運営 / 更新 2026-10-13
訪問介護事業所の退職金制度:中退共の加入条件・掛金・国の助成
訪問介護事業所が職員の退職金制度を作るとき、事業所が自前で積み立てる方法のほかに、国の退職金制度である中小企業退職金共済(中退共)に加入する方法があります。事業主が毎月の掛金を納付し、職員が退職したときは中退共から退職金が職員へ直接支払われます。このページは、中退共の加入条件、パートの扱い、掛金と国の助成、退職金が出ない期間を、中退共の公式ページで確認します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の経営者が、職員の退職金制度として中退共を使うかを考えるため、加入できる事業所の規模、加入させる職員とパートの特例、掛金と国の助成の内容、退職金が出ない期間と就業規則に書く事項を、公式ページで確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、退職金制度の検討票(加入できる事業所の区分、加入させる職員の範囲、掛金月額の案、助成の対象かの確認結果、就業規則への記載案)を作成できる状態を目指します。
中退共は、事業主が掛金を納め、退職金は職員へ直接支払われる
中退共は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づいて設けられた、中小企業のための国の退職金制度です。独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部が運営しています。
仕組みは、事業主が中退共と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付することです。従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が直接支払われます。掛金は全額事業主が負担し、一部でも従業員に負担させることはできません。
加入できるのは、業種ごとの規模に当たる事業所
加入できる企業は、業種ごとに常時雇用する従業員数または資本金・出資金で決まります。個人企業や公益法人等の場合は、常時雇用する従業員数によります。次の表は、中退共の公式ページに載る4つの区分を並べたもので、従業員数と資本金・出資金はいずれか一方を満たせばよい扱いです。
訪問介護事業所がどの業種の区分に当たるかは、このページでは判断しません。法人の形や事業の内容によって変わり得るため、加入を考えるときは中退共の無料相談で、自分の事業所の区分を確認してください。
| 業種 | 常時雇用する従業員数 | 資本金・出資金 |
|---|---|---|
| 一般業種(製造業、建設業等) | 300人以下 | 3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 | 5千万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 | 5千万円以下 |
パート(短時間労働者)は、加入させなくてもよい人と特例の掛金がある
中退共は、従業員を原則として全員加入させるよう求めています。ただし、期間を定めて雇用される従業員、季節的業務に雇用される従業員、試用期間中の従業員、短時間労働者、休職期間中の人、定年などで相当の期間内に雇用関係が終わることが明らかな従業員は、加入させなくてもよいとされています。
短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が同じ事業所の通常の従業員より短く、かつ30時間未満の人です。短時間労働者には、通常の掛金月額のほかに、特例として2,000円、3,000円、4,000円の掛金月額で加入できる仕組みがあります。
登録ヘルパーが短時間労働者や有期雇用に当たるかは、契約の内容によります。登録ヘルパーの雇用の形は登録ヘルパーの雇用で、社会保険の加入要件は訪問介護員の社会保険の加入要件で確認できます。
掛金は16種類から選び、新規加入には国の助成がある
掛金月額は、5,000円から30,000円までの16種類から、従業員ごとに選べます。加入後にいつでも増額でき、減額は従業員が同意した場合などに限られます。
国の助成は2つあります。新規加入助成は、新しく加入する事業主に、掛金月額の2分の1(従業員ごとの上限は5,000円)を、加入後4か月目から1年間助成するものです。短時間労働者の特例の掛金月額(4,000円以下)の加入者には、2,000円なら300円、3,000円なら400円、4,000円なら500円が上乗せされます。
もう1つの月額変更助成は、掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の3分の1を1年間助成するものです。20,000円以上の掛金月額からの増額は対象になりません。
新規加入助成には対象外の事業主がいます。主なものは、同居の親族のみを雇用する事業主と、社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している事業主です。中退共に加入している従業員は、社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入できないとも書かれているため、自分の事業所がどちらの対象かは、加入の前に運営主体へ確認します。
掛金の納付が11か月以内で辞めた人には、退職金が出ない
退職金は、基本退職金と付加退職金を合わせた額です。掛金の納付月数が11月以下の場合は支給されません(通算制度などを使う場合は出ることがあります)。12月以上23月以下は掛金納付総額を下回る額になり、24月以上42月以下で掛金相当額となり、43月から運用利息と付加退職金が加算されます。
加入から1年以内に辞める職員が多い事業所では、この仕組みを職員に説明しておくことが大切です。基本退職金は予定運用利回り1.0%で定められた額で、付加退職金は運用収入の状況等で変わります。金額は中退共の公式の基本退職金額表で試算してください。
就業規則に書く事項と、このページの範囲
労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を求めており、第3号の2は、退職手当の定めをする場合に、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法、支払の時期に関する事項を就業規則に書くよう求めています。中退共の加入範囲や直接支払の旨を規程にどう書くかは条文に書かれていないため、社会保険労務士に確認します。
このページが確認したのは、中退共の公式ページ(制度の特色、加入の条件、掛金、退職金)と、労働基準法第89条の条文です。個々の事業所が加入できるか、助成の対象になるか、掛金をいくらにするかは、事業所ごとに異なるため判断しません。加入の前に、中退共の無料相談と社会保険労務士に確認し、規程の作り方は就業規則と時間外労働の協定、国の助成金全体は開業で確認する助成金・補助金に合わせて整理します。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 常時雇用する従業員数と、資本金または出資金を数え、中退共の公式ページの区分に当たるかを確認する。自分の事業所がどの業種の区分に当たるか分からないときは、中退共の無料相談で確認して結果を残す
- 加入させる職員の範囲を決める。常勤職員、期間雇用、試用期間中の職員、パートや登録ヘルパーのうち週30時間未満の短時間労働者を分けて書き、短時間労働者の特例掛金(2,000円・3,000円・4,000円)を使うかも決める
- 職員ごとの掛金月額の案を書き、新規加入助成の対象になるかを確認する。社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入していないか、同居の親族のみの雇用ではないかを、助成の対象外の条件と照らす
- 加入から11か月以下で辞めた職員には退職金が出ないことを説明資料に書く。就業規則に、退職手当の適用範囲、決定・計算・支払の方法と時期を書き、案を社会保険労務士に確認してもらう
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 独立行政法人勤労者退職金共済機構(中小企業退職金共済事業本部)「中退共 制度の特色・加入の条件(国の助成、加入できる企業、加入させる従業員)」(確認日 2026-10-13)
- 独立行政法人勤労者退職金共済機構(中小企業退職金共済事業本部)「中退共 掛金・退職金(掛金月額の種類、短時間労働者の特例、退職金の額)」(確認日 2026-10-13)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「労働基準法 第89条第3号の2(退職手当の就業規則記載事項)」(確認日 2026-10-13)