運営 / 更新 2026-10-17

訪問介護員の賃金テーブルと昇給ルールの作り方

訪問介護の処遇改善加算で上位の区分を算定するには、職位や資格に応じた賃金体系と、昇給の仕組みを、書面で定めて全ての介護職員に周知することが求められます。この記事は、通知が求める書面の要件(キャリアパス要件ⅠとⅢ)を、事業所が自前の賃金テーブルと昇給ルールに落とす順番で整理し、賃金に関する規程に書く事項を労働基準法第89条で確認します。具体的な金額や等級の数は、事業所ごとに決める部分なので示しません。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

結論:要件ⅠとⅢは、等級表と昇給の判定ルールの2点を書面にすれば応えられる

老発0313第6号(令和8年度分)の要件Ⅰは、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件と、それに応じた賃金体系を定め、就業規則等の明確な根拠規程で書面にして全ての介護職員に周知することです。要件Ⅲは、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づいて定期に昇給を判定する仕組みを同じく書面で定めて周知することです。

事業所の側から見ると、作るものは、職位や等級ごとの任用の条件と賃金の決め方を並べた賃金テーブルと、何を基準にいつ昇給させるかを書いた昇給ルールの2つです。要件の中身の全体は処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳにあり、この記事は要件ⅠとⅢを実際の表にする部分に絞ります。

この記事で決めること

処遇改善加算の計画書を作る訪問介護の事業者が、キャリアパス要件ⅠとⅢを満たす賃金テーブルと昇給ルールを自前で組み立て、賃金に関する規程に書く事項を確認する。ための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、職位ごとの任用の条件と賃金の決め方を対にした賃金テーブル1枚と、昇給の型・基準・時期を書いた昇給ルール、規程への反映と周知の記録を作成できる状態を目指します。

賃金テーブルは、職位ごとに「任用の条件」と「賃金の決め方」を対にして作る

要件Ⅰが求めるのは、任用の要件(賃金に関するものを含む)と、それに応じた賃金体系の両方です。賃金だけの表では足りず、その職位に就く条件が対になっている必要があります。一時金等の臨時的に支払われるものは、賃金体系から除かれています。

次の表は、賃金テーブルに入れる列の例です。列の名前や等級の数は通知が決めているものではなく、事業所が決める運用の例です。

賃金テーブルの列の例(運用の例。通知が定める様式ではない)
列書く内容の例対応する要件
職位・等級訪問介護員、サービス提供責任者、管理者など、事業所の職位や等級要件Ⅰ(職位)
職責・職務内容その等級が担う仕事(身体介護の範囲、利用者の調整、新人の指導など)要件Ⅰ(職責・職務内容)
任用の条件必要な資格、経験年数、研修の修了など要件Ⅰ(任用等の要件)
賃金の決め方基本給や時給の範囲、固定的に支払う手当(臨時の一時金は除く)要件Ⅰ(賃金体系)

昇給ルールは、通知の3つの型から1つ以上を選んで基準を明文化する

要件Ⅲの仕組みは、通知が3つの型を挙げています。経験に応じて昇給する型(勤続年数や経験年数など)、資格等に応じて昇給する型(介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況など)、一定の基準に基づいて定期に昇給を判定する型(実技試験や人事評価などの結果)です。

資格に応じる型は、別の法人で介護福祉士等の資格を取った人が就業した場合も昇給が図られる仕組みであることが、通知の但し書きです。判定する型は、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることが必要です。賃金テーブルの等級に、この昇給の条件を結びつけておくと、1つの表で要件ⅠとⅢの両方を示せます。

昇給ルールの型ごとに書面へ入れる事項の例(老発0313第6号 令和8年度分、2026-10-13確認の内容をもとにした運用の例)
型書面に入れる事項の例注意する点
経験に応じて昇給勤続年数や経験年数の区切りと、区切りごとの昇給の内容経験年数の数え方(他事業所での経験を入れるか)を決める
資格等に応じて昇給資格の取得や研修の修了と昇給の対応別の法人で資格を取った人にも同じ昇給が適用されることを明記する
定期に昇給を判定判定の時期、評価の項目と基準、昇給の条件評価の基準と昇給の条件を、数値や言葉で明文化する

賃金に関する規程に書く事項は、労働基準法第89条第2号で確かめる

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して行政官庁に届け出る義務があります。労働基準法第89条第2号は、就業規則に必ず書く事項として、賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期、並びに昇給に関する事項を挙げています。昇給が書く事項に入っているので、昇給ルールは就業規則(または賃金規程)の本体に置く扱いになります。

就業規則を作成または変更するときは、第90条により、労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、届出にその意見を記した書面を添付します。第106条は、就業規則を常時各作業場の見やすい場所へ掲示する、備え付ける、書面を交付するなどの方法で、労働者に周知することを求めています。通知の「全ての介護職員に周知」と、この周知は重なる部分があるため、同じ手順で行うと無駄がありません。

常時雇用する者が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所は、通知では内規等を整備して周知することでも書面の要件を満たすとされています。ただし、10人未満でも就業規則を作ることはできます。どちらにするかは、就業規則と時間外労働の協定の内容とあわせて決めます。

賃金に関する規程に書く事項(労働基準法第89条第2号、e-Gov現行条文 2026-10-17取得)
書く事項賃金テーブル・昇給ルールとの関係
賃金の決定の方法等級ごとの賃金の決め方(賃金テーブル)
賃金の計算の方法時給・月給の算出、手当の計算
賃金の支払の方法支払う手段(口座振込など)、支払う項目
賃金の締切りと支払の時期締め日と支払日
昇給に関する事項昇給ルール(時期、基準、条件)

令和8年度は、整備を誓約して申請する扱いがある

令和8年度は、申請時点で令和8年度特例要件を満たす事業所に限り、要件ⅠとⅢについて、計画書で令和9年3月末までに整備すると誓約すれば、申請時点から要件を満たすものとして扱う取扱いが通知にあります。誓約した場合は、令和9年3月末までに整えて実績報告書で報告します。令和9年度以降は新しい通知で確認が必要です。

整備した書面が計画書の要件を満たすかは、処遇改善加算の準備物チェックリストで用意する書面を確かめてください。この記事は賃金テーブルの金額の水準や、個別の事業所の要件の充足を判断するものではなく、最終的な扱いは計画書の提出先の案内によります。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 職位・等級ごとに、職責・職務内容、任用の条件(資格・経験・研修)、賃金の決め方を1枚の表にまとめる(臨時の一時金は賃金体系から除く)
  2. 昇給の型を、経験・資格等・定期の判定のうちから選び、時期と基準と条件を明文化して等級に結びつける(資格に応じる型は他法人で取得した人にも適用する)
  3. 就業規則または賃金規程に、賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期、昇給に関する事項を反映し、労働者代表の意見を聴いたうえで届け出る(10人未満は内規等でも可)
  4. 規程を掲示・備え付け・書面交付などで全ての介護職員に周知した日と方法を記録し、計画書の準備物と照らす

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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