運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護事業所の生産性向上:厚生労働省ガイドラインの6つの手順と記録の見直し
訪問介護事業所の生産性向上は、厚生労働省が6つの手順(準備・見える化・Plan・Do・Check・Action)で示しています。この記事は、訪問介護の事業者が業務の効率化を考えるときに、ポータルの手順、居宅サービス向けガイドラインにある訪問介護の事例の課題、記録・報告様式の見直しの進め方を確かめ、自社で最初に取り組む1点を決めるための整理です。生産性向上推進体制加算、補助金の要件、特定の製品の比較は扱いません。
訪問介護の資料の位置づけ:専用のガイドラインは確認できず、居宅サービス向けに含まれる
厚生労働省は「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を、サービスの種類ごとの冊子で公開しています。ガイドラインの一覧ページで確認できた範囲では、訪問介護だけを対象にした冊子は見当たらず、訪問介護の事例は居宅サービス向けの冊子に入っています。
令和6年度の改訂で、共通する考え方・取り組み方・ツールの解説は共通冊子にまとめられ、サービス別冊子は事例の部分になりました。一覧ページには、サービス別冊子の内容に変更はないと書かれています。
この記事で本文を読んだのは、ポータルの手順のページと、居宅サービス向けの令和4年度改訂版の本編です。令和6年度改訂版の冊子の本文は読んでいません。
この記事で決めること
訪問介護の事業者が、厚生労働省の介護分野の生産性向上ポータルと居宅サービス向けガイドラインで、改善活動の手順、訪問介護の事例の課題(訪問ルート・記録・情報共有)、記録・報告様式の見直しの進め方を確かめ、自社で最初に取り組む1点を決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、訪問介護事業所の改善活動の計画メモ(取り組む課題1点・課題把握シートで確かめた現状・プロジェクトのリーダーとメンバー・3か月程度の取組期間と終了日・見直す帳票または連絡手段・取組前後で比べる業務時間の測り方)を作成できる状態を目指します。
改善活動の6つの手順:3か月程度の取組を、まず小さな成功から
ポータルは、改善活動を6つの手順で示しています。手順1の準備では、プロジェクトチームを立ち上げて、プロジェクトリーダーを決めます。手順2の見える化では、課題把握シートで現場の課題を洗い出し、業務時間見える化ツールで業務を定量的に把握します。
手順3のPlanでは、解決する課題を絞り込み、取り組む内容と職員の役割を決めて、3か月程度の取組期間を目安に具体的な計画を立てます。手順4のDoでは、まずはとにかく取り組んで試行錯誤を繰り返し、大きな成功は小さな成功の積み重ねから生まれるため、まず小さな成功事例を作ります。
手順5のCheckでは、取組の途中経過を把握して軌道修正を図り、成果を検証します。手順6のActionでは、うまくいった点と、いかなかった点を分析し、取組期間を含めて1年を目安にPDCAサイクルを回して改善活動を継続します。
つまり、最初から事業所全体を変えるのではなく、課題を1点に絞って3か月程度で試し、結果を見て次を決める進め方です。
訪問介護の事例の課題:訪問ルート・記録・サービス提供責任者との連絡
居宅サービス向けガイドライン(令和4年度改訂版)の事例一覧には、訪問介護の課題が載っています。
訪問ルートの作成に時間がかかり、作成した訪問ルートにもムダやムラが生じていた事例(事例13)と、訪問先での手書きによる記録業務に多くの時間を要していた事例(事例34)があります。
このほか、サービス提供責任者も訪問に出るなど常に忙しく、職員からの相談を聞いたり対応したりする時間が取れない事例(事例21)と、サービス提供責任者とヘルパーの間の連絡方法が非効率で、サービス提供責任者の大きな負担になっていた事例(事例60)も載っています。
訪問介護は利用者の自宅へ出向く形のため、移動、記録、連絡が、生産性の課題として現れやすいと読めます。ただし、事例の成果や取組の中身は事業所ごとに条件が異なり、ポータルも、記載されている事例をそのまま真似ても必ずしも課題が解決するとは限らないと注意しています。
記録・報告様式の見直し:帳票の必要性、記入のルール、1週間の試行
ポータルの「記録・報告様式の工夫」は、取組を4つのステップで示しています。ステップ1は、既存のものも含めて帳票と項目の必要性を改めて検討することで、帳票や項目の重複が見つかれば効率化の機会になります。ステップ2は、必要な帳票と項目を整理して、複数の帳票に分散している情報の統合などの新しい帳票を作ることです。
ステップ3は記入方法の決定で、いつ、誰が帳票に記入し、内容を確認して評価するのかの仕組みを、帳票とセットで作ります。記述式の帳票では、定型文などのルール化が、文章が冗長になることを防ぎ、記録業務の負担軽減に有効とされています。ステップ4は、新しい帳票を1週間程度運用して評価し、使いやすく直すことです。
記録の電子化については、書類の電子交付の基準を訪問介護の書類の電子化(基準第8条・第217条):重要事項説明書の電子交付で整理しています。ICTの導入に使える補助は訪問介護の記録ICT導入に使える都道府県の補助(令和8年度、3県の例)で確認できます。
自社で最初に取り組む1点を決める
最初の1点は、課題把握シートで現状を確かめて決めます。訪問ルートの作成、手書きの記録、サービス提供責任者とヘルパーの連絡のうち、時間を取られている点から選び、リーダーとメンバー、3か月程度の取組期間、振り返りの日を決めて計画メモに書きます。
取組の前後で、業務時間を同じ測り方で比べると、成果を確かめられます。測り方をそろえるために、取組を始める前に、何の業務を、何日間、どう記録するかを決めておきます。
最低賃金の引上げと設備投資を伴う場合に使える助成は訪問介護の業務改善助成金:最低賃金の引上げ額・助成率・上限額と申請期限(令和8年度)で整理しています。
この記事で読んだ範囲
この記事で読んだのは、厚生労働省のポータルの改善活動の手順と記録・報告様式の工夫のページ、ガイドラインの一覧ページ、居宅サービス向けガイドライン(令和4年度改訂版)の事例の一覧です。生産性向上推進体制加算の対象サービスや要件、事例ごとの成果の数値、製品の機能や費用は読んでおらず、書いていません。
個々の事業所で、どの取組が有効かは、このページでは判断しません。自治体ごとの支援の窓口や補助は、都道府県と市町村の担当窓口に確かめてください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 厚生労働省のポータルの課題把握シート(訪問介護用)で、訪問・ケア準備、移動・訪問、記録、情報共有の現状を「している・一部している・していない」で確かめ、困っている点を書き出す
- 書き出した課題から、まず取り組む1点(訪問ルートの作成、手書きの記録、サービス提供責任者とヘルパーの連絡のどれか)に絞り、プロジェクトのリーダーとメンバー、3か月程度の取組期間と振り返りの日を決める
- 記録・報告様式を見直す場合は、帳票と項目の必要性、記入する人と確認する人、定型文のルールを決め、1週間程度運用して評価する
- 取組の前後で比べる業務時間の測り方を決めて計画メモにまとめ、振り返りの日に結果と次の取組を記録する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。