運営 / 更新 2026-10-13
65歳以上の訪問介護員の雇用保険マルチジョブホルダー制度:要件・本人の申出・事業主の証明
訪問介護では、複数の事業所で短い時間ずつ働く65歳以上の職員がいます。1つの事業所の週の所定労働時間が20時間未満でも、2つの事業所の合計で条件を満たせば、本人の申出で雇用保険に入れる制度があります。このページは、厚生労働省の資料で、要件、本人が行う手続、事業主に求められる証明を整理します。
この記事で決めること
65歳以上の訪問介護員を雇う事業所の経営者や管理者が、雇用保険マルチジョブホルダー制度の加入要件、手続を本人が行う仕組み、事業主に求められる証明、申出を理由とする不利益取扱いの禁止、保険料の納付開始を、厚生労働省の資料で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、マルチジョブホルダー対応票(対象になり得る65歳以上の職員、週の所定労働時間と雇用見込み、本人から依頼を受けたときの証明の担当者と期限、保険料の扱い)を作成できる状態を目指します。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の仕組み
厚生労働省の事業主向けリーフレットによると、従来の雇用保険は、主たる事業所の週所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みなどの要件を満たす場合に適用されます。これに対し、マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、2つの事業所の勤務を合計して要件を満たす場合に、本人の申出で特例的にマルチ高年齢被保険者になれる制度です。
リーフレットは2022年1月1日の制度開始時の案内です。令和6年の雇用保険法等の改正で、一般の雇用保険の適用要件は、令和10年10月1日から週所定労働時間「20時間以上」が「10時間以上」に変わります。この改正がマルチジョブホルダー制度にどう影響するかは確認した資料からは分からないため、現行の取扱いは、厚生労働省のQ&Aや管轄のハローワークで確認してください。
加入の要件(本人の申出が必要で、任意脱退はできない)
要件は3つで、すべてを満たす必要があります。複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること、2つの事業所の週所定労働時間(各事業所では5時間以上20時間未満)を合計して20時間以上であること、2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であることです。
通常の雇用保険と違い、適用には本人の申出が必要です。加入後の取扱いは通常の被保険者と同じで、任意に脱退することはできません。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 年齢と事業所数 | 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者 |
| 週の所定労働時間 | 2つの事業所の合計が20時間以上(各事業所は週5時間以上20時間未満) |
| 雇用見込み | 2つの事業所のそれぞれが31日以上 |
| 申出 | 本人がハローワークに申し出た日から被保険者になる |
手続は本人が行い、事業主は証明に協力する
通常の雇用保険は事業主が手続きしますが、この制度は、適用を希望する本人が手続を行います。事業主は、本人からの依頼に基づき、雇用の事実や所定労働時間などの証明を行い、本人が2つの事業所の書類を揃えてハローワークに申し出ます。電子申請での届出は行っていません。
厚生労働省のQ&Aは、要件に該当する人が申出を行ってマルチ高年齢被保険者となることは、雇用保険法に定められた本人の権利であり、記載依頼には必ず対応してほしいとしています。事業主の協力が得られない場合は、本人が記載できる箇所を記載した届出様式を持参して、ハローワークに相談できます。
不利益取扱いの禁止と、保険料の納付
リーフレットは、マルチジョブホルダーが申出を行ったことを理由として、解雇、雇止め、労働条件の不利益変更などの不利益な取扱いを行うことは法律上禁じられていると注意しています。マルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から、雇用保険料の納付義務が発生します。
マルチ高年齢被保険者が失業した場合は、一定の要件を満たせば、高年齢求職者給付金(基本手当日額の30日分または50日分の一時金)を受給できるようになるとされています。受給できるかどうかは本人とハローワークの確認になるため、事業所は個別の判断をしません。
このページの範囲と、あわせて確認するページ
このページが確認したのは、厚生労働省の事業主向けリーフレット(2022年1月開始時)とQ&Aです。個々の職員が要件を満たすか、給付を受けられるかは判断しません。具体的な手続は、管轄のハローワークで確認してください。
通常の雇用保険の加入は雇用保険の加入で、健康保険・厚生年金の加入は社会保険の加入で、高齢の職員の雇用は高年齢者の就業確保で確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 65歳以上で、ほかの事業所でも働いている職員を把握し、自社での週の所定労働時間と雇用見込みを書き出す。自社の所定労働時間が週5時間以上20時間未満か、雇用見込みが31日以上かを、雇用契約書で確認する
- 本人から、雇用の事実や所定労働時間などの証明の依頼があったときの担当者と対応の手順を決める。雇用保険法に定められた本人の権利のため、依頼に必ず対応することを前提にする
- 本人が申出を行った日から被保険者になり、資格取得日から保険料の納付義務が発生することを確認し、給与計算で保険料を控除する準備を整える。電子申請ができない手続であることも、本人に伝える内容として書く
- 申出を理由に、解雇、雇止め、労働条件の不利益な変更を行わないことを、管理者や関係者に周知する。判断に迷う点は、管轄のハローワークか社会保険労務士に確認する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「事業主の皆さまへ「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します(2022年1月1日スタート)」(確認日 2026-10-13)
- 厚生労働省「Q&A〜雇用保険マルチジョブホルダー制度〜」(確認日 2026-10-13)
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」(確認日 2026-10-13)