方と関係する就業規則の条項名を示し、契約時点の勤務表を添えて交付する
  3. 事業所ごとに労働者名簿を作って氏名・生年月日・履歴・住所・雇入れの年月日などを記入し、変更があれば遅滞なく直す
  4. 賃金を払うたびに賃金台帳へ労働日数・労働時間数・賃金の種類ごとの額を記入し、名簿は退職日から、台帳は最後の記入日から数えた保存期限を一覧に残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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