運営 / 更新 2026-10-20
訪問介護員への給与明細の交付義務:記載事項・電子交付の承諾・罰則(所得税法第231条)
給与を払う訪問介護事業所は、所得税法第231条により、ヘルパーに給与等の支払明細書(給与明細)を交付する義務があります。記載事項は施行規則第100条が定め、メールやアプリで渡すときは本人の承諾が要ります。条文で、交付の時期、記載事項、電子での提供の条件、交付しなかった場合の罰則を整理します。
支払明細書の交付義務と交付の時期
給与明細は、会社が任意に出すものではありません。所得税法第231条第1項は、居住者に対し国内において給与等の支払をする者に、給与等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、支払を受ける者に交付するよう求めています。
交付の時期は、所得税法施行規則第100条第1項が「その支払の際」と定めています。条文は雇用形態で区別していないため、登録ヘルパーや短時間のパートへの給与も、給与等の支払にあたるかぎり交付の対象と考えて運用します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の経営者や経理担当者が、登録ヘルパーなどへ給与明細(支払明細書)を交付する義務の有無と、記載事項、メールやアプリで渡す場合の承諾の取り方、交付しなかった場合の罰則を判断するために、所得税法第231条・第242条、施行規則第100条、施行令第356条で確認する。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、給与明細の交付台帳(ヘルパー名簿ごとの交付方法・電子交付の承諾日・申出の有無・交付日の記録)を作成できる状態を目指します。
記載する事項
記載事項は、所得税法施行規則第100条第1項の第1号から第4号に定められています。第3号は還付があったとき、第4号は給与特別控除額を控除したときの記載事項です。
労働基準法の賃金台帳の記載事項とは別の決まりです。賃金台帳と労働者名簿は、訪問介護の雇入れ時の労働条件明示と労働者名簿・賃金台帳で確認できます。
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 第1号 | その支払に係る給与等の金額 |
| 第2号 | その給与等から源泉徴収された所得税の額 |
| 第3号 | 所得税法第191条(過納額の還付)により還付した金額 |
| 第4号 | 租税特別措置法第41条の3の7第3項(令和6年6月以後に支払われる給与等に係る特別控除の額の控除)に規定する給与特別控除額のうち、控除した金額 |
メールやアプリで渡すときの承諾
紙の代わりに電磁的方法で提供するには、支払を受ける人の承諾が必要です。所得税法第231条第2項は、政令で定めるところにより承諾を得て、記載すべき事項を電磁的方法で提供できると定めています。提供したときは、同条第3項により、支払明細書を交付したものとみなされます。
承諾の取り方は、所得税法施行令第356条第1項が定めています。あらかじめ、使う電磁的方法の種類と内容を示し、書面又は電磁的方法で承諾を得ます。
承諾のあとに、提供を受けない旨の申出があったときは、同条第2項により、電磁的方法で提供できません。申出のあと、再び承諾が得られた場合は提供できます。
第231条第2項のただし書は、支払を受ける人の請求があるときは、支払明細書を交付しなければならないとしています。電子で渡している人から紙の求めがあったときは、紙で出します。
交付しなかった場合の罰則
所得税法第242条第7号は、支払明細書を交付しなかった者、偽りの記載をして交付した者、電磁的方法で偽りの事項を提供した者を、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処すると定めています。
同条第8号は、正当な理由なく、書面での交付の請求を拒んだ者や、その支払明細書に偽りの記載をして交付した者も対象にしています。この記事は、個別の事業所への適用を判断するものではありません。
事業所で決めておくこと(運用の例)
次の表は、上の条文に合わせた事業所の運用の例で、国が定めた様式ではありません。控除項目の決まりは、賃金の支払い方の記事(5原則と、口座振込・天引きの条件)で確認できます。
| 決めること | 根拠となる決まり |
|---|---|
| 給与を払う日に、全員の明細を交付する(登録ヘルパーを含む) | 所得税法第231条第1項・施行規則第100条第1項 |
| 金額、源泉徴収した所得税の額を明細に載せる | 施行規則第100条第1項第1号・第2号 |
| 電子で渡す人から、種類と内容を示して承諾を得て、日付を残す | 所得税法施行令第356条第1項 |
| 電子をやめたいという申出があったら、その人には書面で渡す | 施行令第356条第2項・所得税法第231条第2項ただし書 |
確かめた資料と確認できていないこと
この記事は、2026年10月20日に、e-Govで公開されている所得税法第231条・第242条、所得税法施行規則第100条、所得税法施行令第356条を読んで書きました。給与計算ソフトでの具体的な電子交付の手順や、社会保険料の控除額の通知方法は扱っていません。承諾について施行規則第95条の2を準用する同規則第100条第4項も、この記事では読んでいません。
給与明細に何を載せるかの細部は、所轄の税務署や社会保険労務士に確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 給与を払う全員(登録ヘルパーを含む)の名簿に、紙で渡すか電子で渡すかを書き、支払の日に交付する運用になっているかを確かめる
- 明細の様式に、給与等の金額と源泉徴収した所得税の額が載っているか、還付した金額や給与特別控除額の控除があった月に載るかを確かめる
- 電子で渡す人には、使う方法の種類と内容を示して承諾を得た日を記録し、承諾の書面又は電磁的記録を保管する
- 電子をやめたい、紙がほしいという申出や請求があった人は、日付を記録して、その月から紙で交付する。判断に迷う点は所轄の税務署に確認して日付とともに残す
関連ガイドで計画をつなぐ
隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。
よくある質問
迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。
登録ヘルパーにも給与明細を渡す必要がありますか?
所得税法第231条第1項は、居住者に対し国内において給与等の支払をする者に、支払明細書の交付を求めています。条文は雇用形態で区別していません。個別の事情は所轄の税務署に確認してください。
給与明細をメールやアプリで渡してもよいですか?
支払を受ける人の承諾を得れば、電磁的方法で提供できます(所得税法第231条第2項)。承諾を得るときは、あらかじめ使う方法の種類と内容を示します。本人から請求があれば、書面で交付します。
給与明細を交付しないとどうなりますか?
所得税法第242条第7号は、支払明細書を交付しなかった者などを、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処すると定めています。個別の事業所への適用は、この記事では判断しません。
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「所得税法(昭和40年法律第33号)第231条(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)・第242条(罰則)」(第231条第1項〜第3項、第242条第7号)(確認日 2026-10-20)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「所得税法施行規則第100条(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)・所得税法施行令第356条(支払明細書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承諾等)」(施行規則第100条第1項第1号〜第4号、施行令第356条第1項・第2項)(確認日 2026-10-20)