運営 / 更新 2026-10-27
訪問介護事業所を売却・譲渡するときの指定手続き:事業譲渡と株式譲渡の違い
訪問介護事業所を売る側が出す届出は、売り方で変わります。事業譲渡では売る側が廃止届を出し、買う側が新規の指定を受けます。法人ごと譲る場合は運営法人が同じなので、確認できた範囲では代表者などの変更届で、確認できなかった点は分けて書きます。
結論:事業譲渡は廃止届と新規指定、法人ごとの譲渡は変更届が中心
事業譲渡なら、売る側は廃止の届出、買う側は新規指定が基本です。指定は、居宅サービス事業を行う者の申請により事業所ごとに出されるためです(介護保険法第70条第1項)。大阪府箕面市のよくある質問も、運営形態を変えずに続ける場合でも、旧法人が廃止、新法人が新規指定の手続きを行うと案内しています。
法人は同じまま、代表者や出資者が替わる場合は、事業所の運営法人は替わりません。なお箕面市は、有限会社から株式会社への組織変更のように法人格が同一のままなら、変更届で差し支えないと案内しています。代表者が替わるときの変更届は、次の節で説明します。
この記事で決めること
訪問介護事業所を売却・譲渡する運営者が、事業譲渡と株式譲渡で指定の手続きがどう変わるか、売る側が出す届出と期限、利用者への対応を確かめるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、売却・譲渡の方式ごとの届出と日程を並べた手続き管理表を作成できる状態を目指します。
売り方ごとの手続きの違い
次の表は、確認できた根拠と、確認できなかった点を分けて並べたものです。個別の取引がどれに当たるかは、指定権者が判断します。
| 売り方 | 売る側の手続き | 買う側の手続き | 確認できた根拠 |
|---|---|---|---|
| 事業譲渡(事業所の運営を別の法人へ移す) | 廃止の届出(廃止の日の1か月前まで) | 新規の指定申請(廃止日の翌日が開始日になるよう調整) | 介護保険法第75条第2項、箕面市のよくある質問 |
| 法人格が同じままの組織変更 | 廃止も新規指定も不要。変更届で足りるとされる | なし | 箕面市のよくある質問 |
| 法人ごと売る(株式の譲渡) | 運営法人が替わらない場合の代表者などの変更は、変更届(10日以内) | なし | 株式譲渡そのものを名指しした公的な案内は確認できていない |
事業譲渡で売る側が出す届出と日程
廃止の届出は、廃止の日の1か月前までに、指定権者へ出します(介護保険法第75条第2項)。施行規則第131条第4項は、届出に書く事項として、廃止する年月日、廃止の理由、現にサービスを受けている者に対する措置を挙げています。休止ではなく廃止であることと、買い手に事業を引き継ぐ予定であることを、指定権者に早めに伝えて日程を確認します。
買う側の新規指定は、廃止の日の翌日が事業の開始日になるよう調整するのが基本です(箕面市の案内)。売る側の廃止の日と、買う側の指定の日がずれると、利用者のサービスに空白が生じます。譲渡契約の日、廃止の届出の日、廃止の日、買い手の開始日を、1つの日程表に並べて管理します。
届出の様式、提出方法、新規指定の受付期間は、指定権者ごとに違います。休止・廃止の届出の運用は訪問介護事業所の閉鎖手続き(休止・廃止・再開届)を期限から確認するで、買い手側の日程と書類の簡略化は訪問介護事業所を引き継ぐ・法人形態を変えるときの指定手続き(廃止と新規指定)で確認できます。
利用者への説明と、引継ぎの義務
廃止の届出をした事業者には、利用者への引継ぎの義務があります(介護保険法第74条第5項)。届出の日前1か月以内にサービスを受けていた利用者のうち、廃止の日以後も同じサービスを希望する人に、他の事業者などとの連絡調整その他の便宜の提供を行う義務です。事業譲渡で買い手が事業を続ける場合も、売る側の法人が廃止の届出をする以上、この義務の対象になります。
利用契約の扱いは、引き継ぎの形で違います。箕面市は、事業譲渡では利用者への説明と個別の契約の切り替えを滞りなく進めるよう求めています。吸収合併で契約の再締結が不要となる例は事務連絡にありますが、事業譲渡に当てはまるかは確認できていません。
代表者が替わるときの変更届(10日以内)
