運営 / 更新 2026-10-17

セルフ・ネグレクト・ごみ屋敷の利用者への訪問介護:できる範囲と地域包括支援センターへの連絡

セルフ・ネグレクトは、介護や医療のサービスを拒否するなどして社会から孤立し、生活行為や心身の健康維持ができなくなっている状態です。ごみがたまった家や、食事・入浴が続かない利用者に出会ったとき、訪問介護事業所は、保険給付でできる範囲と、市町村や地域包括支援センターへつなぐ範囲を分けて動きます。この記事は、厚生労働省の高齢者虐待対応マニュアルと、老計第10号・老振第76号から、その分け方を整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

セルフ・ネグレクトとは:高齢者虐待防止法の対象外でも支援が必要な状態

厚生労働省のマニュアル(令和8年3月改訂)は、介護・医療サービスの利用を拒否するなどにより社会から孤立し、生活行為や心身の健康維持ができなくなっている高齢者を、いわゆるセルフ・ネグレクト状態と説明しています。他者からの虐待行為を受けているわけではないため、高齢者虐待防止法の対象外とされています。

ただしマニュアルは、この状態の高齢者には認知症、精神疾患・障害、アルコール関連の問題を持つと思われる人も多いこと、「支援してほしくない」「困っていない」と市町村や地域包括支援センターの関与を拒むことがあること、生命・身体に重大な危険が生じるおそれや孤立死のリスクがあることを挙げています。ごみがたまった状態は、この状態の一つの現れ方ですが、ごみの量だけで判断するものではなく、背景は事案ごとに異なります。

この記事で決めること

訪問介護の管理者やサービス提供責任者が、ごみがたまる、食事や入浴が続かないなど生活環境が整わない利用者に出会ったとき、保険給付でできる範囲と、市町村・地域包括支援センター・ケアマネジャーへつなぐ範囲を通知から確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、生活環境が整わない利用者への対応メモ(確認した状況・提供した内容・範囲外として説明した内容・連絡した相手と日時)を作成できる状態を目指します。

訪問介護の保険給付でできる範囲:居室内の掃除とゴミ出しまで

老計第10号の生活援助の掃除は、居室内やトイレ、卓上等の清掃、ゴミ出し、準備・後片づけです。一方、老振第76号の別紙は、一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例として、主として利用者が使用する居室等以外の掃除、大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ、家具・電気器具等の移動、草むしりなどを挙げています。

このため、ごみが何部屋にもたまった状態を一度に片づける作業や、家財の大量の処分は、通知の例示に照らすと保険給付の対象にならない可能性が高い作業です。ただし通知の事例は例示で、居室の使い方や日々のゴミ出しとの線引きは事案で変わります。判断がつかない場合は、老振第76号が定めるとおり、保険者(市町村)に確認します。

生活環境が整わない利用者への対応の分け方(通知の例示にもとづく整理)
作業・場面通知上の扱い事業所の動き
居室内・トイレ・卓上の清掃、日々のゴミ出し老計第10号の生活援助(掃除)にある行為ケアプランに位置付けられていれば、訪問介護計画に沿って提供する
居室等以外の掃除、大掃除、家具の移動老振第76号別紙で、介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例給付対象として適当でない旨を説明し、ケアマネジャーまたは市町村に連絡する
片づけの範囲が給付かどうか判断できない老振第76号は、保険者(市町村)への確認を求めている市町村に確認し、確認した内容と日付を記録に残す
利用者が支援そのものを拒む、健康や命に危険があるセルフ・ネグレクト。市町村と地域包括支援センターが総合相談支援事業・権利擁護事業等で対応するケアマネジャーと地域包括支援センターに状況を伝える

範囲外を求められたとき:説明、連絡、保険外サービスの助言

範囲外の作業を求められたら、提供せずに連絡と助言へ進みます。老振第76号は、利用者が保険給付の範囲外のサービスを希望する場合、訪問介護員は居宅介護支援事業者または市町村に連絡し、希望の内容に応じて、市町村が実施する軽度生活援助事業、配食サービス等の生活支援サービス、NPO法人などの住民参加型福祉サービス、ボランティアなどの活用を助言することとしています。

