運営 / 更新 2026-10-15
訪問介護員の試用期間:14日を超えたら解雇予告、本採用拒否の条件、最賃の減額特例
訪問介護員を新しく採用したときの試用期間は、法律で長さが決まっているわけではありません。ただし、雇い入れて14日を超えると、試用期間中でも解雇には30日前の予告か予告手当が必要になります。本採用を拒否するときの考え方と、最低賃金を下回れる減額特例の要件もあわせて、公的な資料で整理します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の経営者が、新しく採用した訪問介護員の試用期間について、労働基準法の解雇予告の例外(14日以内)、本採用を拒否するときの厚生労働省の考え方、最低賃金の減額特例の許可の要件を確認し、試用期間の運用を決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、試用期間の運用メモ(試用期間の長さと就業規則・労働契約上の定め、雇入れ日から14日目の日付、本採用の判断基準と面談の記録、最低賃金を下回る賃金にしていないことの確認)を作成できる状態を目指します。
雇入れから14日以内だけ、解雇予告の対象外になる
e-Govの労働基準法によると、第20条は、労働者を解雇しようとするときは少なくとも30日前に予告し、予告しないときは30日分以上の平均賃金を支払うよう定めています。第21条第4号は、「試の使用期間中の者」をこの規定の適用から外していますが、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、適用されます。
つまり、試用期間という名前が付いていても、雇入れから14日を超えたあとに解雇するなら、通常の解雇と同じ予告か予告手当が必要です。就業規則で試用期間を3か月と定めていても、この14日の数え方は変わりません。予告の日数の数え方と予告手当の計算は「訪問介護員を解雇するときの30日前の予告と解雇予告手当(労働基準法第20条)」で確認できます。
| 雇入れからの期間 | 解雇予告・予告手当 | 根拠 |
|---|---|---|
| 14日以内 | 不要(予告の規定の適用外) | 第21条第4号 |
| 14日を超えて引き続き使用 | 30日前の予告、または30日分以上の平均賃金 | 第21条ただし書・第20条第1項 |
本採用を拒否できるかは、理由の合理性で決まる
厚生労働省の個別労働紛争のあっせん事例集(試用期間中の解雇)は、通常の試用期間中の契約関係を、解約権を留保した労働契約がすでに成立していると解されていると説明しています(三菱樹脂事件・最高裁昭和48年12月12日大法廷判決)。
同じ資料によると、試用期間中の解約権の行使は、通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められますが、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と是認されるものでなければなりません。採用の当初には知ることができなかった事実が試用期間中に分かり、そのまま雇い続けるのが適当でないと判断することに客観的な合理性が認められる場合に、解約権の行使が相当とされています。
このため、「試用期間だから理由なく断れる」とは考えないでください。訪問介護員の場合は、訪問先での対応、記録の書き方、時間の守り方など、判断した事実を面談の記録や指導の記録で残しておきます。個別の拒否が有効かどうかは事情で変わるので、このページでは判断せず、労働基準監督署や社会保険労務士、弁護士に確認してください。
解雇を予告したあと、本人から理由の証明書を求められたとき
労働基準法第22条第2項は、労働者が、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、解雇の理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく交付しなければならないと定めています。ただし、予告された日以後に、労働者が解雇以外の事由で退職した場合は、退職日以後は交付する必要がありません。
試用期間中の本採用拒否でも、14日を超えて予告をして解雇する場合は、この請求の対象になり得ます。口頭で理由を伝えただけでなく、書面で渡せるように、判断の根拠にした事実と日付を整理しておくと、説明の食い違いを防げます。
試用期間中でも、最低賃金は下回れない(許可を受けた場合を除く)
最低賃金法第7条第2号は、使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときに、「試の使用期間中の者」について、最低賃金額から一定の率を減額した額で最低賃金の規定を適用すると定めています。許可を受けていなければ、試用期間中でも最低賃金額以上を支払います。
厚生労働省・都道府県労働局の記入要領によると、許可の対象は、試の使用期間中の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に限られます。具体的には、その業種や職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であることと、本採用労働者に比べて試の使用期間中の賃金を著しく低く定める慣行が存在することなどが挙げられています。
許可を受ける期間は必要最小限とし、最長でも6か月です。減額率の上限は20%(最低賃金法施行規則第5条)で、職務の内容や経験などを勘案して決めます。
支払おうとする賃金には、時間外や深夜の手当、家族手当、通勤手当など、最低賃金の対象にならない賃金は含められません。申請書は様式第2号で、記入要領では所轄の労働基準監督署に2部提出するとされています。
訪問介護事業所の賃金が、この許可の条件に当たるかどうかは、このページでは判断しません。試用期間中の時給を最低賃金に近づける前に、管轄の労働基準監督署か都道府県労働局に、許可の要否を確認してください。最低賃金の確認の手順は「訪問介護員の最低賃金の確認方法」で確認できます。
このページの範囲と、確認する先
このページが確認したのは、e-Govの労働基準法第20条・第21条・第22条と最低賃金法第7条、厚生労働省のあっせん事例集「試用期間中の解雇」、最低賃金の減額特例の記入要領(福岡労働局掲載)です(2026-10-15に確認)。
雇用保険や社会保険は、試用期間中でも要件を満たせば加入します。手続きは「訪問介護員の雇用保険の加入要件:週20時間・31日以上の見込みと資格取得届の期限」で確認できます。個別の解雇が有効か、減額特例が認められるかは、所轄の労働基準監督署か専門家に確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 就業規則と労働条件通知書に、試用期間の有無と長さ、試用期間中の賃金と本採用後の賃金、本採用を拒否する場合の考え方が書かれているかを確認し、雇入れ日と14日目の日付を新人ごとに控える
- 本採用の判断基準(訪問先での対応、記録の書き方、時間の守り方など)を事前に書き出し、面談の日と内容、指導した事項を記録して、本採用を拒否するときの理由を後から説明できるようにする
- 雇入れ後14日を超えて雇った訪問介護員を解雇する場合は、30日前の予告か予告手当が必要になるため、解雇する前に所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認し、解雇理由証明書の請求があれば遅滞なく交付する
- 試用期間中の時給が、事業所のある都道府県の最低賃金額を下回っていないか確認し、下回る設定は労働局長の許可がない限りできないため、許可の要否を管轄の労働基準監督署に確認して控えを残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「労働基準法 第20条(解雇の予告)・第21条(解雇予告の適用除外)・第22条(退職時等の証明)」(確認日 2026-10-15)
- 厚生労働省「あっせん事例[9]試用期間中の解雇(厚生労働省・個別労働紛争解決制度)」(確認日 2026-10-15)
- 厚生労働省・福岡労働局「最低賃金の減額の特例許可申請について「試の使用期間中の者」(最低賃金法第7条第2号)(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)」(確認日 2026-10-15)