運営 / 更新 2026-10-15
訪問介護の代表者・役員の労災特別加入:対象の人数・事務組合への委託・給付基礎日額
労災保険は、事業所に雇われる労働者を守る制度です。自分もヘルパーとして訪問する代表者や、事業を手伝う家族・役員は、原則として対象になりません。この人たちを対象に加える仕組みが特別加入で、このページは労災保険法と施行規則、厚生労働省の「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」をもとに、対象になる事業主の人数、労働保険事務組合への委託、申請の流れ、給付基礎日額、補償の範囲を整理します。
この記事で決めること
自分もヘルパーとして訪問する訪問介護の代表者や、家族・役員が事業に従事する事業者が、労災保険の特別加入の対象になる事業主の人数、労働保険事務組合への事務委託、申請の流れ、給付基礎日額の選び方、補償される範囲を法令と厚生労働省のしおりで確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、労災保険の特別加入の確認表(事業主と家族・役員ごとの氏名と事業での役割、訪問や事務などの従事する業務の内容、事業全体の常時使用する労働者数、事務委託先の労働保険事務組合、希望する給付基礎日額)を作成できる状態を目指します。
代表者や家族従事者は、特別加入をしないと労災保険の対象にならない
労働者が仕事中や通勤中にけがをしたときの補償は、労災保険から出ます。事業主や、事業主と一緒に働く家族は、労働者ではないため、そのままでは対象になりません。
労災保険法第33条は、この人たちが加入できる特別加入の入口を定めています。対象は、一定の人数以下の労働者を使う事業の事業主(法人の場合は代表者)で、労働保険事務を労働保険事務組合に委託している人と、その事業に従事する労働者以外の人(家族従事者や代表者以外の役員など)です。
労働者が仕事でけがをしたときの報告は「訪問介護員の労働災害時に出す労働者死傷病報告:休業日数別の期限と電子申請」にあります。このページは、労働者でない人を守る側を扱います。
加入できるのは、常時使用する労働者が省令の人数以下の事業主
施行規則第46条の16は、人数の上限を定めています。常時300人以下が原則です。金融業・保険業・不動産業・小売業を主たる事業とする事業主は50人以下、卸売業・サービス業を主たる事業とする事業主は100人以下です。
厚生労働省のしおりによると、業種の区分は原則として日本標準産業分類によります。訪問介護がどの区分に入るかは、このページでは確認していません。ただし、使っている労働者が常時50人以下であれば、どの区分でも上限の範囲内です。
通年で雇っていなくても、1年に100日以上労働者を使っていれば、常時使用しているものとして扱われます。しおりは、1年に労働者を使う日数が100日未満の場合、中小事業主等としての特別加入はできないと説明しています。
| 主たる事業 | 常時使用する労働者数の上限 |
|---|---|
| 金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
| 卸売業・サービス業 | 100人以下 |
| 上記以外 | 300人以下 |
申請は労働保険事務組合を通じて出し、承認は文書で通知される
特別加入の申請書は、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に出します(施行規則第46条の19)。申請書には、加入する人の氏名、従事する業務の内容、労働保険事務組合へ事務を委託した日などを書き、委託した日は労働保険事務組合の証明を受けます。しおりは、労働保険事務組合を通じて提出するよう案内しています。
労働局長の承認は、申請の日の翌日から30日以内で、申請者が加入を希望する日になります。承認するかしないかは、文書で通知されます。
しおりは、加入の範囲を次のように示しています。原則として、事業主本人のほか、家族従事者など労働者以外で業務に従事している人全員をまとめて申請します。病気療養中や高齢などで実際には事業に従事していない人は、まとめた申請から外せます。
承認を受けたあとに、従事する人の氏名や業務の内容が変わったとき、新しく加入の対象になる人や対象でなくなる人が出たときは、遅滞なく文書で届け出ます。災害が起きたあとに変更届を出しても、すでに起きた災害の給付には反映されません。
給付基礎日額は16段階から選び、保険料の計算の基礎になる
給付基礎日額は、保険料と、休業の給付などの金額を計算する基準になる金額です。施行規則第46条の20第1項は、次の16段階から定めると規定しています。