説明を行っても給付対象として適当でないサービスを求められた場合、求められた内容を提供しなくても、指定基準第9条(提供拒否の禁止)には抵触しないと解されています。保険給付と明確に区分した保険外サービスとして、事業者と利用者の間で契約して自己負担で提供することも、通知は認めています。保険外サービスを組み合わせる場合の取扱いは、訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡の考え方とあわせて確認してください。

地域包括支援センターへの連絡:事業所が発見しやすい立場にあることの意味

マニュアルによると、令和3年4月から全ての介護サービス施設・事業所に、高齢者虐待の発生・再発を防止する措置(委員会の定期開催、指針の整備、研修の定期実施、担当者の配置)が義務付けられました。解釈通知(老企第25号)は、従業者がセルフ・ネグレクト等の虐待に準じる事案を発見しやすい立場にあることから、早期に発見できるよう、相談体制や市町村の通報窓口の周知などの必要な措置を図ることが望ましいとしています。

セルフ・ネグレクトそのものには、高齢者虐待防止法の通報義務の条文が当てはまりません。それでも、訪問した事業所が気づいた状況(部屋の状態、食事や服薬の様子、本人の発言)を、担当のケアマネジャーと地域包括支援センターに伝えることは、マニュアルが想定する早期発見の流れに沿った動きです。養護者による虐待が疑われる場合の通報は高齢者虐待の通報義務:市町村への通報と通報者の保護で整理しています。

連絡の前に、利用者の同意をどう扱うかを確認します。マニュアルは、市町村や地域包括支援センターが個人情報保護法の定める範囲で情報を利用・共有できることと、医療機関などの事業者が、本人の同意が困難でも生命・身体・財産の保護に必要な場合に提供できる場合があることを説明しています。事業所が情報を渡してよいかの判断は、個別の事情で変わるため、市町村や地域包括支援センターに相談してください。

ケアマネジャーとの調整:サービス担当者会議と訪問介護計画の見直し

訪問介護計画は、居宅サービス計画があるときはその内容に沿って作ります(運営基準第24条)。環境が整わない状態が続くときは、まず担当のケアマネジャーに、訪問で確認した状況と、訪問介護だけでは対応できない範囲を伝え、居宅サービス計画の見直しやサービス担当者会議の開催を相談します。マニュアルは、高齢者の見守りネットワークなどの既存のネットワークや地域ケア会議も有効活用しつつ、関係部署・機関の連携体制を構築することが重要としています。

記録には、訪問のたびに確認した状況、提供した内容、範囲外として断った内容と説明した事実、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ連絡した日時と相手を書き残します。老計10号とは?訪問介護でできること・できないこと一覧(身体介護・生活援助の区分)の区分表と見比べながら、事実だけを書きます。

次に読む記事

次に読む記事は3本です。断る・紹介する場面の基準は訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡、できる作業の区分の全体は老計10号とは?訪問介護でできること・できないこと一覧(身体介護・生活援助の区分)、虐待が疑われるときの通報は高齢者虐待の通報義務:市町村への通報と通報者の保護で確認できます。

この記事は、厚生労働省のマニュアルと通知を整理したもので、個別の利用者の状態の判断や、特定の作業が保険給付の対象になるかの確定ではありません。通知は改正されることがあるため、実際の取扱いは市町村・地域包括支援センター・保険者の案内で確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 訪問で確認した状況(居室の状態、食事や服薬の様子、本人の発言)を、見たとおりの事実だけで提供記録に書く
  2. 居室内の清掃と日々のゴミ出しなど老計第10号の生活援助にある作業と、大掃除や居室以外の掃除など老振第76号別紙の範囲外の作業を分け、判断がつかない作業は市町村(保険者)に確認する
  3. 範囲外の作業を求められたら、給付対象として適当でない旨を利用者に説明し、担当のケアマネジャーまたは市町村へ連絡して、保険外の生活支援サービスの活用を助言する
  4. 担当のケアマネジャーと地域包括支援センターに状況を伝え、居宅サービス計画の見直しやサービス担当者会議の開催を相談し、連絡した日時と相手を記録に残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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