運営 / 更新 2026-10-14

訪問介護の賃上げ促進税制(中小企業向け):処遇改善加算による賃上げは対象か・控除率・繰越

介護職員等処遇改善加算を使って職員の賃金を上げた訪問介護の事業者は、法人税の賃上げ促進税制(中小企業向け)を使える場合があります。中小企業庁の資料は、処遇改善加算の額を給与等支給額に含めると書いています。このページは、その扱いと、控除率、上限、赤字のときの繰越を、令和8年度改正後の資料で整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

介護職員等処遇改善加算を使って賃金を上げた訪問介護の事業者が、法人税の賃上げ促進税制(中小企業向け)で、加算を原資にした賃上げが対象になるか、控除率と上限、赤字のときの繰越を、中小企業庁の資料で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、賃上げ促進税制の確認メモ(適用の前提、前年度と当年度の給与等支給額、控除率の見込み、法人税額の上限、繰越の要否)を作成できる状態を目指します。

処遇改善加算を原資にした賃上げは、給与等支給額に含まれる

中小企業庁のQ&Aは、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(補塡額)があれば、給与等の支給額から控除すると書いています。補助金や助成金の中に、給与の負担を軽くする目的のものがあると、その分は差し引かれます。

一方でQ&Aは、介護保険法に基づく介護報酬の額や、介護職員処遇改善加算の額のように、公定価格が設定されている取引の金額に含まれる額は、補塡額には含めず、雇用者給与等支給額に含まれると書いています。訪問介護の事業者が、加算で得た収入から賃金を上げた場合、その賃金は給与等支給額として数えられます。

加算の算定要件や計画書の手続は、「訪問介護の処遇改善加算」で確認できます。職員への配分の設計は、「処遇改善加算の職員への配分」にまとめています。

中小企業向けの控除率と上限(令和8年度改正後)

パンフレットによると、適用期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度で、個人事業主は令和9年が対象です。教育訓練費に係る上乗せ要件は、令和7年度末で廃止されたとQ&Aに書かれています。

対象は、青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)と、従業員数1,000人以下の個人事業主です。控除額は、全雇用者の給与等支給額の増加額に、次の控除率を掛けて計算します。ただし、控除の上限は法人税額等の20%です。

中小企業向けの税額控除率(令和8年度改正後のパンフレット)
全雇用者の給与等支給額(前年度比)税額控除率くるみん以上・えるぼし二段階目以上の認定を取った場合
+1.5%以上15%5%上乗せ
+2.5%以上30%5%上乗せ

数値例:給与等支給額が4,000万円から4,100万円に増えた場合

次の数字は、控除の計算の形を示すために置いた仮定で、実際の事業者の数字ではありません。前事業年度の全雇用者の給与等支給額が4,000万円、当事業年度が4,100万円だとします。増加額は100万円で、増加率は2.5%です。

増加率が2.5%以上なので、控除率は30%です。増加額100万円に30%を掛けると、控除額の計算上の額は30万円になります。

当事業年度の法人税額が100万円なら、上限は20%の20万円です。この年度に控除できるのは20万円で、超える10万円が未控除額です。

中小企業は、控除しきれなかった額を5年間繰り越せます。パンフレットは、繰り越した年度に控除するには、その年度の全雇用者の給与等支給額が前年度より増えていることが必要だと書いています。

給与等支給額に数えるもの、数えないもの

パンフレットによると、給与等支給額には、賃金台帳に記載された国内の雇用者への給与や賞与が入り、パートやアルバイトも含まれます。使用人兼務役員を含む役員とその特殊関係者は含まれません。

退職金など、給与所得にならないものは、原則として給与等に当たりません。処遇改善加算で上げた分だけでなく、全雇用者の給与等の総額の増加で見る点に注意します。

赤字のときの繰越と、申告で必要な手続

Q&Aによると、新規設立で前事業年度がない場合は適用できません。開業初年度は対象外で、2年目以降に賃上げをした年度が対象になり得ます。その年度に赤字などで法人税額がゼロだと、控除しきれない額が生じます。

Q&Aによると、繰越税額控除を使うには、未控除額が生じた事業年度の確定申告書に、繰越税額控除限度超過額の明細書を提出する必要があります。この明細書が提出されていないと、未控除額は繰り越されず、繰越税額控除を使えません。

繰り越した額を実際に控除する年度の確定申告書にも、控除を受ける金額の計算に関する明細書を添付します。明細書の書き方は、Q&Aが近隣の税務署への問い合わせを案内しています。

このページの範囲

このページが確認したのは、中小企業庁の賃上げ促進税制のパンフレット(令和8年度改正後)と、2026年4月1日更新版のQ&Aです。個別の事業者が適用できるか、控除額がいくらになるかは判断しません。

税額の計算、助成金を受けた年度の補塡額の扱い、決算賞与の年度の扱いは、事業者ごとに違います。決算の前に顧問税理士へ確認してください。法人の形態を選ぶ段階の費用の見方は「訪問介護の事業主体の比較」で整理しています。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 自社が青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)に当たるか、適用される事業年度が令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始するかを確認する
  2. 賃金台帳から、前事業年度と当事業年度の全雇用者の給与等支給額を出し、パート・アルバイトを含め、役員と退職金を除いて増加率を計算する
  3. 増加率が1.5%以上か2.5%以上かで控除率を当てはめ、増加額に乗じた額が法人税額の20%を超えないかを見て、超える分は繰越の対象かを整理する
  4. 控除額と繰越の扱いは、顧問税理士に決算前に確認し、繰越が生じる場合は明細書の提出が必要なことを申告の段取りに入れる

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護の処遇改善加算の賃金改善の配分:基本給・手当・一時金と職種間の偏り →