しおりは、年間保険料を「給付基礎日額×365」に事業ごとに決まる保険料率を掛けて計算すると説明しています。給付基礎日額を低くすると保険料は安くなりますが、休業の給付なども少なくなります。
しおりの例では、保険料率が1000分の12のとき、給付基礎日額25,000円で年間109,500円、3,500円で年間15,324円です。3,500円の例が単純な掛け算の15,330円と合わないのは、加入者全員の保険料算定基礎額の合計で千円未満を切り捨てるためで、年度の途中で加入したときは加入月数に応じて計算します。訪問介護の保険料率は、このページでは確認していません。
給付基礎日額は、事前の申請で変えられます。3月2日から3月31日の間に変更申請書を出すと翌年度から、労働保険の年度更新の期間中は当年度の分から変更できます。災害が起きる前に申請することが前提です。
| 区分 | 給付基礎日額 |
|---|---|
| 最低の3段階 | 3,500円・4,000円・5,000円 |
| 6,000円台から10,000円まで | 6,000円・7,000円・8,000円・9,000円・10,000円 |
| 12,000円から20,000円まで | 12,000円・14,000円・16,000円・18,000円・20,000円 |
| 最高の3段階 | 22,000円・24,000円・25,000円 |
補償されるのは、申請した業務をしている間が中心で、事業主の立場の仕事は除かれる
しおりによると、業務災害として給付されるのは、申請書の「業務の内容」欄に書いた業務のうち、労働者の所定労働時間内に、加入した事業のために行う行為などです。ここから、事業主の立場で行われる業務は除かれます。訪問介護の業務を申請書の業務の内容欄にどう書くかは、労働基準監督署か労働保険事務組合に確認してください。
通勤中の災害は、通勤災害として別に扱われます。しおりは、住居と就業の場所の間の往復などを、合理的な経路と方法で移動することをいうと説明しています。業務の性質を持つ移動は含まれず、経路を逸脱したり中断したりした間は通勤になりません。
同じ事業主が二つ以上の事業を営んでいる場合、一つの事業で特別加入していても、加入していない他の事業の業務で被災したときは保険給付を受けられません。訪問介護とほかの事業を併せて営んでいるときは、事業ごとに加入しているかを確かめます。
移動中の事故を労働者について記録する方法は「訪問介護員の移動中事故:業務災害・通勤災害の確認記録」にまとめています。
このページの範囲と、確認する先
このページが確認したのは、労災保険法第33条、同法施行規則第46条の16・第46条の19・第46条の20、厚生労働省の特別加入制度のしおり(中小事業主等用)の分割版です(2026-10-15に確認)。訪問介護の業種区分と保険料率、労働保険事務組合の会費は確認していません。
加入するかどうか、代表者や役員が労働者として扱われるかの判断は、このページでは行いません。委託できる労働保険事務組合は、所轄の労働基準監督署に問い合わせて探します。労働保険の成立や毎年の手続きは「訪問介護の法人設立後に出す労働保険・社会保険・税務署への届出の期限と提出先」で確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 事業主と、家族従事者や代表者以外の役員など労働者でない人を洗い出し、それぞれが訪問・事務・管理のどの業務に就くかを表に書く
- 常時使用する労働者の人数を数え、省令の人数(金融業・保険業・不動産業・小売業は50人、卸売業・サービス業は100人、それ以外は300人)に収まるか、1年に100日以上使用しているかを確かめる
- 労働保険事務を委託できる労働保険事務組合を労働基準監督署に確認し、委託した日の証明を受けて、特別加入申請書を事務組合経由で出す
- 給付基礎日額を3,500円から25,000円の16段階から選び、承認の通知を受けたら、従事する人が増減したときは遅滞なく変更届を出す運用を決める
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「労働者災害補償保険法(第33条)」(確認日 2026-10-15)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「労働者災害補償保険法施行規則(第46条の16・第46条の19・第46条の20)」(確認日 2026-10-15)
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」(確認日 2026-10-15)