運営する法人が同じまま代表者が替わるときは、変更の届出が必要です。介護保険法第75条第1項は、届出事項に変更があったときは10日以内に届け出ると定めています。施行規則第131条第1項第1号は、訪問介護の届出事項として、第114条第1項第2号の申請者の名称と主たる事務所の所在地、代表者の氏名・生年月日・住所・職名、同項第4号の登記事項証明書(指定に係る事業に関するものに限る)を含めています。
箕面市は、変更の登記が届出の期限に間に合わない場合、履歴事項全部証明書以外の書類を先に出し、証明書は登記後に速やかに出す方法を案内しています。この取扱いは市の案内であり、全国共通かどうかは確認していません。
加算の実績は、売り方によって引き継げるとは限らない
過去の実績が必要な加算について、厚生労働省の事務連絡(令和2年8月3日)は、吸収合併や吸収分割などで事業所が実質的に継続して運営されていると認められる場合に、実績を通算できるとしています。訪問介護の特定事業所加算の重度要介護者の受入割合は、別添の抄にある吸収合併の例です。
この事務連絡が扱うのは合併や分割で、事業譲渡での実績の通算は確認できていません。買い手が加算を算定できる時期は、買い手が指定権者に確認します。売る側は、譲渡の条件に加算を前提にした価格を入れる前に、確認が済んでいるかを買い手と共有してください。
この記事で確認した範囲
法令は、介護保険法第70条・第74条・第75条と施行規則第114条・第131条を、e-Govの本文で2026年10月27日に確認しました。
公的な案内は、箕面市のよくある質問と、厚生労働省の事務連絡(介護保険最新情報Vol.862)を原文で確認して書いています。
株式譲渡そのものの指定上の扱い、事業譲渡での契約と加算実績の取扱い、事業所番号の扱い、指定権者ごとの書類と期限は確認できていません。税務・登記・労務、譲渡契約の内容は扱いません。指定権者の窓口と、それぞれの専門家へ早めに相談してください。
次に知りたいこと:廃止後の手続きと指定の更新
売る側の廃止の届出と利用者への引継ぎは訪問介護事業所の閉鎖手続き(休止・廃止・再開届)を期限から確認する、買う側の新規指定と法人形態ごとの違いは訪問介護事業所を引き継ぐ・法人形態を変えるときの指定手続き(廃止と新規指定)にあります。
売却せずに事業を続ける場合の指定の有効期間は訪問介護の指定更新で確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 売る方式が事業譲渡か、法人ごとの株式の譲渡かを整理し、運営する法人が替わるかを書く
- 所在地の指定権者へ早めに相談し、廃止届と買い手の新規指定、または代表者の変更届のどれが要るかを確認する
- 事業譲渡なら、廃止の日の1か月前の届出日と、廃止日の翌日の買い手の開始日を同じ日程表に並べる
- 届出日前1か月以内の利用者について、引継ぎ先との連絡調整と契約の切り替えの説明を記録する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「介護保険法(第七十条 指定居宅サービス事業者の指定)」(確認日 2026-10-20)
- 厚生労働省「介護保険法(第七十五条 変更の届出等)」(第75条第1項(変更の届出・10日以内)・第2項(廃止・休止の届出・1月前まで))(確認日 2026-10-25)
- 大阪府箕面市「よくある質問【FAQ】(介護サービス事業者関係)」(確認日 2026-10-07)
- 厚生労働省(箕面市掲載のPDF)「介護保険最新情報Vol.862 事業所の吸収分割等に伴う事務の簡素化について(令和2年8月3日)」(1 吸収分割に伴う指定の取扱い(表1)、2 必要な書類(表2)、別添1の例(手続・利用者・介護報酬・財産処分))(確認日 2026-10-07)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「介護保険法(第75条の2 都道府県知事等による連絡調整又は援助)」(第75条の2)(確認日 2026-10-25)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「介護保険法施行規則 第114条第1項・第131条第1項(訪問介護の変更の届出事項)」(第131条第1項第1号・第114条第1項第7号)(確認日 2026-10-10)