運営 / 更新 2026-10-18
介護保険の利用者負担の減額・免除(法第50条)
災害にあった、働いて家計を支えていた人が亡くなった、失業したなどで、利用者が訪問介護の利用料を払えなくなることがあります。そのとき、市町村が認めれば利用者負担が減額・免除される仕組みが、介護保険法第50条にあります。この記事は、対象になりうる4つの事由と申請の流れ、事業所が確認する点を、条文と市区の公式案内で整理します。
介護保険法第50条は、負担割合を市町村が下げられる特例
介護保険法第50条は、市町村が、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情により費用を負担することが困難だと認めた要介護被保険者について、給付の割合を引き上げる特例を定めています。通常は費用の100分の90が給付される場合、これを「100分の90を超え100分の100以下の範囲内において市町村が定めた割合」にします。2割負担の人は100分の80、3割負担の人は100分の70が、それぞれ同じ形で引き上げられます。
つまり、利用者の負担が一律に免除されるのではなく、市町村が定めた割合まで下がります。100分の100とすれば、利用者負担は免除になります。減額か免除か、どの割合にするかは市町村ごとに決まり、条文からは分かりません。
この記事で決めること
訪問介護の事業所の管理者・請求担当者が、利用者から利用料の支払いが難しいと相談されたときに、介護保険法第50条の減額・免除の対象になりうる事由と、市町村への申請の流れを確かめ、事業所で確認すべき点を決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、利用料の支払い相談の対応メモ(利用者名、相談日、該当しうる事由、案内した窓口と日付、認定証の有無と有効期間、請求・徴収の確認者)を作成できる状態を目指します。
対象になりうる4つの事由(施行規則第83条)
条文にある「厚生労働省令で定める特別の事情」は、介護保険法施行規則第83条第1項が4つに分けて定めています。
| 区分 | 事由 | 収入や財産が変わる人 |
|---|---|---|
| 1 | 震災、風水害、火災その他これらに類する災害で、住宅、家財その他の財産が著しい損害を受けた | 要介護被保険者、またはその世帯の生計を主として維持する者 |
| 2 | 死亡、または心身の重大な障害や長期間の入院で、収入が著しく減少した | 世帯の生計を主として維持する者 |
| 3 | 事業や業務の休廃止、事業における著しい損失、失業等で、収入が著しく減少した | 世帯の生計を主として維持する者 |
| 4 | 干ばつ、冷害、凍霜害等による農作物の不作、不漁その他これに類する理由で、収入が著しく減少した | 世帯の生計を主として維持する者 |
申請の流れ:市町村の窓口で、証明書類をそろえて相談する
運用は市町村ごとに違います。東京都港区の公式案内では、申請時から原則3か月以内の期間に限って利用者負担金を減額または免除します。対象は居宅介護(支援)サービス費、施設介護サービス費、福祉用具購入費、住宅改修費で、窓口の介護保険課に事前に相談し、審査のうえ可否が決定・通知されます。
必要書類は、事由によって変わります。港区の案内では、収入が減った場合は収入・無収入申告書と支出額が分かるもの、災害の場合はり災証明書などで、千葉市の案内では、事由ごとにり災証明書、医師の診断書、失業証明書、申告書・決算書などが挙げられています。ほかの市町村では期間や書類が違う場合があるため、利用者の保険者である市町村の案内を確かめてください。
どの利用者が対象になるかを決めるのは市町村です。事業所が「対象になるはずです」と請け合うことは避け、窓口へ相談するよう案内します。
認定されたあとの事業所の確認事項
千葉市の案内では、審査後に「介護保険 利用者負担額減免・免除認定証」が交付され、利用者はサービスを利用する際にそれを事業所へ呈示するとされています。認定証を受け取ったら、対象となるサービス、適用される割合、有効期間を確認して、写しを記録に残します。
有効期間が終わった月は、通常の負担割合に戻っているかを月次の確認で照合します。減額・免除を受ける月の請求と徴収が認定証の内容と合っているかも、利用料の受領と同じ帳票で確認すると漏れにくくなります。国保連への請求での割合の個別の記載方法は確認していないため、請求ソフトの手順書と国民健康保険団体連合会の案内で確かめてください。
ほかの軽減制度との区別
1か月の自己負担が世帯の上限を超えたときの払い戻しは、訪問介護の利用者負担の月額上限(高額介護サービス費):申請と事業所の説明の制度で、法第50条とは別です。負担割合の判定と限度額は訪問介護の区分支給限度基準額と利用者負担、利用料の受領のルールは訪問介護の利用料の受領で整理しています。
この記事は、法第50条と施行規則第83条の条文、港区と千葉市の公式案内を2026-10-18に原文で確認した範囲です。要支援の人に当たる規定は、確認していません。個別の減免の可否は、市町村の決定によります。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 利用者や家族から利用料の支払いが難しいと相談されたら、災害、生計維持者の死亡・長期入院、失業・事業の休廃止、不作のどれに当たりうるかを聞き取り、メモに書く
- 減免の可否は市町村が決めることを伝え、利用者の保険者である市町村の介護保険担当窓口へ相談するよう案内し、案内した日を残す
- 認定証が出た場合は、認定証の写しを受け取り、対象となるサービス、適用される割合、有効期間を確認して記録する
- 有効期間の終了日をカレンダーに入れ、期間が終わった月から通常の負担割合で請求・徴収しているかを月次の確認で照合する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「介護保険法 第50条(居宅介護サービス費等の額の特例)、介護保険法施行規則 第83条」(確認日 2026-10-18)
- 東京都港区「介護保険利用者負担額の減額・免除制度」(確認日 2026-10-18)
- 千葉市「介護保険 利用者負担額の減免・免除(案内PDF)」(確認日 2026-10-18)